
今年のラスト・ムービーはこの映画にした。アンソニー・ミンゲラが10年振りでオリジナルに挑んだ作品だ。彼のデビュー作『愛しい人が眠るまで』は大好きだったけど、『イングリッシュ・ペイシェント』『リプリー』『コールド・マウンテン』と続いた3作品は超大作だが、なんだかしっくりこなかった。この3本と10年間のおかげで、僕の中で彼への評価はとても低いものになっていたから、今回も正直期待していなかった。だが、見てよかった。彼の本来の持ち味はこいいう作品の中でこそ発揮されるのだ。
小さな作品だが、この映画が描くものは深くて広い。ロンドンのキングクロスというスラムを舞台に、ここの再開発プロジェクトを手掛ける主人公(ジュード・ロウ)が、彼のオフィスに不法侵入した窃盗団の少年と、その母親(ジュリエッツト・ビノシュ)と出会い、この2人を通して変わっていく様が描かれる。
ボスニア移民のこの貧しい親子、さらには街頭に立つ娼婦との関わりの中で彼は都市再開発というお題目では見えない、そこで生きているひとりひとりの事情と向き合っていくことになる。さらには、今まで仕事にかまけて避けてきた自分の家族の問題とも向き合うことになる。
不登校で不眠症の娘や、妻(ロビン・ライト・ペン)をおざなりにして、夢や理想に逃げてきた彼が、現実と向き合う人たちを通して変化していく様はスリリングだ。これは表面的なストーリーから、理解できるような不倫ものの映画なんかでは断じてない。(まぁ、普通に見てたらそんなこと当然すぐ解るだろうが)
「こわれいく世界の中で」この世界をなんとかして、繋ぎとめて生きていこうとする我々現代人に向けてのミンゲラからのメッセージである。文学的な邦題も秀逸だが、シンプルな原題のほうがよりこの映画の本質を捉えている。『Breaking and Entering』。「壊して、中に入る」とでも訳せばいいのか。このタイトルは最初のビノシュの息子の行為を示すが、もちろんそれだけではない。これは主人公が世界とむきあてっていく上でのあるべき姿勢を示している。
きれいごとの世界ではなく、この壊れ行く世界をしっかり見つめ、その先に僕たちが生きていく本当のあるべき世界を作り上げていく。そのためには怖れてはならないという力強いメッセージなのである。
小さな作品だが、この映画が描くものは深くて広い。ロンドンのキングクロスというスラムを舞台に、ここの再開発プロジェクトを手掛ける主人公(ジュード・ロウ)が、彼のオフィスに不法侵入した窃盗団の少年と、その母親(ジュリエッツト・ビノシュ)と出会い、この2人を通して変わっていく様が描かれる。
ボスニア移民のこの貧しい親子、さらには街頭に立つ娼婦との関わりの中で彼は都市再開発というお題目では見えない、そこで生きているひとりひとりの事情と向き合っていくことになる。さらには、今まで仕事にかまけて避けてきた自分の家族の問題とも向き合うことになる。
不登校で不眠症の娘や、妻(ロビン・ライト・ペン)をおざなりにして、夢や理想に逃げてきた彼が、現実と向き合う人たちを通して変化していく様はスリリングだ。これは表面的なストーリーから、理解できるような不倫ものの映画なんかでは断じてない。(まぁ、普通に見てたらそんなこと当然すぐ解るだろうが)
「こわれいく世界の中で」この世界をなんとかして、繋ぎとめて生きていこうとする我々現代人に向けてのミンゲラからのメッセージである。文学的な邦題も秀逸だが、シンプルな原題のほうがよりこの映画の本質を捉えている。『Breaking and Entering』。「壊して、中に入る」とでも訳せばいいのか。このタイトルは最初のビノシュの息子の行為を示すが、もちろんそれだけではない。これは主人公が世界とむきあてっていく上でのあるべき姿勢を示している。
きれいごとの世界ではなく、この壊れ行く世界をしっかり見つめ、その先に僕たちが生きていく本当のあるべき世界を作り上げていく。そのためには怖れてはならないという力強いメッセージなのである。