「今年、カンガルー年にピッタリな社会派カンガルー喜劇」とボケをかます魔人ハンターミツルギ率いる超人予備校久々の新作。キャッチフレーズは「人生をやり直す」。仕事に疲れた人たちがカンポケ社を訪れる。ここはもう一度最初から人生をやり直してリフレッシュするための施設。そこにやって来た人びと。彼らのそれぞれのドラマが語られる。まず、母カンガルーのポケットの中に入って胎児からやり直し。そんなこと可能なのか、なんて思いつつ見始めた。
芝居は一貫したストーリー重視ではなく、思いつきで、まるでショートコント集。まぁいつものことだ。カンガルーだけでなくさまざまな動物たちの着ぐるみがかわいいのもいつも同じ。前作『ヤドカリン』からなんと3年振りの新作になる。作、演出の魔人ハンターミツルギは、十二支シリーズをやり遂げた後も変わりなく、同じ路線を突っ走っているけど、今回はなんだかとても余裕ある見せ方をしている気がする。
いつも通りのパターンで、無意味スレスレの短いエピソードが続く。やり直しをテーマに据えたはずなのに、やり直しなんてできないという答えに行き着く。ある種の諦念を根底にして、たわいないコメディに見せかけて実は確固とした自分らしさを全面に押し出す。ミツルギさんは確信犯である。ダラダラ好き勝手しているように見せかけて実はこの世界を生き抜く困難をさりげなく肯定して、だからこそこんな夢のような怪しげな施設に我々を誘う。
カンポケなんてない。だけどそんな場所でひとやすみしてまた明日からの日々を生きていく。たまたま同じ日に読んでいた標野凪の小説と同じテーマ、同じやり方で、そんなシンクロに少し驚く。
久しぶりに田口哲さんの芝居を見れたのもうれしい。