森見の最新作は彼の第2作である『4畳半神話体系』の続編だ。今回も4畳半のアパートの1室の中で繰り広げられる変態的妄想の数々が際限なく続いていく。だが、前作のようには面白くはない。というか、今回彼小説を読んで初めて、違和感を感じた。こんなことはなかったことだ。今まで、彼の戯言の数々をすべて心地よく受け流せてきたのに、この作品だけは、受け入れ難く思えたのは何故ぜだろうか?
四畳半王国を巡る7つのエピソードは、いつもながらのバカバカしさで貫かれており、ここに登場する阿呆な学生たちの狂態も、いつもの森見世界なのだが、なんか理屈っぽくって、つまらない。それは主人公たちに今いち、魅力的ではないことも影響しているのではないか。基本的には四畳半の世界から出ることなく、そこに果てしなく広がっていく妄想を描いていくというスタイルもマイナスに作用した。さらには、結果的にこれが個人を主人公にしたものではなく、集団の物語となっていることも大きい。最後まで、作品世界の中に入り込めないまま終わってしまった。
同じ四畳半ものでも、初期作品である『四畳半神話体系』はこんなことがなかった。冴えない大学3年生である主人公が、夢にまで見た「バラ色のキャンパスライフ」を悪友小津のせいで、散々な目にあわされていく姿を、4つのパラレルワールドの物語として展開したあの作品は、人生はどんな選択をしても結局全く同じようなことにしかならないけど、そんな中で懸命に生きている阿呆な彼の姿がとても微笑ましくって、結局は同じような袋小路に陥るにしてもそれでもドタバタもがき苦しむ姿は感動的でもあり、彼の第3作であり大傑作でもある『夜は短し歩けよ乙女』に通じる世界観が示されたものだった。なのに、今回は、そんな可能性がまるで感じられない。
四畳半王国だけでなく、大日本凡人会とか、図書館警察、詭弁論部とかいうなじみの団体もどうでもいいことなのだ。そんなことよりも幻の黒髪の乙女を求めて京のまちを走りまわっていく、そのエネルギーの中にこそ感動があったのだと思う。この小説を読んだ後、思わずもう一度『四畳半神話体系』を読み返してしまうほど、ストレスの溜まる作品だった。
四畳半王国を巡る7つのエピソードは、いつもながらのバカバカしさで貫かれており、ここに登場する阿呆な学生たちの狂態も、いつもの森見世界なのだが、なんか理屈っぽくって、つまらない。それは主人公たちに今いち、魅力的ではないことも影響しているのではないか。基本的には四畳半の世界から出ることなく、そこに果てしなく広がっていく妄想を描いていくというスタイルもマイナスに作用した。さらには、結果的にこれが個人を主人公にしたものではなく、集団の物語となっていることも大きい。最後まで、作品世界の中に入り込めないまま終わってしまった。
同じ四畳半ものでも、初期作品である『四畳半神話体系』はこんなことがなかった。冴えない大学3年生である主人公が、夢にまで見た「バラ色のキャンパスライフ」を悪友小津のせいで、散々な目にあわされていく姿を、4つのパラレルワールドの物語として展開したあの作品は、人生はどんな選択をしても結局全く同じようなことにしかならないけど、そんな中で懸命に生きている阿呆な彼の姿がとても微笑ましくって、結局は同じような袋小路に陥るにしてもそれでもドタバタもがき苦しむ姿は感動的でもあり、彼の第3作であり大傑作でもある『夜は短し歩けよ乙女』に通じる世界観が示されたものだった。なのに、今回は、そんな可能性がまるで感じられない。
四畳半王国だけでなく、大日本凡人会とか、図書館警察、詭弁論部とかいうなじみの団体もどうでもいいことなのだ。そんなことよりも幻の黒髪の乙女を求めて京のまちを走りまわっていく、そのエネルギーの中にこそ感動があったのだと思う。この小説を読んだ後、思わずもう一度『四畳半神話体系』を読み返してしまうほど、ストレスの溜まる作品だった。