前作から2年。ついに『ちはやふる』が完結する。高校生活の3年間をこの1年にコンプリートする。誰もがたった3年間しか過ごせないかけがえのない時代。そのすべてを競技カルタで燃焼しても悔いはない。そのためにこの3年間がある。
彼らは大切な高校時代の3年間をこの瞬間のために賭けた。完全燃焼する全国大会決勝戦がクライマックスだ。先の二部作が描いたものを、最後にもう一度見せる。高校生活の総仕上げとしての最後の戦い。この怒濤のドラマは、まず新入部員たちの勧誘から始まる。たった2名しか入部しなかったけど、彼らが自分たちのチームに入ってくれてよかった。次に繋げることが出来るから。
7名になった。でも、受験や、恋や、いろんな障害が彼らを待ち受ける。そんなこと、誰にでもある。でも、そのひとつひとつが苦しい。なんとかして乗り越える。誰かに頼るのではなく、自分で戦う。でも、彼らには仲間がいる。支えてくれる。
この映画は競技カルタを通して普遍的なことを描いてくれる。だから、こんなにも感動的なのだ。かるたのことを知らなくても大丈夫だ。みんなそれぞれの場所でこんなふうにして戦っているから。高校生活において一番大事なものがここにはすべてある。映画は一応広瀬すずを主人公にしているけど、これはみんなの話だ。みんながそれぞれ自分と戦いながらかけがえのない3年間を生きている。
毎日かるたのことばかりで、でも、それがこんなにも苦しいし、楽しい。自分が何に夢中になるかは、ひとそれぞれだ。なんだって構わない。でも、やるからには全力でやれ。そうじゃなければ、つまらないし、後悔が残る。やり直しは出来ない以上、がむしゃらに突き進むしかない。ちはやの必死さに象徴される。「一緒にカルタやろうよ!」と彼女は言う。そこからすべてが始まった。
こういう映画や漫画は山盛りある。でも、数あるそれらの作品の中でもこれが一番突き抜けているのは、そこに理由なんか(いら)ないからだ。好きという想いだけで走り抜けるバカさ。千早は進路希望調査で、第一希望のところに「クィーン」と書く。(そこは大学名を書くところなんですけど、)彼女はバカだからそう書く。そんなバカが嫌みにならないのは、彼女が本気だからだ。好きなことがはっきりしていて、迷いがない。そんな彼女に引っ張られて、みんなも「好き」に全力で向かっていく。そんな姿が眩しい。
この3年間、この3本の映画に、この映画のキャストたちも、自分の青春を賭けた。悔いはないはずだ。小泉監督は敢えて2年後にこの完結編を僕たちに届けた。それが1年後ではなくてよかった。現実とシンクロして実際に3年間で完結しなくては嘘になる。ここには嘘は要らない。本当の完全燃焼の高校時代を描く。そんな奇跡の映画がここに完結する。