「屋根」 森男画
比企の里山に鯉のぼりが翩翻(へんぽん=ひらひら)と翻って(ひるがえって)、気持ちの良いドライブだった。
森林公園への往復。窓を全開にして、緑の風を肺一杯に吸い込んだ。
甍の波と雲の波
重なる波の中空を
橘かおる朝風に
高く泳ぐや鯉のぼり
開ける広き其の口に
舟をも呑まん様見えて
ゆたかに振るう尾鰭には
物に動ぜぬ姿あり
百瀬の瀧を登りなば
忽ち龍になりぬべき
わが身に似よや男子と
空に躍るや鯉のぼり
大正二年、純情小学校唱歌である。
「じゅんじょう」なんて、阿呆パソでは変換しない。まあ、実情と大分違うが、「純情」と出たままにしておこう。
行進曲風の曲は良いが、歌詞が難解だ。
甍=いらか=屋根の背。屋根の棟瓦。
(へえ、そうだったのか。瓦と思ってた。や~ねぇ)
橘=たちばな=食用柑橘類の総称。日本橘または枳殻花の別称。
尾鰭=おひれ=尾とひれ。
百=もも=数の多いことを示す語。
瀧=たき
忽ち=たちまち
龍=りゅう=想像上の動物。
中国で、心霊視される鱗虫の長。鳳・麟・亀とともに四瑞の一。
よく雲を起こし雨を呼ぶという。
インド神話で蛇を神格化した人面蛇身の半神。大海や.......以下略
(相変わらず、電子辞書は意地悪。一度では用が済まない)
男子=おのこ=男の子
実家の柱や長押や梁は太かったが、屋根はトタンだった。
関東大震災のすぐ後に建てたので、祖父が当時の最新工法を採用して、軽い屋根にした、と父は言っていた。
トタンでも雲型の飾りが付き、トタン甍(早速使うのだ)があった。
雲の中に雀が巣を作り、青大将が卵を採りに登って、大騒ぎをしたことがあった。
当時は大家族。中学生になってからは、屋根裏部屋をあてがわれていた。
夏の夜、大雨が降ると、物凄い音がして目が覚めた。
真夏の昼間は暑くて、いられたものじゃなく、瓦屋根の家が羨ましかった。
日本の町が、みっともないのは、ばらばら、まちまちの屋根が原因の一つだと思う。
カープカプカプカと聞こえる広島カープ応援歌もばらばらで、みっともない。
鯉のぼりの歌こそカープの応援歌にふさわしい。
高校野球の行進曲にして、国語力の向上に役立てるのもいいかも。
この歌は、甍の波の町の鯉のぼり。
新緑の波の比企丘陵に泳ぐ鯉のぼりにも、よく似合う。
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