これはまるでおとぎ話のような小さなお話。ファンタジーなので、リアリティーなんてなくても構わない、とは思わないけど、リアリズムで考えたなら、こんなのはありえない、でおしまい。問題外の映画である。しかし、とても丁寧に可愛らしい物語として纏める努力だけはしてあるから、これはその次元からだけで見なくてはならない映画なんだ、と思うことにする。
8歳の頃から11年間眠り続ける女の子(加藤ローサ)と彼女の . . . 本文を読む
タイトルにある「46億年」という果てしない時間が描かれる。それは、こんなにも身近にいても気持ちが届くことがない、という距離のことでもある。2人はとてつもなく遠い。
松田龍平と安藤政信を主人公にして、当然それぞれの事情から、しかし同じように殺人を犯し、同じ日に服役した2人が、刑務所という閉鎖空間の中で育む愛の物語、のはずなのだが、監督はあの三池崇史である。そんな簡単で美しいだけの映画にはなるは . . . 本文を読む
このたった1時間ほどの短い芝居が、とても面白い。とても小さな芝居だ。意図的にそのスケールが保たれている。この話なら大作仕立てにすることも充分可能だ。だから、しない。社会派ドラマとしても、近未来SFとしても成立する。だから、しない。鈴江俊郎さんはあくまでも小さな話として立ち上げることで、可能なものとしてこの芝居を構成する。
世界のかたすみに生きる4人の男女。ロンドンのパン工場で働く不法滞在の女 . . . 本文を読む
中村さんの意図したものが、効果的に機能し、方法論とテーマが上手く融合したバランスのいい作品になっている。ラストでバタバタと謎解きがなされるが、芝居はミステリではないから、謎が解けたからといって、ほっとさせられるという類のものではない。
この作品にとって大切なのはお話に仕掛けられた謎が解明されていくことの快感ではなく、その事実を通して、ここに住む人たちの内面に抱えた痛み、実情がより鮮明に我々の胸 . . . 本文を読む
恩田陸は今回も仕掛けに失敗している。もういいかげんこういう小さな話はやめにすべきだ。例えば100歩譲ってこの話でもいいとする。その場合でも、もう少ししっかりと人間を描くなり、背後の世界を描くなりしてくれないと、あまりに説得力がなさ過ぎて、しらけてしまうばかりだ。
お話の辻褄あわせなんて、いいからもっとしっかり世界観を見せるなりして欲しい。絵空事の世界ではなく、血の通った人間世界を、である。ミ . . . 本文を読む
先週、秋原正俊という人の映画を始めて見た。『春の居場所』という小さな作品である。決して満足のいく作品ではないが、ほんの少し気になる部分がある映画で、(これを映画といっていいのか、というくらいに、さりげない作品だ)僕の誤解かも知れないが、この作者はとても微妙な人間の気持ちを丁寧に描きとろうとしているのではないか、なんて思った。
たった10年程の時間の経過で、あれほど好きだった男の子の顔を見忘れ . . . 本文を読む
リュック・ベッソンが特別な監督だった時代。デビュー作『最後の戦い』を見た時の驚き。こんなにもシンプルで美しい映画を作るフランスの新しい才能との出会いに歓喜する。その前後『サブウェイ』である。(順番に見たのか、もしかしたらこっちを先に見たのか、定かではないのは何故?)この映画は僕にとっても、そしてたくさんの映画ファンにとっても忘れられない1本だろう。
ジャン・ジャック・ベネックスと並んで、フラ . . . 本文を読む
虹色のししゃもを巡る町おこしの物語。東京での華やかな生活を引き払って、北海道の片田舎に帰ってきたヒロインの恭子。一流商社をリストラされて失意のまま帰郷した。まだ、20代後半で、まだまだ人生はこれからなのに。そんな彼女の敗者復活を賭けた戦いが描かれる。
特にどうってことない小説で、ラストまで、一気に読ませる力はあるが、それ以上でも、以下でもない。別に読み流してもよかったのだが、なんだか、少し気 . . . 本文を読む
初めてセレノグラフィカを見た。えっ!って思うようなパフォーマンスだった。特別なことをしているわけでもないのに、新鮮で、刺激的。でも上手く言葉にはできない。だいたいダンスを言葉にするなんて根本的に不可能なんだろう、といつも思う。理屈ではないんだから。とくによく出来たものを見ると、言葉を失う。
2部構成。前半は25分ほどの無音によるパフォーマンス。動きが小さく2人のダンサーが、舞台上に出ているに . . . 本文を読む
よくぞまぁこんな芝居を作ったものである。きっと阿部さんがなかなか書けなくて、締切(なんてあるのかなぁ?)ギリギリでどうしようもなくなった上での苦肉の策が、今回の芝居なんだろう。それを許してしまうのもなんだか、と思うが、それを反対に楽しもうとするこの劇団の体質が素晴らしい。(皮肉ではない!)
新作がもう不可能なら、それなら、それでも新作として「阿部は今回台本が書けない」という台本を書こう、と決 . . . 本文を読む
5つの作品からなる短編集。タイトルロールは、映画監督が新作の宣伝も兼ねたTVの本番中に、生意気な男子中学生を殴ってしまう。その事件のため、謹慎中の自宅で、自分の人生を回想する。ベットで横になりながら、その事件の事の次第を自分なりに整理していく。さらには、彼が生きてきた人生を振り返る。
30歳でデビュー。東洋のゴダールともてはやされたこと。スランプに陥ってしまった日々。フランスに渡り4年間生活 . . . 本文を読む
郊外で暮らす四人家族のありふれた日常を描いていたのに、それがいつの間にか奇妙な異次元に迷い込んでいく。前半はかなり面白かった。息子の靴を洗うことに執着する母親。(靴なんか今時洗わないと思う)自分が仕事もしないでふらふらしていることを、近所の人に悟られないように、外出のサイクル、時間まで気にしている主人公。大学院生に見えるようにする、なんてかなり異常だ。「ありふれた」と書いたが、ちょっと考えるだけ . . . 本文を読む