8篇からなる短編集である。だが、最初は連作か、と思った。どこを切り取っても、どこかで見た佐伯一麦の小説と同じで、どこかで読んだ話をまたしてる、という印象だ。しかも、相変わらずのメリハリのなさで、淡々とどこを切り取ってもいいような日常が綴られるばかりだ。では、つまらないのか、というと、そうではない。とても面白いのだ。
夫婦の暮らし。季節の流れ。日々のスケッチが、ただ漫然と描かれるように見える。だが、それが読み手である僕の胸に沁みる。鮮やかな短編というのではない。そんな大仰さとは無縁のエッセイと呼んでも支障のないようなさりげなさだ。
特に最初の三篇が好きだ。『ケンポナシ』『誰かがそれを』『俺』は特定の誰かが描かれてあるとは言い切れないから、連作だと思ったようだ。年老いた父がオレオレ詐欺にひっかかりそうになる『俺』がいい。ぼけはじめた頑固な父。心配する母。小説家の主人公。これだけきちんとした話があって、ちょっと小説みたいだ。(まぁ、全部小説ですが)『むかご』はまたマンションの管理人の話。どの話も淡くて読んだ先から忘れてしまいそうだ。でも、そこがいい。
『焼き鳥とクラリネット』はなんだか良く出来た話でちょっと頭で作った話って感じ。佐伯一麦らしくない。最後の時代小説は異質で、全体のカラーには合わない気がする。
夫婦の暮らし。季節の流れ。日々のスケッチが、ただ漫然と描かれるように見える。だが、それが読み手である僕の胸に沁みる。鮮やかな短編というのではない。そんな大仰さとは無縁のエッセイと呼んでも支障のないようなさりげなさだ。
特に最初の三篇が好きだ。『ケンポナシ』『誰かがそれを』『俺』は特定の誰かが描かれてあるとは言い切れないから、連作だと思ったようだ。年老いた父がオレオレ詐欺にひっかかりそうになる『俺』がいい。ぼけはじめた頑固な父。心配する母。小説家の主人公。これだけきちんとした話があって、ちょっと小説みたいだ。(まぁ、全部小説ですが)『むかご』はまたマンションの管理人の話。どの話も淡くて読んだ先から忘れてしまいそうだ。でも、そこがいい。
『焼き鳥とクラリネット』はなんだか良く出来た話でちょっと頭で作った話って感じ。佐伯一麦らしくない。最後の時代小説は異質で、全体のカラーには合わない気がする。