とても読みやすくて、なんだか元気にさせられる小説だ。だけど、そこには押しつけがましさは微塵もない。実にあっさりとしている。そんな匙加減が素敵だ。彼女の他の著作はまだ読んでないけど、この1冊で青山美智子の作家としての基本姿勢が確かなものとして伝わってくる。
本作は12の短編連作で1月から始まって12月まで、12人のそれぞれも物語が綴られていく。このタイトルから推察するに、これは彼女のデビュー作である『木曜日のココア』の続編ではないか。(すぐに、遡って読もうと思ったけど、図書館の予約が満杯でいつ読めることやら)凄い傑作というわけではなく、たわいもないお話だ。でも、このさりげなさが僕は好き。
12のエピソードは、まず東京から始まり、舞台は京都に。やがて再びちゃんと東京に戻り幕を閉じる。最初のエピソード(月曜日の抹茶カフェでの出会い)にラストでちゃんとオチがつく。安心させられる。よかったね、と。
小さなお話の積み重ねである。そこには誰もが感じるようなことがさらりと描かれる。だからきっと共感を呼ぶのだろう。読みながら、「そうだね、」と思う。最初と最後の年頃の男女だけではなく、ここにはさまざまな年齢の男女が登場する。なんと人間だけではなく猫とか、子供までもが主人公になる。そこに描かれるのは、大仰なドラマではなく、ちょっとした風景のスケッチだ。でも、それが心に沁みる。ほっとする。これはそんなそんな小説だ。