
1959年、イギリス東部の海辺の小さな町。ひとりの女がここに本屋を開くことから始まる小さな物語、のはずだった。でも、これはちょっと僕が(勝手に!)思い描いていた映画とは違う。もっと心地のいいハートウォーミングだと思っていたら、さにあらず。なんだかとんでもない展開をする。確かにこれは小さな本屋を巡るお話ではあるのだけど、ちょっと違う。意地悪な町の有力者である夫人による執拗な嫌がらせ。それに屈することになるラストまで、閉鎖的な町で彼女はささやかな本屋を守りきることができない。そんなお話でいいのか、と思うけど。仕方ない。
どうでもいいことだけれど、チラシにあった1959年という時代背景に心ひかれた。もちろん本屋を舞台にした映画という点にも。1959は僕が生まれた年なのだ。ピンポイントでそういう設定をされると、見ないわけにはいかない。
頑なまでもの嫌がらせは、意地でもここに芸術センターを作ろうとする夫人の仕業なのだけど、エミリー・モーティマー(なんと、あの『メリーポピンズ』!)演じる主人公は断固としてここから出ていかない。ブラッドベリやナボコフに象徴させるものは、ラストの展開も含めて興味深いけど、そこには深入りしない。確かに本を焼くとか、符丁するけど、大事なのはそこではない。
この映画は必要以上に彼女を追い詰める。彼女はただここで新しいスタートを切りたかっただけ、だったのではいか。