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映画・演劇のレビュー

あみゅーず・とらいあんぐる『笑箪笥』

2019-12-10 22:05:17 | 演劇

 

この芝居を見ながら、大竹野によるこの台本は他の彼の作品と較べてあまり上手くないな、と思った。「大竹野正典ぼつじゅう企画」の作品をずっと見てきて、というか、彼の作品をずっと見てきて、つまらないと思ったことはなかったけど、今回この芝居を見ながら「この台本はつまらない、」と思わされた。でも、これが20代の若かりし日の作品だということを考えると、今の僕がそう思ってもしかたないことだろう。そんな台本をゴン駄々吉は見事な演出で優れた作品に仕上げた。

 

九谷保元は、不思議の国に迷い込んだアリス状態で、この主人公である父親を見せてくれる。彼以外は女性だけのキャストによってお花畑のようなキッチュな空間を作り上げる中、彼はひとり孤独だ。家にいても居づらいし、とても違和感を抱いている。この居心地の悪さ。それを彼1人が「犬の事ム所」のテイストで演じているのも笑える。周囲との落差がこの芝居の魅力である。この世界になじめないのが上手く表現できた。オリジナル台本の意図したものとは全く違った世界を作りつつもそれが反転して、結果的に台本自体に意図をきちんと反映したものになる。なんかそれって凄い。

 

八百屋舞台も、この芝居の提示するほんのちょっとした違和感をよく伝えている。頭の上に可愛い箪笥を載せて箪笥に登ることを表現したのもいい。いろんなことがとてもかわいらしくて、もし、これを大竹野が見たならきっと驚くとこだろう。こんな『笑箪笥』もありなのだ。あみゅーずが、これをやるとこういうことになったのだ。

 

彼女たち世界としてこの台本を立ち上げたことに感心した。自分たちの世界に引き寄せて、これを作る意義もしっかり感じさせてくれる、そんな素晴らしい舞台だった。

 

 


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