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映画・演劇のレビュー

2度目の『天気の子』

2019-12-10 22:01:24 | 映画

 

公開から5ヶ月が過ぎても、まだ上映は続く。お正月まで上映が続くのではないか。7月の公開時に見たけど、もう一度見たくて、劇場に行った。今年は異常気象で、秋の台風の折、東京でも大雨が降り、日本中で河川の氾濫や大規模の浸水が続いた。荒川が決壊していたならこの映画そのままに風景が現出していたかもしれない。まるで、この映画が予見したことが現実になったようだ、と思った。

 

ずっと降り続く雨のなかで、展開するお話はそのありえないラストの展開も含めて大胆で、凄く刺激的だった。今日2度目の鑑賞で、改めてこの映画の凄さを実感した。これはメジャーの王道を行く映画ではないのだ。マニアックな映画だ。お話自体には突っ込みどころ満載で、確かに穴だらけの映画だ。だけど、新海誠はそんなこと重々承知の上で、これで行く、と覚悟を決めたのだろう。作品としての完成度云々ではなく、自分のやりたいことを優先した。

 

人柱にはならない、という選択もいい。家出少年の冒険というコンセプトで,一夏の冒険物語というよくあるパターンに終息させたにもかかわらず、あのラストである。わがままとは思わない。ひとりの力ではどうにも出来ないことがある。この映画の国家の無能振りと較べると主人公の2人は充分やった、と拍手されていい。自分たちのことだけ考えて周りのことなんか一切配慮しないのではない。彼らが始めたほんの少しお天気にする儀式は人々を笑顔にした。バイトとして結構な収入にもなった。だけど、その代償は大きい。

 

終盤の警察からの逃避行はお話のまとめ方として、必ずしも成功していないし、最初から拳銃を手にするという非現実は上手くない。少女が天気を左右するという大きな仕掛けがあるのだからそれ以外はリアルのなかで展開した方がよかったのではないか、と思う。小さな話と大きな話のバランスは難しい。国家権力やマスコミがあまり関与しないまま、ラストまで行き着くのは少し嘘くさいけど、悪くない。たた、彼らの問題はもう少しリアルの描いてもよかったのではないか。

 

それにしても東京の風景がこんなにもリアルにアニメで描かれるということに改めて感動した。ふだん見慣れた風景がそのままアニメーションの中で自然に描かれている。なんでもない風景が懐かしい。水の底に沈みゆく東京という都市(街)というビジュアルがリアルなだけで、どうしてこんなにも感動的なのだろうか。降り続く雨の街。雨の記憶というのも、人を感傷的にする。公開時は当然一番大きなスクリーンでたくさんの観客と見たのだけど、今回はレイトショーで平日の深夜に見たのだが、小さな劇場で10人ほどの観客と再見するという体験もよかった。この映画のもう一つの顔を垣間見た気分だ。

 


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