大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『村上海賊の娘』

2017-01-09 06:49:14 | 映画評
タキさんの押しつけ読書感想
『村上海賊の娘』



昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、個人的に身内に流している読書感想ですが、もったいないので転載したものです。


「のぼうの城」作者、和田竜最新刊です。

 織田信長が大坂(石山とも……後の大坂城になる場所)本願寺に退去を求めていた天正四年(1576年)、信長は天王寺などに砦を築き上げ兵糧攻めの体制にあった。陸路の兵站は切られ、本願寺に籠もった2万人弱の門徒達は飢餓に瀕していた。海路参戦する門徒達の運び込んでくるわずかな米だけが彼らの命を繋いでいた。門主・顕如は、上杉謙信に援助を請うと共に、西国 毛利に十万石の米を請うた。
 この時代背景を舞台に、伊予から本願寺に向け 瀬戸内海を行く門徒百姓衆、瀬戸内を支配する村上海賊、信長についた泉州武士と淡輪の海賊眞壁一族達の攻防を描く。
 
 毎度ながら、この人の描く小説はビジュアライズを意識して描かれており、読んでいて映像がまざまざと浮かび上がる。
 村上水軍には三家あり、能島・因島・来島の内 最大勢力の能島村上の娘/景姫(キョウヒメ…キョウサンと呼ばれる女性に強い人が多いと思うのは私だけ?)が主人公であり彼女の成長を追うのがメインストーリー。
 これも毎度の事ながら、和田さんの本の登場人物は主人公以外にも実に魅力的なキャラクターが配されている。名前の出てくる人物は総て主役かと思わせられる。私なんかは眞壁海賊の七五三兵衛(シメノヒョウエ)にゾッコンであります。巨漢の怪物、柄は悪い、がさつながら、何ともいえぬユーモアを持ち、生き方に芯を持っている。
 女性は景姫以外にもう一人登場するだけで、後は全員男ばっかり、景姫にしても男顔負けの女海賊だから……本作に女はいない……っつな事には成らんのであります。景姫ほど女の中の女はいない。男の読者は絶対彼女に恋してしまう。
 戦国エンタメとして文句なしの一作。歴史書として、海賊活劇として、戦国を生き抜く人々の物語として、様々な角度から楽しめる。決して読者を飽きさせず、巻を開くや一気に読まずにはいられない。
 笑いもふんだんに盛り込まれ、殊に大阪人には爆笑間違いなし。泉州武者の一挙手一投足、一言一句……こら笑わずにはおれません。底抜けのアホ、小狡い裏切り者~いろいろ出て来ますが、みんな魅力的で憎めない。
 泉州弁が見事に文字化されていますが、この表記が正しいとすれば当時の泉州弁は今より和歌山の方言に近かったようです、泉州武士と言うよりは“和歌山のおいやん”が大挙出演しているように感じます。
 知り合いに岸和田のアンチャンか和歌山のおいやんがいたなら、彼らの叫び声は無茶苦茶リアルで、下手な漫才裸足ですゾ。
コメント
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