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映画・演劇のレビュー

月島真昼『姉が壊れた。』

2025-02-03 08:31:00 | その他
この新人作家は手強い。ここまで破壊的で強烈な作品を読むのは久しぶりだ。最近は優しい作品ばかり読んでいた気がする。町田そのこですら優しい。いや、彼女はいつも優しいな。

もちろん、この新人が優しくないのではない。主人公である弟は自殺しようとしていた姉を助けて彼女のケアをする。優しい彼はパワハラ上司からの暴力から姉を守ろうとする。だが壊れた姉は自分が壊れていることにすら気づかない。姉と上司の関係性が普通じゃない。ここまで酷いパワハラがあるのか。しかもそんなオヤジにマインドコントロールされている姉って何! 

お話の展開が早く一気に読める。しかもいきなり突然まさかの展開になる。どこに行き着くのか、まるで読めない。それだけに待ちに待ったパワハラ上司平岡との対決シーンを描く3章は快感。いや、あれだけでは納得しない。もっとやって欲しい。こんなクズ男は断固叩きのめすべきだ。

だが、また唐突にまさかの展開である。4章で彼は平岡に轢き殺されそうになる。これがさらなるまさかである。過激に、当たり前のように、どこまでも行く。小説家も、平岡も。それはあの『満ち足りた家族』の最初(と、最後)のシーンを思わせる。有無を言わさずいきなりの暴力に震撼する。

ラストの彼を慕う相羽(大学の友人)を受け入れる(まず友達から、ね)ところまで、一気。(相羽は男だけど)

この本には第2作である中編作品『どんどんキミに似ていく』も同時掲載されているが、こちらもまたまさかのお話で月島真昼は只者じゃない事を立証する。『姉が壊れた。』をもう読んでいるからちょっとやそっとでは驚かないけど、こちらのぶっ飛んだ設定は少女漫画でならありそう。だけどこれも徐々にリアルな展開から大変なことになる。幾分マイルドな口当たりだけど、警察とのバトルは手に汗握る。国家権力はここまで酷い。これではパワハラ上司平岡と同じだ。

15歳の女の子を保護して、やがて恋に落ちるなんていう話を現実に描くとセクハラ疑惑に陥ることは必至だ。世間は興味本位だし、汚い。『源氏物語』みたいなエゲツない話しか思いつかない。それだけにこの清らかな(?)ハッピーエンドはうれしい。

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