『月下人魚』に続いてショウダウンが贈る「林遊眠ひとり芝居」の第2作。2時間15分の超大作だ。実質2時間。2部構成。休憩15分を挟んで上演される。もちろんそのすべてを彼女がひとりで演じきる。2万の軍隊をたった200人の村人が迎え撃つアクション・スペクタクル巨編である。だが、これは派手な立ち回りを見せるための芝居ではない。だいたいこれはひとり芝居なのだ。アクションシーンも、スペクタクルも、すべてひとりで見せるしかない。そんなこと不可能だ。だが、彼女は、自分にできるやり方で、たったひとり、そのすべてを見せてくれる。演じ分けること。ナレーションを多用する。説明シーンも多い。いろいろ問題点はないわけではない。だが、そんあこと気にならなくなる。
ここで一番大事なことは、主人公ベルの熱い想いである。これは彼が勝てるはずもない戦いに挑み、村人たちを守るという超人的な戦いを描くドラマではなく、彼らを犠牲にすることになることも辞さずに、彼らとともに闘うという覚悟、そこから生じる凄みを描くドラマなのだ。そんな棄て身の覚悟がこの作品の底を流れる。そして林遊眠が見せるのは、その「覚悟」なのである。この芝居はおもしろいのは、2万対2百というありえない戦いを描くエンタメ作品だからではない。それは、ベルの闘いのドラマを、たったひとりの少女である林遊眠が、2時間、演じきることから生じる感動なのだ。役者である彼女の闘いと、主人公の闘いを重ね合わせることで、生じる。
小劇場の芝居が力を持つのは、ありえないことをやり遂げることにある。かって腹筋善之助がひとり芝居『ファントム』で、見せたようなことを、まったく別のアプローチで、きゃしゃで、はかなげな少女である林遊眠がたった25席ほどの小さな劇場で観客と一緒になって演じきって見せた。その事実を心にとめておきたい。2000人収容の大劇場であっても、25席の小劇場であっても、そこに違いはない。同じ1本に芝居である。たったひとりで何十人もの役を演じわけ、その中で、たったひとりの男の生きざまを描く。彼女の姿から目が離せない。それは彼女がその全身全霊でこの壮大な物語を表現するからだ。ほんのちょっとした表情、仕草までもが、雄弁にさまざまなことを語りかけてくる。
作、演出のナツメクニオさんはパンフの中で、「劇団史上に残る最高傑作」と書いていたのだが、僕はそれを「演劇史上最高の傑作」と書いていたと、誤解して、終演後「確かに演劇史上最高傑作でしたね」と言ってしまったのだけど、その気持ちには嘘はない。おべんちゃらではなく、それくらいの覚悟をこの作品に感じたからだ。何かとんでもないものに挑戦する。砕け散るかもしれない。でも、それだけの戦いをする。これはそんな芝居だと思う。三日間7ステージ。14時間を演じきった後の林遊眠さんのさわやかな笑顔が素敵だった。
役者と観客が1対1で向かい合える演劇。それがすぐ目の前で演じられる魅力。それが小さな劇場のすごさだ。しかも、船場サザンシアターは、仮設の空間ではなく、ちゃんとした劇場仕様である。ゆったりとしたソファーシートで、芝居に集中できる。舞台も狭くはない。だが、もちろん広くはない。こういう豪華さって、他にはない。自分だけのためのゴージャスな劇場空間を提示してくれる。だから、ここにはこういう贅沢な芝居がよく似合う。
年末のぎりぎりになって、こんなすてきな作品と出会えるなんて、思いもしなかった。時間的に見るのが困難だったけど、無理して見に行ってよかった。思いがけない幸福だった。しかも、ギリギリで連絡したのに、満員の劇場になんとかもぐり込ませて貰えて、本当にラッキーだった。
この芝居はこんなタイトルだけど、悲劇ではない。しかも、終わりの物語ではなく、始まりの物語なのだ。そんなことも、なんだかうれしい。そして、なによりこれは、とても元気になれる芝居だ。そんなこんなの、すべてが嬉しい。
ここで一番大事なことは、主人公ベルの熱い想いである。これは彼が勝てるはずもない戦いに挑み、村人たちを守るという超人的な戦いを描くドラマではなく、彼らを犠牲にすることになることも辞さずに、彼らとともに闘うという覚悟、そこから生じる凄みを描くドラマなのだ。そんな棄て身の覚悟がこの作品の底を流れる。そして林遊眠が見せるのは、その「覚悟」なのである。この芝居はおもしろいのは、2万対2百というありえない戦いを描くエンタメ作品だからではない。それは、ベルの闘いのドラマを、たったひとりの少女である林遊眠が、2時間、演じきることから生じる感動なのだ。役者である彼女の闘いと、主人公の闘いを重ね合わせることで、生じる。
小劇場の芝居が力を持つのは、ありえないことをやり遂げることにある。かって腹筋善之助がひとり芝居『ファントム』で、見せたようなことを、まったく別のアプローチで、きゃしゃで、はかなげな少女である林遊眠がたった25席ほどの小さな劇場で観客と一緒になって演じきって見せた。その事実を心にとめておきたい。2000人収容の大劇場であっても、25席の小劇場であっても、そこに違いはない。同じ1本に芝居である。たったひとりで何十人もの役を演じわけ、その中で、たったひとりの男の生きざまを描く。彼女の姿から目が離せない。それは彼女がその全身全霊でこの壮大な物語を表現するからだ。ほんのちょっとした表情、仕草までもが、雄弁にさまざまなことを語りかけてくる。
作、演出のナツメクニオさんはパンフの中で、「劇団史上に残る最高傑作」と書いていたのだが、僕はそれを「演劇史上最高の傑作」と書いていたと、誤解して、終演後「確かに演劇史上最高傑作でしたね」と言ってしまったのだけど、その気持ちには嘘はない。おべんちゃらではなく、それくらいの覚悟をこの作品に感じたからだ。何かとんでもないものに挑戦する。砕け散るかもしれない。でも、それだけの戦いをする。これはそんな芝居だと思う。三日間7ステージ。14時間を演じきった後の林遊眠さんのさわやかな笑顔が素敵だった。
役者と観客が1対1で向かい合える演劇。それがすぐ目の前で演じられる魅力。それが小さな劇場のすごさだ。しかも、船場サザンシアターは、仮設の空間ではなく、ちゃんとした劇場仕様である。ゆったりとしたソファーシートで、芝居に集中できる。舞台も狭くはない。だが、もちろん広くはない。こういう豪華さって、他にはない。自分だけのためのゴージャスな劇場空間を提示してくれる。だから、ここにはこういう贅沢な芝居がよく似合う。
年末のぎりぎりになって、こんなすてきな作品と出会えるなんて、思いもしなかった。時間的に見るのが困難だったけど、無理して見に行ってよかった。思いがけない幸福だった。しかも、ギリギリで連絡したのに、満員の劇場になんとかもぐり込ませて貰えて、本当にラッキーだった。
この芝居はこんなタイトルだけど、悲劇ではない。しかも、終わりの物語ではなく、始まりの物語なのだ。そんなことも、なんだかうれしい。そして、なによりこれは、とても元気になれる芝居だ。そんなこんなの、すべてが嬉しい。
ショウダウンも今年に入って、船場サザンシアターという素敵な劇場と出会い、新しい第一歩を踏み出しているように思いますv
出会うもの全てから色々学び、これからも、もっと面白い作品を創っていきますので楽しみにしててくださいっ。
また劇場でお会いできたのがとても嬉しかったです★
ありがとうございました☆