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映画・演劇のレビュー

宮下奈都、小路幸也『つむじダブル』

2012-12-19 22:05:31 | その他
宮下奈都と小路幸也によるコラボレーション小説。今、これを読まずして、何を読むんだ、と鼻息も荒く、読み始めたのだが、しばらくして、急速にその意気込みが萎んでいくのを感じた。何がダメなのかは明らかだ。2人がお互いに遠慮しながら書いていて、1+1が1以下にしか、なってない。お互いの個性は相殺されて、なんとも無残で中途半端な作品になってしまった。ものすごく残念な結果だ。

 兄と妹の視点から描くホームドラマなのだが、どちらかというと、お話は小路幸也寄りの設定で、彼の得意のジャンル。というか、小路さんはいつもこのパターンに終始する。それはそれでいいのだが、そんな世界の中で宮下奈都のよさが全く出てこない。そこが問題なのだ。

 この設定の中で彼女の描く妹の話をちゃんと前面に出してきて、彼女がこの世界観をどう遊ぶのか、それがこの作品世界を形作るはずだった。だから小路幸也はそのフォローにまわるべきだったのだ。なのに、それができていない。宮下に自由に書かせてあげたなら、きっとおもしろいものになったはずなのだ。小路幸也的ホームドラマの世界で、彼女がどう自由に羽ばたくのか、あるいはそこにどんな違和感を抱くのか、そこが一番楽しみだったのに、なんだか生ぬるい小説で、どっちつかず。

 お互いに歩み寄る必要なんかない、と思う。まぁ、こういう企画ものは難しいという話だ。以前、辻仁成と江国香織がそれぞれ1冊ずつ男と女の視点から恋愛小説を書いたことがあるが、あれは独立したものだったから、まだお互いの個性は保つことができた。でも今回のような共作は本当に難しい。


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