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映画・演劇のレビュー

冨田倶楽部『例えば世界はこんなにも広いのに』

2025-02-02 17:05:00 | 演劇
正式なタイトルは『例えば世界はこんなにも広いのにそんな世界の隅っこに存在している僕は。』だけど、さすがに長すぎてタイトルスペースには書けない。いや、ちゃんと書いたほうがいいのかな。

ほぼ毎月1年で10本のオリジナル作品を作、演出する企画の7作目。さて、今回で僕が見るのは3作目になる。今回は升田祐次作品。これで3人の作家をまず1本ずつコンプリートしたことになる。この後3人3本がラストランとなる。3月から5月まで。

今回1時間の作品になった。もちろん予定は45分というお約束である。トータル中編10本を作る企画だ。照明、音響は基本使わない。稽古期間は10回、役者は主宰の升田、堀江合わせて5人による会話劇。そんないくつかの制約を自らに課して挑んでいる1年。

だけど今回は1時間でよかった。前作の堀江作品も後10分加筆したならきっとよくなると悔やまれたが、今回はこの長さだからこそ可能だった、そんな作品に仕上がっている。約束は守るべきだが、そこに縛られるべきではない。時には破ることで成し遂げられることもある。

冒頭のひとり芝居がいい。かなり長いシーンが続く。主人公の漫画家が電話を受ける。担当編集者からの連載打ち切りの知らせだ。続いて、母からの電話。机から首吊りの縄を取り出す。

しろみそ企画のなかしまひろきが演じる。暗い無表情で応対する。ひとりの部屋。そこに大学時代からの友人ふたり(升田、堀江)が誕生日を祝う為にやって来る。このふたりによるドタバタは今回の見どころのひとつであろう。サプライズパーティーである。この3人になかしまの編集者と元カノが加わる5人芝居。

お話はこの展開から想像できる定番を踏襲する。だけど、安易なラストにはならないのがいい。どこに行き着くのか、と思って見ていた。ありきたりのハッピーエンドだろうな、とも思っていた。それならそれはそれでいい。ハートウォーミングの定番をきちんと作るのも正しいことだ。

だけど、升田はそうはしなかった。ラストは冒頭に呼応する。なかしまのひとり芝居になる。この先、彼の仕事が上手くいくかはわからない。ただ再びの母からの電話とコンビニに行った元カノの姿が象徴する未来には希望がある。いい芝居だった。




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