タキさんの押しつけ読書感想
『祈りの幕の下りるとき他』
昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している書評ですが、もったいないので転載したものです
書評のメールが大幅に遅れまして……じつは、TVドラマ「半沢直樹」の前半が終わった所で、シリーズ第一作だけを読むつもりが、一気に第二作はおろか最新刊まで読んじゃいました。
書評を書こうにもドラマはまだやってるし、ネタバレはいかんし……ちょうどええわと「楊令伝」を一から読み返してたら。東野圭吾が新刊だすわ、忘れていた「ハンガーゲーム」の第三部を見つけるわ……で、ズルズル来ちまいました。申し訳ございません。
さて、TVドラマ「半沢直樹」は社会現象になっちまったようで、最終回視聴率42-45%(瞬間50%を遥かに超えたとか)、 これで一番泡を喰ったのが他ならぬTBSだってのが大笑い。こんなにメガヒットになるとは夢にも思わなかったから、堺雅人のスケジュールは押さえてないわ、シリーズ化するにも原作あと一本しかないわ。さらに10月からの新ドラマがキムタク/柴崎コウの鳴り物入り(本来こっちが本命)、コイツの数字が悪かったら今後のドラマ制作にどんな支障がでますやら。
流行語大賞にしたところが「アベノミクス」なんざ早々に姿を消して、ライバル「ジェジェジェ」も一蹴、「倍返しだ!」が大本命。最近、実力もないのにやたら上司に噛みつく若いサラリーマンが増えたとか、中間管理職のおっちゃん達は戦々恐々としてるらしい(この腰の引け加減が笑わしてくれます。勘違いの若手を怒鳴りつけられないから事態が捻れる) こういう社員の増えているのが銀行じゃなくってテレビ、マスコミ関係だっていうからまたまた大爆笑。半沢のビデオがまだ出ていないので、今レンタル屋で人気なのが「クライマーズ・ハイ」 御巣鷹山日航機事故を取材した地方新聞社のお話、堺雅人が怒れる記者役で出演している。もう一つが、全く逆の発想から「南極料理人」が人気だそうです。原作も爆発的売れ行きで、作者の他作品も売れているとか……いやぁ、目出度い話であります。ドラマの後半も、途中経過が原作とは微妙に違っており、これがまた絶妙な効果を発揮しとります。
もうバラしてもええと思うんですが、原作との最大の違いは半沢の父は自殺しておらず、剣道も登場しません。半沢の不倶戴天の敵は常務ではなく、花ちゃんもテレビほどには活躍しません。ひっくり返すと、この変更が実にテレビ的効果をあげているのです。
さて、二階級特進以上の働きをした半沢次長ではありますが、頭取の深謀遠慮なのか、いくらなんでも制止を振り切ってやりすぎたのか、はたまた「斬れすぎる刀」として敬遠されたのか、結果は系列証券会社への出向に終わった訳であります。原作第三部において、またもやアリエネ~大暴れをやらかします。扱い金額も跳ね上がり、この分だと第四部では国家予算クラスになるんじゃ無いですかねぇ。となると、次なる相手は金融庁をぶっ飛ばして財務省やらユダヤ資本なんですかねぇ。まぁ、あんまり「ドラゴンボール化」(次々超絶能力の敵が現れる)せんように祈っています。とりあえず第三部(ゴメン、タイトル忘れました)はオススメです。まだ暫くは文庫にはならんかもしれませんが……。
東野圭吾「祈りの幕が下りるとき」は、「新参者」でお馴染みの加賀恭一郎シリーズの最新刊です。相変わらずのストーリーテリングで、物語がどう転ぶやら全く解らないまま、ドンドン読者を引っ張って行きます。 今回、恭一郎が子供の頃に別れた母親が登場、しかも事件の最重要容疑者と絡んでしまう。証拠は総て断片的ながら、巧く読者をミスリードしていく臭線は残っている。私なんざものの見事に騙されて「これは朝鮮特務絡みか」と思っておりました。終わってみるとシリーズ中MOST切ない幕切れ、ただ、これはシリーズファンにして初めて味わえる切なさです。まぁ、シリーズの初めからとは言いませんが、せめて「新参者」「麒麟の翼」だけはお読みになった上で本書に取りかかられる事をオススメいたしますです。
「ハンガーゲーム第三部」は、昨年11月には発売になっていました。つい先日手にしたのですが、未だに第一刷、どんだけ刷ったか知りませんが全く売れていないんでしょうねぇ。アメリカじゃ社会現象になる程の売り上げで、映画第一作も大ヒット。それが日本では殆ど宣伝もされず、映画も原作も不人気のままです。原作第一作は、主人公カットニス(16歳の女の子、弓の名手)の目線だけで語られる見事な世界観で、アメリカのヤングアダルト向けに新しい作品の登場を思わせたのですが。第二作は単なるジュビナイルに堕しているし、重大な設定に破綻も来している。最終刊で何らかの説明があるかと思いきや、まんまスルーしてある。物語を語る視線も混乱している。第三部で、カットニス個人の目線のみで語られる手法は復活するものの、今度はカットニスが初めから終わりまで混乱したまま、世界構造がひっくり返る結末にカットニスの決断が影響を及ぼすのですが、重大決断を下す彼女の心はグチャグチャのまま、果てはカットニスの行動をみずから責任とる訳でもなく、真実が明かされる訳でもなく……単に少女が一か八かで行動を起こし、彼女とは関係ない所で幕切れになった。暫くトラウマは残るが、どうやら時間と共に癒やされたようだ…チャンチャン。
アメリカで3部作総てが大ヒットならば、何がそんなに受けたのか、教えて欲しい。私にはさっぱり解らない。
楊令伝を読み返していて、北方謙三にして未だに作家として成長しているんだなぁと感じた。現在進行中の「岳飛伝」では、歴史を語る目、登場人物の心理、戦闘の描き方が洗練され、まず殆ど混乱する事はないが、楊令伝では時々表現に混乱がある。ただ、童貫を破るまでのひりつくような緊張は岳飛伝にはない。
とは言え、榛檜の登場、許定の暗躍、梁山泊の発展方向の芽等々、再確認出来て面白い。やっぱり、止められまへんなぁ。
『祈りの幕の下りるとき他』
昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している書評ですが、もったいないので転載したものです
書評のメールが大幅に遅れまして……じつは、TVドラマ「半沢直樹」の前半が終わった所で、シリーズ第一作だけを読むつもりが、一気に第二作はおろか最新刊まで読んじゃいました。
書評を書こうにもドラマはまだやってるし、ネタバレはいかんし……ちょうどええわと「楊令伝」を一から読み返してたら。東野圭吾が新刊だすわ、忘れていた「ハンガーゲーム」の第三部を見つけるわ……で、ズルズル来ちまいました。申し訳ございません。
さて、TVドラマ「半沢直樹」は社会現象になっちまったようで、最終回視聴率42-45%(瞬間50%を遥かに超えたとか)、 これで一番泡を喰ったのが他ならぬTBSだってのが大笑い。こんなにメガヒットになるとは夢にも思わなかったから、堺雅人のスケジュールは押さえてないわ、シリーズ化するにも原作あと一本しかないわ。さらに10月からの新ドラマがキムタク/柴崎コウの鳴り物入り(本来こっちが本命)、コイツの数字が悪かったら今後のドラマ制作にどんな支障がでますやら。
流行語大賞にしたところが「アベノミクス」なんざ早々に姿を消して、ライバル「ジェジェジェ」も一蹴、「倍返しだ!」が大本命。最近、実力もないのにやたら上司に噛みつく若いサラリーマンが増えたとか、中間管理職のおっちゃん達は戦々恐々としてるらしい(この腰の引け加減が笑わしてくれます。勘違いの若手を怒鳴りつけられないから事態が捻れる) こういう社員の増えているのが銀行じゃなくってテレビ、マスコミ関係だっていうからまたまた大爆笑。半沢のビデオがまだ出ていないので、今レンタル屋で人気なのが「クライマーズ・ハイ」 御巣鷹山日航機事故を取材した地方新聞社のお話、堺雅人が怒れる記者役で出演している。もう一つが、全く逆の発想から「南極料理人」が人気だそうです。原作も爆発的売れ行きで、作者の他作品も売れているとか……いやぁ、目出度い話であります。ドラマの後半も、途中経過が原作とは微妙に違っており、これがまた絶妙な効果を発揮しとります。
もうバラしてもええと思うんですが、原作との最大の違いは半沢の父は自殺しておらず、剣道も登場しません。半沢の不倶戴天の敵は常務ではなく、花ちゃんもテレビほどには活躍しません。ひっくり返すと、この変更が実にテレビ的効果をあげているのです。
さて、二階級特進以上の働きをした半沢次長ではありますが、頭取の深謀遠慮なのか、いくらなんでも制止を振り切ってやりすぎたのか、はたまた「斬れすぎる刀」として敬遠されたのか、結果は系列証券会社への出向に終わった訳であります。原作第三部において、またもやアリエネ~大暴れをやらかします。扱い金額も跳ね上がり、この分だと第四部では国家予算クラスになるんじゃ無いですかねぇ。となると、次なる相手は金融庁をぶっ飛ばして財務省やらユダヤ資本なんですかねぇ。まぁ、あんまり「ドラゴンボール化」(次々超絶能力の敵が現れる)せんように祈っています。とりあえず第三部(ゴメン、タイトル忘れました)はオススメです。まだ暫くは文庫にはならんかもしれませんが……。
東野圭吾「祈りの幕が下りるとき」は、「新参者」でお馴染みの加賀恭一郎シリーズの最新刊です。相変わらずのストーリーテリングで、物語がどう転ぶやら全く解らないまま、ドンドン読者を引っ張って行きます。 今回、恭一郎が子供の頃に別れた母親が登場、しかも事件の最重要容疑者と絡んでしまう。証拠は総て断片的ながら、巧く読者をミスリードしていく臭線は残っている。私なんざものの見事に騙されて「これは朝鮮特務絡みか」と思っておりました。終わってみるとシリーズ中MOST切ない幕切れ、ただ、これはシリーズファンにして初めて味わえる切なさです。まぁ、シリーズの初めからとは言いませんが、せめて「新参者」「麒麟の翼」だけはお読みになった上で本書に取りかかられる事をオススメいたしますです。
「ハンガーゲーム第三部」は、昨年11月には発売になっていました。つい先日手にしたのですが、未だに第一刷、どんだけ刷ったか知りませんが全く売れていないんでしょうねぇ。アメリカじゃ社会現象になる程の売り上げで、映画第一作も大ヒット。それが日本では殆ど宣伝もされず、映画も原作も不人気のままです。原作第一作は、主人公カットニス(16歳の女の子、弓の名手)の目線だけで語られる見事な世界観で、アメリカのヤングアダルト向けに新しい作品の登場を思わせたのですが。第二作は単なるジュビナイルに堕しているし、重大な設定に破綻も来している。最終刊で何らかの説明があるかと思いきや、まんまスルーしてある。物語を語る視線も混乱している。第三部で、カットニス個人の目線のみで語られる手法は復活するものの、今度はカットニスが初めから終わりまで混乱したまま、世界構造がひっくり返る結末にカットニスの決断が影響を及ぼすのですが、重大決断を下す彼女の心はグチャグチャのまま、果てはカットニスの行動をみずから責任とる訳でもなく、真実が明かされる訳でもなく……単に少女が一か八かで行動を起こし、彼女とは関係ない所で幕切れになった。暫くトラウマは残るが、どうやら時間と共に癒やされたようだ…チャンチャン。
アメリカで3部作総てが大ヒットならば、何がそんなに受けたのか、教えて欲しい。私にはさっぱり解らない。
楊令伝を読み返していて、北方謙三にして未だに作家として成長しているんだなぁと感じた。現在進行中の「岳飛伝」では、歴史を語る目、登場人物の心理、戦闘の描き方が洗練され、まず殆ど混乱する事はないが、楊令伝では時々表現に混乱がある。ただ、童貫を破るまでのひりつくような緊張は岳飛伝にはない。
とは言え、榛檜の登場、許定の暗躍、梁山泊の発展方向の芽等々、再確認出来て面白い。やっぱり、止められまへんなぁ。