大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ書評『百田尚樹「幸福な生活」』

2017-01-15 06:09:20 | 映画評
タキさんの押しつけ書評
『百田尚樹「幸福な生活」』



昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、個人的に身内に流している書評ですが、もったいないので転載したものです。


何となく百田尚樹の正体を見たような気がします。

 この本は短編集で、一編20頁足らず、ざぁっと読み進んで 最後のページをめくると一行の“落ち”が現れる。
 さて、この“落ち”が問題です。はっきり言ってガハハと笑うでなく、思わず背筋に冷たいモノが走るでなく、やられたぁ!と叫ぶ程の物は一つも無い。
 そう“無い”……無いのだが……総て、微妙にこちらの予測がはずされる。面白くない訳では決してない。面白いのだが、なんか、どこかで見たような聞いたような……まぁ、似たような展開の話は数多あるが、一つ一つの“落ち”は間違いなく独創的なのだと思いいたる。けったいな作者であります。
 しかし、彼のキャリアのスタートがバラエティーの構成作家だという事を考えると……これは さもありなん……ですね。
 構成作家ってのは、何を書いてもそこそこ面白くなければならない。しかも、自分が語るのではなくタレントが喋って面白く聞こえるように書かなければならない。文章スタイルにこだわりなんか持っていたら出来る仕事ではない。
 食べ物の味と同じく、人が何を面白いと感じるかは主観の世界で 万人共通の“ツボ”は有り得ない。だからこそ、少数が笑い転げる事より 多数がアハハと軽く笑える地平を探る。いわば、本書は そういうテクニックに長けた物書きの手になるブラック・ショート・コント集と言えるだろう。
 あまり えらそうには言えない、百田尚樹の作品はこれでまだ4作目……ただ、先日の「モンスター」の元ネタ(逆にモンスターをショートにした?)と覚しい一編があったり、「永遠の0」に用いられている論理展開と同じテクニックが見て取れる。

 先日、「モンスター」を評して「“海賊と呼ばれた男”なんかに比べれば、吹けば飛ぶような」と書いたが、言い方を替えると「同じ作者の本とは思えない」と言う事です。作品の目指している所が全く違いますからね。こういう作家は稀にいますが、結構珍しい。以前のSF作家には割と存在しました。筒井康隆、星新一なんかは最たる人々ですし、開高健、山口瞳なんてなCM畑出身の作家も自由自在なカメレオン作家でした。
 断言まではようしませんが、ひょっとしたら“百田尚樹”はとんでもない作家なのかもしれません。
 結局、読み倒さんと まだまだ解らんっちゅう事です。励みますわ。

コメント
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