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映画・演劇のレビュー

Zsystemプロデュース 『新世界 BALLAD』

2011-05-01 19:30:24 | 演劇
 劇団太陽族、岩崎正裕さんが演出を担当したZsystemプロデュース の新作である。作品自体は岩崎さんの前作『大阪マクベス』の続編のような作品になっている。近未来の大阪を舞台にした作品。

 言語規制の敷かれた日本では標準語を喋ることが義務付けられた。だが、大阪ではそれに反対し今も大阪弁をしゃべる人々が後を絶たない。政府の言語警察による弾圧が続く中、レジスタンス活動をする団体と、政府との戦いが描かれる。

 設定自体は漫画でしかない。いつもの岩崎さんの台本ではないから、岩崎さんならやらないような緩いドラマ設定も平気でする。リアリティー重視ではなく、単純な状況設定によるドラマの構造から話を強引に進めていく。だが、こういう荒唐無稽な話だからこそ、語れる本音がある。『さらば愛しの大統領』レベルのバカバカしさなのだが、岩崎さんはそれをいつもの誠実さで見せてくれる。台本は山藤衛史さん。まだ若い作家による強引なドラマ作りは穴だらけで、このまま芝居にするのは、困難を極める。だが、それを岩崎さんが全面的にリライトしたなら、彼の本ではなくなるし、太陽族の作品ではないから、それを無理矢理自分のフィールドに引き寄せたのでは、この企画自体の方向性を変えることにもなりかねない。まず原作重視で、演出はその補助に当たるという方針に徹する。その結果、いつもの岩崎さんの作品なら、考えられないような甘いものになった。でも、そのことがこの作品をつまらないものにしたとは思わない。

 政府の愚かな方針にあくまでも抵抗の姿勢を崩さない人々による戦いという基本線は全編に貫かれる。その一点だけから、この作品は作られる。そこがぶれないから、面白い作品になった。荒唐無稽や、おざなりの展開にはこの際、目を瞑ろう。主人公たちの想いさえ伝わればいいからだ。

 ラストの安直なまでものハッピーエンドには、なんだかそれはあまりにノーテンキだろ、と笑ってしまうのだが、それでもそれが許せるのは、この作品が社会派のリアリティーに貫かれたものではなく、漫画でしかないからだろう。

 そういう意味では、中途半端な改変を加えずにオリジナル重視で作ったことによる、この一貫性の勝利だ。日本政府による大阪切り離し政策とか、中国への委譲とか、大胆な設定が、大阪独立への布石だったのだが、大団円があまりにノーテンキ過ぎて、これは普通ならあきれるところだった。だが、それがギリギリでなんとか成り立ったのは、岩崎さんの演出力の賜物である。丁寧に見せる姿勢も崩さなかったのが、よかった。ただの漫画でしかない、と観客が投げ出すようではあのラストに、あんなにも簡単に感動できなかったはずだ。あの勝利を支持できたのは、作者の姿勢にぶれがなかったことによる。大阪独立から始まる物語にも興味が湧く。ぜひ、続編を作ってもらいたい。

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