一枚のページを捲る。

夏が終わる。

夏が終わり、秋がいま訪れようとしている。

夏の想い出を書き込むことの出来なかった一冊のノートを、
いま、閉じる前に、
一枚捲ってみる。
白紙か・・・
そう言えば、この夏は何もなかった、
寂しいな・・・

そう想いながら旅先で買った、
いつものカップに熱いコーヒーを入れ、陽炎となってゆれる湯気の先に、
灼熱の夏に見知らぬ人と歩いて過した、
礼文の愛とロマンの８時間コースを、ぼんやり・・・幻を追うように想い浮かべる。
今となっては、
それは遠い昔に埋めてきた幻の想いで。
出会い、共に歩いたあの人たちは、今はどうしているだろう、
囲炉裏端に座り、車座で話したあの人、
もう黄泉の住人。

旅。
夏のなかに、いつもの風と色彩を求めることなく、
悪戯に時だけが過ぎて、
暑さの残る街のなかで夏の終わりを悟り、
もう終わった夏を哀しむ。

初秋。
風のなかに秋を感じる。いま、
いいな・・・ひと息つける爽やかな風、少し冷やっこい水を感じる風。
何の想いでもない空白のページを捲り、
秋の印をつけて、
愛するあなたに届けたい。

「秋・・・届いたよ」その一言だけを。