公開時以来の30年近くの歳月を経ての再見である。劇場公開時は3時間版だったが、今回の完全版は3時間56分。キネマ旬報の90年代外国映画ベストワンにも選ばれた。ただ、昔見た時にはあまり面白くはなかったので少し不安だった。嫌な予感は当たる。
やはり、あまり面白くなかった。感情移入できないような作り方をするのはいつものエドワード・ヤンだからわかっていたのだけど、これだけの長さで、こんなにも淡々とそれをされると、しんどい。しかもDVDで見たから、余計にそうなる。劇場で見ていたならもっと集中できたかも知れない。殺伐としたお話が延々と続くのは見ていてしんどい。
60年代の台湾(厳密には59年から61年)をノスタルジックに描いたりはしない。不穏な時代が背景となる。心が殺伐としている。みんながみんな未来に対して不安を抱えて生きていた。今の自分がどこにたどり着くのか、わからないから、せめてこの瞬間だけでも幸せな気分でいたいと願った。刹那的な生き方。そんなふうにして過ごしていた。なのに、それが大好きな少女を殺す事へとつながっていく。いや、だからそうなるのか。
そんなとんでもない行為に走る主人公に感情移入できない以上、距離を置いた描写をただ見守るしかない4時間。無駄に思えるシーンも多い。だが、何をして無駄というか、は明確ではない。すべてこの映画には必要だと言われれば、そうとも言える。ロングショットの多用も作り手の意図だろうが、この映画を取っつきにくいものにしている。
『ヤンヤン 夏の思い出』は大好きな映画だけど、この野心作は、才気走っただけで、僕は買わない。最後の殺人も納得しない。彼女の無意識な傲慢さに翻弄されるチャン・チェン少年の無表情はいいけど。『けんかえれじい』の台湾版って感じのノーテンキさがここにあれば、もう少し違ったかもしれないが、そんな気は更々ない。ピリピリする時代の空気を捉えた寒々とした映像も今の僕にはしんどい。いい映画だとは思うけど、4時間は苦しかった。