娑羅の木は、白い花をつけるそうな。
まだ咲いたところを見たことがない。
よくバラの苗木を買う植木市場のサイトの情報によると娑羅は聖なる木
と云われ寺院などに植栽されるらしい。名前からなのだろうが、白い花
はアクがなくてふさわしいのだろう。
今回、たくさんいただいた娑羅の木。苗木ではなくすでに若木に成長し
みかけより重い。わたしも移動するときに担ごうとしたが手に負えなくて
つるつるとした樹皮やしなやかな枝振りの印象とは違っていた。

庭のどの場所がいいか、よく考えたいので根が傷まないようにとりあえず
敷地の奥の空いているところへ仮植えすることになった。
昨年末から難題を抱え込んでいるN君がカメを手伝っているのをみて思った。
娑羅の木が定位置におさまり白い花がつく夏頃までには、N君の覚悟も
ひとつの形になっていることだろうと。
思い、そして願った。
木を植える。そして木は育ち生き続ける。
それを見せてもらうことで、人は立ちつづけることができる。
勇気という言葉は明るい陽がさしている時にこそふさわしい気がして、
この際、違う気がする。
苦い涙のときには娑羅の木の白い花びらのやわらかさがありがたい。
それは勇気ではなくて、慈悲。

苦しみ抜いた人のうえに、慈悲の花びらが降り注ぎますように。