林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

丸木美術館へ行こう

2007-06-18 | 色めがね

 

 森林公園から帰る途中、夕方が来そうもないカンカン照りで、寄り道をした。
行き先は「丸木美術館」である。

 目的は例の原爆図ではなく、俊さんの展覧会である。
色彩画家と聞いていた丸木俊夫人の回顧展を開いている、と聞いたような気がしたし、美術館の下を流れる都幾川の清流を見たかったからである。

 汗と土でぐしゃぐしゃになった作業服に、豆絞りの手拭を鉢巻にしたままのゲ-ジュツ鑑賞は、少し気がひけたが、出直して来るのはガソリン代が大変だ。
切符売り場で、「?」、と言う顔をされたのは自意識過剰かもな。

 入館料は735円。半端な金額は、この美術館の素人っぽい佇まいと、上の画像にしたチラシの証。
少し前に、美術館閉鎖の恐れが報道されたので、土方のおっさんは、お釣の265円を寄付しましたよ。......ああ、いい気持ちだ。

 肝心の「丸木俊展・女子美術時代から《原爆の図》まで」は、残念ながら残念だった。
出品作品が少な過ぎるのである。しかも、大した物が殆ど無いのである。

 チラシに載っている「ヤップ島」は、実物の方が断然素晴らしく、陽射しと日陰の対比がもっと強烈。トロピカルフル-ツの芳香が漂ってくるし、現地の人々の体温が伝わってくる濃厚な作品だ。
 会場中央に展示した固太りの裸婦立像の大作は、カラリと明るく、まるで菩薩さま。

 俊は日本の女ゴーギャンを目指して、南洋諸島に滞在した色彩画家のはず。だが、裏付ける作品は、ほんの数点。もっと沢山あるはずだ。大昔にTVで観たような気がする。
スプリンクラーどころか、冷房さえ無い美術館の借り出し交渉は大変だったろう。でも、もっと頑張って欲しかった。

 

 とはいっても、「丸木美術館」はやはりお勧めしたい。
丸木位里・俊夫妻が合作した「原爆の図」が、大迫力なのである。
地獄図絵の恐ろしい作品なのだが、宗教画のような崇高さがあり、これを見なければ日本人じゃないね。アベさん見たかい?
但し、物見遊山やボランティア帰りのいい加減な気分での鑑賞は止めた方がいい。

 それにもう一つ。
丸木位里、つまり俊のお姑さんのスマの作品群。
74歳ころから始めた絵が素晴らしい。もちろん下手なのだが、色が綺麗で、何よりも楽しそう。堅山南風が、職業画家が苦心惨憺して追い求めている境地に楽々達していて、子供が描いたような作品、と褒めている。同感です。

 俊展は期待外れだった。
しかし戦争が好きな人は、時々丸木美術館へ行って下さい。
原爆の惨状を心に刻み、スマさんに生きる喜びを頂けば、お釣りをカンパしても、身体にいいと思いますよ。

 

 2階の屋根裏にある丸木夫妻の画室や、美術館下の清流も素晴らしい。

 県道沿いにあった駐車場は手離してしまった模様。林の中の細い道の奥にある美術館は捜しにくい。道を尋ねようにも、人家は無く、通行人はおりません。

●夏期、「原爆の図」は愛知県高浜市に出張している模様です。


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