
妻の体調不良からピンチヒッターとして見に行くことになった一作。今年の大阪アジアン映画祭は3本見る予定だったが、これも含めて結局は6本になった。なかなかよく見た。これが最後の1本。高校の卒業式の夜。悪夢のような一夜のお話。
前半はかなりドキドキした。だが、三部構成の2部までは面白かったのに、最後で転けてしまう残念な一作。『あの頃、君を追いかけた』(2011)でブレイクした俳優クー・チェンドンの監督デビュー作。脚本は『あの頃~』の監督ギデンズ・コー(九把刀)なので期待したのだが、彼の手掛けた脚本がまずい。あの最後はあまりにバカバカしい。ヤクザに捕まって、指を詰めさせられ、解放されるまでを描く部分だ。なんとレオン・ダイが狂気を静かに体現し熱演しているにも関わらず、である。あんな解決はない。これはある種のファンタジーなのだが、リアルの感触で終わらせるのがまずいのだ。そこは曖昧なまま終わるということでもいいけど、指を切り落とすことはなかった。そしてそれだけでそのまま許されるのはおかしいし。
高校生3人。卒業式の後、深夜の雑居ビル屋上。いたずらから植木を下のタクシーに落とした。そこから始まる悪夢の1夜。おふざけがエスカレートしていくさまがジェットコースターに乗ったようで面白い。おしっこを飲むシーンがえぐいが、そこで狂気のスイッチが入る。この1部(『猿』)では3人のおバカな彼らの暴走が描かれる。冗談から始まり大変ことになる。ヤクザを殴りケガを負わせる。当然彼らに追いかけられることになる。この滑り出しは快調だ。
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2部の『善人』はこの少年たちの事件を警官たちの視点から描く。悪人に銃を向けたいと思う婦人警官には笑える。ここも悪くはない。問題は3部『悪人』だ。彼らが3人が警官に捕まり、なのになぜかヤクザのもとに連れていかれるところから始まる。シュールなお話へと変貌していくはずなのに、そこがうまく描けないから残念な映画になってしまった。「善人と悪人は半々ではなく、8割はその境界線上にいる」というこのお話のエピグラムも生かしきれない。