カラ/フル『カラコレ その4 幸せの黄色いマスク 宇宙人に、桃色吐息を』
この1年で4回の小さな公演を打ち、色をタイトルにして7つの短編を上演した。まさに虹色である。カラフルらしい。会場も変化に富む。谷四のマンションの一室、南田辺の民家。日本橋の劇場での公演を(火曜日のゲキジョウに参加)挟んで、今回の福島のテナント・ビル。まるで異質な4会場を使用した。
作品の方もバラエティに富む。劇団員たちが提示してきた個性的な原案、台本を素材にして、オダ・タクミが作者の意図を十分に汲んだ上での自在な演出で見せていく。ただ作業自体は手探りである。1回目はまず短編2本立てであること。2本目は本田信男スペシャルとして。3本目はオダ・タクミによる実験演劇。(たぶん。これだけ仕事の都合で見ていないので)そして今回の2本である。
なんと、今までとは違って今回の2本はまるで似ていない。(これまでは、なんとなく2本はセットになっていた気がする)作品カラーも、黄色と桃色となんだか派手。だが、これが(結果的に)今回までの3公演を踏まえた形での総決算なのだ。ようやくここまできて初期の目的を達成した、という気分だろう。オダくんの余裕がこの2作品からはしっかりと伝わってくる。
カフェを舞台にして日常のスケッチから、一歩踏み出していく瞬間を描いた『幸せの黄色いマスク』は秀逸。とある喫茶店で、いつも目がいく女性。何度も目撃している。その日、勇気を出して声を掛ける。そこから始まる知らない者同士の会話。二人の距離感が絶妙。あからさまに迷惑そうにする年配の女(といっても、40代か)と、少し、ハイになって関わり合おうとする若い女(20代前半だろう)。ストーリーを追うのではなく、スケッチに止まるのがいい。
2本目の『宇宙人に、桃色吐息を』は婚活パーティを描いていくはずが、まさかの展開へ。宇宙人という初期設定だけでも、なかなか凄いのに、その後のあり得ないバカバカしさ。それをけろっと見せていく。この自由さにたどり着くまでの1年間だったのだと思わされる。確信犯としてのバカバカしさをあっけらかんとやりきってしまう潔さ。ワンダーウーマンのようなコスチュームのあまのあきこを見た瞬間声を失ってしまった。怪人山田百合香のエイリアン(人間離れした演技)にも驚いたが、どこまでやるか、と。
2本の作品で、オダ・タクミとカラ/フルは確かな成長を遂げた。今年の7本を経た、今後の展開が楽しみだ。