タキさんの押しつけ読書感想
〔永遠の0〕
昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので転載したものです。
なんで今頃「永遠の0」なのかについては、本作の映画化作品についてのコメントや、同作者の「海賊と呼ばれた男」書評に書いたので割愛します。
いやぁ、しみじみと 勝手な思い込みで本を嫌ってはいけませんねぇ。泣きながら読み終えました。百田作品は全部、こんな作風なのでしょうかねぇ……「海賊~」でも、随分泣かせてもらいましたけど……。
まず、本作を読んだ上で 映画を振り返るに、いかに映画脚本が良く出来ていて、本作の感動を余さず伝えていた事に感銘を受けました。監督・脚本の山崎貴 刮目して見るべし……です。この脚本なら、原作者・百田尚樹が納得したのも理解できます。原作者が映画を見て号泣したのも宜なるかなです。
さて、私が本作発刊当時に本書を手にしなかったのは作者・百田氏の過去のイメージもさる事ながら、結構 悪評が高かった為でもあります。一番多かったのは「どこかで一度読んだような事柄で繋いである」ってやつで、中には「剽窃」と断じる人もいました。
ここが私のいかん所で、過去にも 山崎豊子が剽窃家だとの風説に影響され、山崎作品を遠ざけるという愚を犯しています。今では山崎豊子に向けられた剽窃疑惑は、山崎に書かれては不利益を被る陣営が作り上げたデマだと解って、山崎作品は遅ればせながら殆ど読み終えました。
本書に向けられた剽窃疑惑は、これは言い過ぎでしょう。但し「いつかどこかで読んだような~」という感覚については、まぁ 判らんでもありません。
戦後、もう既に70年です。兵士として実際に戦った世代は殆ど亡くなっておられます。当時を知るには記録映像にあたるか、著作に触れるかしかありません。しかも、映像や写真には間違ったキャプションが付けられていたり、著作にも偏った思想で書かれた物が多数存在します。
当時を正確に認識するのは日々 困難になっています。そんな現状下、信頼に足ると評価される資料は限られており、当時を描こうとする「戦争を知らない世代」は、皆さん同じ資料を手にせざる得ない訳です。
主人公たる宮部久蔵と、生き残りの戦友達は これら資料の中に記された人々の移し絵です、描かれるシーンは実際にその人々が遭遇体験、あるいは目と心に焼き付いた日常です。内容が似てくるのは仕方ない事だと思います。
確かに、先次大戦記録を読まれた向きには「耳にタコ、目にイカ(?)」な証言が大半を占めますから「これはナンジャイ?」と思われるかもしれません。しかし、これら戦時証言を組み合わせて「宮部久蔵」という人物を 血肉を持った存在として作り上げた作者の手腕は一流です。
現在の十代には「大東亜戦争」をフィクションだと思っている人が本当に存在します。さすがに、大多数では無いでしょうが、私が知るだけで数人いますから、ひょっとしたらかなりの数存在するかも……大戦を知ってはいても詳しくは知らない層とあれば十代と言わず、上の世代にもかなり存在するでしょう。そんな人々が、小説を読む楽しみで本書を手にする事を考えれば、この作品の存在意義は途轍もなく大きいと思えます。
我々の世代(現50代中~60代中)について言うなら、親から大本営や陸軍の悪口は散々聞いていますが、「海軍さんはスマートだった」なんぞと聞かされて育って来ました。戦艦大和の雄姿、真珠湾攻撃の成功(????) 名機0戦も海軍戦闘機、陸軍アホ/海軍格好ええ~と思ってきたもんです。しかし、その上層部の愚かさは五十歩百歩、海軍だって似たようなもんです。軍令部トップにいたっては、その馬鹿っぷりは見事の一言、前線指揮に当たった将官にしても、作戦に致命的失敗した者は乗艦沈没に際して真っ先に下艦、この人は生き残らねばと思える人程、艦と運命を共にしている。真に優秀で愛国心に溢れる人から死んで行く。これは日本に限らず、いずこの戦場でも証明されている事です。
我々世代でも一読の意味はあると考えます。かの大戦で、いかに多くの代え難い日本人が散っていった事か……これは日本に住む現在の私達が決して忘れてはいけない事実です。その事を思い起こす起点になります。この事を抜きにしても、人間の生き方、尊厳を描いて秀逸な作品です。
作者に成り代わりまして、是非ともとお薦めします。
〔永遠の0〕
昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので転載したものです。
なんで今頃「永遠の0」なのかについては、本作の映画化作品についてのコメントや、同作者の「海賊と呼ばれた男」書評に書いたので割愛します。
いやぁ、しみじみと 勝手な思い込みで本を嫌ってはいけませんねぇ。泣きながら読み終えました。百田作品は全部、こんな作風なのでしょうかねぇ……「海賊~」でも、随分泣かせてもらいましたけど……。
まず、本作を読んだ上で 映画を振り返るに、いかに映画脚本が良く出来ていて、本作の感動を余さず伝えていた事に感銘を受けました。監督・脚本の山崎貴 刮目して見るべし……です。この脚本なら、原作者・百田尚樹が納得したのも理解できます。原作者が映画を見て号泣したのも宜なるかなです。
さて、私が本作発刊当時に本書を手にしなかったのは作者・百田氏の過去のイメージもさる事ながら、結構 悪評が高かった為でもあります。一番多かったのは「どこかで一度読んだような事柄で繋いである」ってやつで、中には「剽窃」と断じる人もいました。
ここが私のいかん所で、過去にも 山崎豊子が剽窃家だとの風説に影響され、山崎作品を遠ざけるという愚を犯しています。今では山崎豊子に向けられた剽窃疑惑は、山崎に書かれては不利益を被る陣営が作り上げたデマだと解って、山崎作品は遅ればせながら殆ど読み終えました。
本書に向けられた剽窃疑惑は、これは言い過ぎでしょう。但し「いつかどこかで読んだような~」という感覚については、まぁ 判らんでもありません。
戦後、もう既に70年です。兵士として実際に戦った世代は殆ど亡くなっておられます。当時を知るには記録映像にあたるか、著作に触れるかしかありません。しかも、映像や写真には間違ったキャプションが付けられていたり、著作にも偏った思想で書かれた物が多数存在します。
当時を正確に認識するのは日々 困難になっています。そんな現状下、信頼に足ると評価される資料は限られており、当時を描こうとする「戦争を知らない世代」は、皆さん同じ資料を手にせざる得ない訳です。
主人公たる宮部久蔵と、生き残りの戦友達は これら資料の中に記された人々の移し絵です、描かれるシーンは実際にその人々が遭遇体験、あるいは目と心に焼き付いた日常です。内容が似てくるのは仕方ない事だと思います。
確かに、先次大戦記録を読まれた向きには「耳にタコ、目にイカ(?)」な証言が大半を占めますから「これはナンジャイ?」と思われるかもしれません。しかし、これら戦時証言を組み合わせて「宮部久蔵」という人物を 血肉を持った存在として作り上げた作者の手腕は一流です。
現在の十代には「大東亜戦争」をフィクションだと思っている人が本当に存在します。さすがに、大多数では無いでしょうが、私が知るだけで数人いますから、ひょっとしたらかなりの数存在するかも……大戦を知ってはいても詳しくは知らない層とあれば十代と言わず、上の世代にもかなり存在するでしょう。そんな人々が、小説を読む楽しみで本書を手にする事を考えれば、この作品の存在意義は途轍もなく大きいと思えます。
我々の世代(現50代中~60代中)について言うなら、親から大本営や陸軍の悪口は散々聞いていますが、「海軍さんはスマートだった」なんぞと聞かされて育って来ました。戦艦大和の雄姿、真珠湾攻撃の成功(????) 名機0戦も海軍戦闘機、陸軍アホ/海軍格好ええ~と思ってきたもんです。しかし、その上層部の愚かさは五十歩百歩、海軍だって似たようなもんです。軍令部トップにいたっては、その馬鹿っぷりは見事の一言、前線指揮に当たった将官にしても、作戦に致命的失敗した者は乗艦沈没に際して真っ先に下艦、この人は生き残らねばと思える人程、艦と運命を共にしている。真に優秀で愛国心に溢れる人から死んで行く。これは日本に限らず、いずこの戦場でも証明されている事です。
我々世代でも一読の意味はあると考えます。かの大戦で、いかに多くの代え難い日本人が散っていった事か……これは日本に住む現在の私達が決して忘れてはいけない事実です。その事を思い起こす起点になります。この事を抜きにしても、人間の生き方、尊厳を描いて秀逸な作品です。
作者に成り代わりまして、是非ともとお薦めします。