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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ファーストフード・ネイション』

2008-12-30 09:56:13 | 映画
 これは衝撃的な映画だ。数年前に公開された『スーパーサイズ・ミー』も凄かったが、今回はそれを劇映画の中で見せる。この映画の作者であるエリック・シュローサーは自らのノンフィクション『ファストフードが世界を食いつくす』を最初はドキュメンタリーとして映画化しようとしたらしいが、困難を極め、しかたなく劇映画に仕立てたらしい。

 だが、その選択は正解だった。この題材をここまで生々しく見せえたのは自由度の高い劇映画だったからだろう。もちろん、この映画はわざと過剰な描写を施したわけではあるまい。彼の取材をもとに、リアルな描写で貫かれた作品であるはずだ。それにしてもあんまりな話が続く。見ていて吐き気がしてくる。劇映画でなかったならば、最後まで見れたかどうか。

 ハンバーガーがいかに作られるか、ということをあらゆる側面から見せていく。危険な食材を使い、過酷な労働を強い、安価な商品が大量に供給される。それが僕たちの口に入る。

 架空のハンバーガー・チェーン「ミッキーズ」ということにされているが、当然現実のチェーンがモデルだ。そこのマーケティング担当のドンは社長から、大学で行った分析の結果、自社のハンバーガーのパテに大量の大腸菌が含まれていたと打ち明けられる。

 さっそく彼は調査を始めるが、工場の衛生問題や店舗における店員の意識はともかくとして、そこには移民問題、環境問題など、いくつもの要因が連鎖して渦巻いている。映画はそんな様々な問題がてんこもりにされるから、驚きの連続だ。ある程度予想出来ることもあるが、ここまで酷いなんて思いもしなかった。でなくてはあんなに安価に商品を提供できるはずがない。認識が甘いなぁ、と改めて思った。

 監督はリチャード・リンクレター。ジャック・ブラック主演の『スクール・オブ・ロック』を作った俊英だ。このとてもシリアスな題材を、彼がわかりやすい映画として構築した。まず見て欲しい。これだけ面白くてしかも怖い映画がアメリカでは全然ヒットしなかったらしい。(もちろん日本でも同じだ)これは小難しい社会派映画ではないのに。


 

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