ネットフリックスの新作である、なんと今回は劇場公開と同時配信という驚きの展開を用意した。大胆にも次から次へといろんなことをするものだ。あきれる。夜中にベッドの中で、スマホで鑑賞した。映画は映画館で見るものだけど、この映画にはこんな鑑賞の仕方も悪くはないかも、と思えた。たわいない話である。そして小さな映画だ。だけど、なんだかこれは素敵な映画だった。2020年の今、40代後半にさしかった主人公は25年前を振り返る。たまたまブログで昔の彼女と再会した。もちろん、本人と会うわけではない。懐かしいな、と思う。そんなところから始まる。
1995年、彼女と出会った。そこから始まる20代の冒険。若かったから、できること。若いからできなかった、とか。現在からスタートして、お話はどんどん時間を遡っていき、彼女との出会いにようやくたどり着く。なかなかヒロインである伊藤沙莉が出てこないのには驚いた。ふたりのラブストーリーのはずなのに。満を持して彼女が登場したところから彼女が突然姿を消すまでも、一瞬である。でも、あれが彼の人生のスタートだったのだ。あの時の胸のときめきを思い出す。森山未來が、20代から40代までを演じる。ものすごく自然に。20歳頃も40代後半も違和感がない。嘘くさくないのだ。
彼は今の自分が情けないし、嫌だと思う。どうしてこんなことになったのかと、振り返る。なんだか、後ろ向きで、女々しい映画である。でも、そんなダメさを受け入れて、そこから始まる物語をこの先に提示していこうとする。今はこんなにも情けないけど、でも、こうして生きてきたことを否定したくはない。これが自分なりの精いっぱいだったのだから。もちろんそこを肯定しようというわけでは当然ない。だって映画は、彼(ら)のみっともない今の姿を実に赤裸々に見せているのだから。
輝いていた頃を思い出し、感傷に浸るのではない。懐かしさに溺れて自分を見失う瞬間を描きながらもそこからの一歩を大切にしようとする姿勢が垣間見えるから、この映画はとても気持ちがいい。