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映画・演劇のレビュー

満月動物園『ツキシカナイ』

2015-09-17 23:44:24 | 演劇
シリーズ第4作であり、現在までのところ、これが最新作となる。4部作で完結というのは、ある種のパターンなのだが、今回再びこの作品を見て、これは明らかにまとめに入って失敗した作品なのだな、と理解した。戒田さんがこれを書いたとき、どういう心境だったのかは、推測するしかないのだが、作品から受ける印象は、ある種のマンネリ。だが、果たしてそうなのか? 

少し違うかも、と思った。4作品の中で、これが一番あっさりした作品に仕上がっている。シンプルだけど、それゆえメリハリが弱い。はったりをかますのがこの死神シリーズなのに、ただの予定調和になっている。そこも、物足りない理由なのだが、今回これを見ながら、もしかしたらそれでいいのかも、と思った。

単純に別々の2つの話を並行して見せていく。ラストで、当然無関係に見えた(でも、そんなはずはないのは誰にでもわかる)ふたつが交錯し、きちんとひとつに収まる、という物語の王道。

観覧車事故をめぐる生と死、過去と未来のドラマが、完結するラストはあまりにストレートすぎて物足りない。もっと大きな仕掛けが用意されているのではないか、と勘繰りたくなるほどだ。だが、そうではない。

戒田さんは初心に帰るためにこれを書いたのではないか。3作連作して、一つの事故をめぐる3つのお話を提示した。その先を考えたときに、もうひとつ新しい話を書くのではなく、最初に戻る。死神誕生に立ち返り、あの時に生まれた赤ちゃんが大人になり、結婚し、子供を産み、育て、という人としての営みを繰り返す。そんなドラマを見せたかったのだ。

何の仕掛けもなく、ふたりが出会い、ふつうに結婚するまでを描くこと。それが本作のテーマで、そこに彼の出生の秘密を絡ませる。壮大な物語でもあるのだ。人が生まれて、成長し、老いていく。それだけで、十分なスペクタクルではないか、と戒田さんは言う。(たぶん)

これで1年かけて展開した「再演4部作」は終了なのだが、今回の試みはこの先にある。4部作の先となる最新作がこの12月に上演される。そうすることで、これは5部作になる。これが最後だ。壮大な試みであった観覧車シリーズの完結編で戒田さんがどんな決着を見せてくれるのか。『スターウォーズ』の最新作以上に楽しみでならない。

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