想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

おいら闘病犬になるぜ、ちょこっとな。

2010-03-05 00:40:31 | Weblog
昨日、約束の時間40分過ぎてもひたすら耐えてもらってきた紹介状先の大学病院に
直行せずに、セカンドオピニオンのため六本木ヒルズ前の小動物病院へ行った。
ここは駐車場がなく路駐するしかなく付き添いなくして行けない不便な病院だ。

その若い医師はベイビーの肛門に指を入れること数分間、ベイビーもよく我慢した。
ああ、ありますね。あります、という医師の声でがっくりきた。
なんだかわからないけど、ある。
小さな瘤があってそこから出血しているらしい。血便の原因はとりあえずそれだった。
あとは精密検査をしてどの範囲に瘤があるかを知る必要があるのだが、なにせ高齢犬の
ベイビーなので大事をとって血液検査とレントゲンで身体検査をすることになった。
2時間待ちであった。

再び行くと無事終了しましたー、あっちで遊んでますと言われてみると床でニコニコ顔。
看護士さんにお愛想ふりまいているのだった。女子がいるとごきげんなのである。
して、医師は渋い顔である。聞くのがなにやらおそろしい気がして腰がひける。
前脚、悪いですかとまず聞かれた。
ええ、ちょっと痛いみたいですね、あまり走らなくなりました、そういうと医師の顔が
パッと明るくなった。実はレントゲンの時、あまり元気なもので男二人で押さえつけて
それで脚を痛がっていたからもしかしてこっちで傷めたかと心配してたもんで、という。
じゃ本題入りますと声が明るくなった医師が続けた。

血液検査、この通りなんですがと一覧表を示して数値の説明を始めた。見ればわかった。
オーケーなんじゃない? と見て思った。数値はどれも許容範囲なのだ。
いいですね、と言うと、そうなんです、びっくりです、12歳でこれはおどろきました、
優秀ですこれを見るかぎりは、という。
そうだよね、これだけじゃわからんものな、まだ続きがあるならさっさとしゃべってくれ
と思うが長々と説明するのである。
声のトーンがだんだん高くなってきて、自分の声に酔うタイプの男性ではないかとふと
疑ったりするが、時々合う眼はマジメで誠実そう、あるいは熱情型にみえる。

レントゲン写真が5枚ずらずらと並べられベイビーの体内が映し出された。
おお、りっぱな背骨だと思っていると医師が言った。
心臓、デカイです。こっからここまでこれが心臓なんですが、この子は標準サイズより
デカイ、つまりデカイってことは肥大ってことで。
肥大ですか? デカイと肥大は同じですか?と言うと、いや、そこ、そこなんですよ。
心音を聞くかぎり問題ないし、肥大とも言えないんじゃないかと問題にする必要ない
んじゃないかと現段階では思いますです、と言った。ほっとする。
一年前、かかりつけ医師にやはりお尻を見てもらったとき、心音を聞いてその医師が
言ったのは、若いねーあんた若いよー、心臓がこれだけ丈夫ならだいじょうぶ、だった。
そしてお尻の穴に指を入れて、問題ないよーとその医師は言ったのだった。
お尻は別として心臓はだいじょうぶだったはず、ちょっとデカイだけさと思う。
お尻はあのときほんとうにだいじょうぶだったのか、とふと思う。思いたくないが。

そして内臓を次々に見て、ガスが溜まっていることが判明。原因は来院してからずっと
ハアハアと荒い息をして興奮していることも原因になるのでと医師は言った。
それより前立腺がやや腫れてます、ここだけ歳相応ってとこでしょうか、そう言って
な、しょうがないよな、とベイビーに向かって笑いかけた。ベイビーはハアハアと返事する。
診察中に気心が知れたらしい。

肝心の直腸から肛門への部分はレントゲンには鮮明には写っていなかった。
やはりそこを見るには内視鏡検査しかないが、リンパ節各所に変異はみられないことが
わかり現段階で癌の転移の心配だけはないということだ。
内視鏡検査でポリープを調べ、生体検査をしなければ悪性か良性かただのポリープなのか
わからない。わからなければ治療方針が決まらないと医師は言った。
そして、うーーんとうなっている。
お持ちの紹介状の大学は内視鏡検査ははっきり言ってヘタクソですから他の大学病院を
紹介しますし、医師も紹介します。これまでの検査内容なら全身麻酔を受けてもほぼ
だいじょうぶだと言えます、と結んだ。



さて、ここからはおっかあの番である。どうするか決めるのはあたいである。
「悪性の場合は切りますよね?」 とまず聞いた。
「はい、切ります。しかし切った後の問題は転移ですから癌を叩く治療が必要です。」
「いやそうなったら緩和ケアでお願いしたいので」と小さな声で言った。なぜか声が
小さくなるのであった‥。
すると医師は急にまたあの高い透る声に戻って言うのであった。
「ああ、それならこうしましょう、そうだ、そうだ、おっしゃるとおりです。
まずはですね、内科的治療を試みて様子を見ましょう。内視鏡で調べるのはそれから
でもいいと思います。抗生剤とちょっと強いですがステロイドを使うのはどうでしょうか。
問題はステロイドを使った場合、もしかして癌だった場合がやっかいなのです。
癌が隠れてしまうというか治療しにくいんですね。そういう問題が起きるかもしれない
けれどもそれもやってみないとわからないってことです、はい。」
「お薬で、お願いします。だいじょうぶな気がするので。体力今はあるということが
わかったのはとてもよかったです。検査してよかったと思います。」
「わかりました、この子ならだいじょうぶかもしれない。いや、ほんと癌が小さくなった
子だっているんですよ、薬でね。やってみましょう。」
希望の持てそうな話を最後に持ってくるんだものなあ、でもこの医師が慎重であることは
わかった。押し付けたり威圧したりもしない。セカンドオピニオンで来たことを知っても
対応に変化はなかった。とりあえず嘘はつかないようなので○。

そこへ院長が戻ってきた。それまで若い医師と助手と看護士しかいなかったので
久しく来ないうちにあの院長先生はいなくなったのだろうかと気になったりして
いたのであった。院長のまん丸の童顔を見てほっとした。
ベイビーも小太りの院長に体当たりして、シッポバンバンでさっそく歓迎した。

長い時間を診察のために費やして、ベイビーは疲れたことだろう。
わたしは一つだけ前に歩を進めて、一つだけ小さな覚悟をした。
老いるのはいっしょだ。いっしょに過ごしていくだけだ。
もっと賢く鋭くなりたいものだ。もの言わぬベイビーの不自由がすぐにわかる
ように。その点、足らんので鋭意努力するのみである。

神さまに、痛くなりませんようにとだけお願いお願いお願いしますだ。
(カメが幾人もの人々の激しい痛みを和らげてきたことを近くに見て知っているのさ
ここ一番、ベイビーのためにもお願いせねばならんのである)




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする