想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

樹のなかで想う

2010-11-25 09:54:35 | Weblog

森は水をたくわえ、水は人の間を通り抜け、海へ。
想像すること。



森にいて、海を思う。
虫も鳥も魚も、つながっていることを想像する。
わたしもつながりたい。




三十年から四十年、一番古い樹でもそのくらいの齢と
おぼしきこれらの樹、樹の世界ではまだまだひよっこ。
なのにあなたがたよりも長く生きてきたわたしを、歳
若くとも慰めてくれる力があるのね。
黙って立っているようにしかみえないけれど。

黙っていると思うのはヒトの勝手で、と答えが返って、
樹は樹の言葉があるという。
あるときは歌うこともあってさ、という。
鳥のヒナをあやすのはわたしの好きなこと、と聞こえる。
そういう声が響いて、さざめいて、周囲を包む。
存在とは、響き。それが生きているものの証。

コンクリートに囲まれたヒトの方は、響きなどとうに失い
ついでに言葉も通わなくなってきた。
遠い峰に昇る烽火を見た眼と遠来の足音を聞いた耳の主も
今はどこを探せばいいのかわからない。
知っている者はひっそりと声を上げなくなった。

いったい誰のせい?誰のせい?
誰しもが隣を見、前を見、上を見る。
都合の悪いことはお上のせいで、前を歩いた者のせい。
では誰が、失ったものを取り戻すために考えるというのか。
明き盲目(めくら)が旗を振り、ぞろぞろと連なる列は
すでに道にはみ出すほどに増殖して。

独りではないと思いたい。
影ぼうしのように離れない不安
他人の背中に続いても消えない。
樹の根元に座われば、聴こえてくる。
忘れないでと呼ぶ声。ささやく声。泣いている声。
そこによりかかっていると、いつか晴れてくるのだ。

(海の底を被った水銀ヘドロの嵩はとうてい掬い採ることは
不可能で、ヘドロごと、水銀ごと埋め立ててしまった。
百年前の美しい湾は消え、そのあとに醜い所行を隠すように
公園が作られているのが現在の水俣湾。人々は生きていかねば
ならないので、それもまた一つの解決であったけれど、問題は
当初から患者組織が反対していた埋め立ての方法。
あと百年持つかどうかが問題だ。埋め立てたコンクリートの亀裂
から水銀はふたたび海を汚し、魚は何も知らずに死んでいかない
ともかぎらないからだ。
水処理の男よ、課題は尽きないぜ。世の資本主義の罪と貴方の仕事は
どうやら風が吹けば桶やがもうかるの関係らしいね。
罪業の傍らで「消し屋稼業」大いなる野望は芽生えたろうか?)








コメント
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