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映画・演劇のレビュー

『ザ・タウン』

2011-10-31 23:07:02 | 映画
 劇場で公開されたオリジナル版は125分。今回のブルーレイ版は150分の長尺となっている。劇場ではカットしたシーンを収録した完全版ということだ。ベン・アフレック監督、主演の渾身の1作。しかし、意気込みは完全に空回りしている。25分追加したシーンはきっと作品全体のテンポをより悪くしているだけで、何の役にもたっていないのだろう。こんなことなら125分の通常版で見ればよかった。もう少しはすっきりした映画になっていたかもしれない。

 全米一銀行強盗が多い街、ボストンのチャールズタウン。そこを舞台にして、4人組の強盗団と警察の対決を描くアクション映画なのだが、爽快な映画ではなく、リアリズムで見せる実録映画。実名でこういう犯罪多発地帯を描くってどうなのだろうか。とても勇気がある映画だ。街のイメージを著しく損なうし、誤解を与えかねない。映画はあくまでもひとつの強盗団をクローズアップして描いているから、これがこの街の日常でこんな奴がうようよいるよ、とは描きはしないが、これでは街のイメージダウンとなる。たとえ架空の街であったとしてもこの題材でロケするだけで、いい印象は与えないだろう。アメリカは凄いわ。平気でこういう犯罪都市を実名で描く。

 しかし、映画自身はつまらない。大体この映画を通して何を描こうとしたのか、そこが見えてこないからもどかしい。主人公はこのクソのような街を抜け出してまともな生き方がしたいと願うのだが、その抜け出す手段が銀行強盗だったりする。それってどうだかなぁ、と思う。彼らにとって銀行強盗は先祖伝来の生活の手段らしい。こんな話である。

 根本的なところで、まるで説得力がないから、映画がどんなに派手な見せ場を作ろうが乗れない。だいたいこの主人公のわがままぶりには閉口させられる。よくこれで1本の映画を作ろうと思ったものだ。ベン・アフレックには才能がない。


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