愛娘にぞっこんのT君が「○子ちゃんオススメのお汁粉、うまいんです!
ほんと!」とリキ入れて言うので、ではでは、と作ってもらいました。
作ったのは○子ちゃんじゃなくて、すっかりパパになっちまってるT君
なんだけど‥。
あっさりとほどよい甘さで小さなお餅がオサレなお汁粉。
みんなでいただいて、しず~かに。日暮れ近くなってるこの時間に
ちょうどよい温かさで小腹にしみわたりました。
ま、いい感じね、とかそこそこ褒めて(ほんとはとても美味しかった)
箸を置くと、カメがカメラを取り上げてパチリ。
何を写してるのかと思ったら、お月さんでした。
○子ちゃん、生まれる前から知っていて、生まれたら名前を考えて
その子がすくすく育ってるってことが、胸の奥のほうをあたたかく
してくれる。そのたからものを大事に大事にいとおしんでいる彼から
家族の団らんが伝わってくる。
生活できることの喜び、シンプルなそれだけのこと。
それが人をこんなにも変えてしまうなんて、ステキだ。
そういえば、うさこも生活を知ってからほんとうに幸せを知った、
そのころのことを、少し思い出しました。
石牟礼道子さんの「苦海浄土」を傍らに置いて、数行読むと本から手を離し、
置いてからしか再び読めない衝撃を、いくたびもくりかえし身に受けて、
それでもまた手にとって目を凝らす。
シンプルな喜びを奪われた苦しみを「知らないことの後ろめたさ」が
体中を駆け抜けて、しあわせとはその足元と手元と唇の先、まなこのすぐ
前にあるものだと割れるような音響が耳元で叫んでいる。
同じ日の午後、うさこの胸の中には現実と過去の悲劇が混在して
どちらかといえば疲れ、ひしゃげたような心持ちだったのであります。