大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ書評“岳飛伝・六”

2017-01-08 06:16:18 | 映画評
タキさんの押しつけ書評
“岳飛伝・六”



昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している書評ですが、もったいないので転載したものです。

 はいはい、唐突にやってまいりました、岳飛の処刑であります。
 実史を、そう詳しく知っている訳じゃないんですが……確か「対金 主戦論」の岳飛が「対金講和論」の秦檜にとって邪魔だったので毒殺されたってのが史実だったと思います。
 本作ではちょいと事情が違っておりまして、秦檜はあくまで岳飛を南宋軍に取り込みたかったが、南宋を国とは認めず、軍閥の立場に固執する彼をやむなく処断する決意をする。
 処刑は斬首だが、梁山泊が一計を案じ岳飛救出を企てる。果たして岳飛は無事虎口を脱出できるのか? ぶっちゃけ、助からなければ岳飛伝一巻の終わりに成ってしまいますが……読んでいて、こっちの方がリアルなんじゃないの? と思わせられるのは作家の底力、さすがに北方謙三。ハードボイルドを書いていた時に、なんでこのストーリーテリングが出なかったんでしょうねぇ。“楊家抄”の前と以後では、まるっきり別人のようです。
 さて、歴史上 岳飛が死ぬのは1141年、モンゴル帝国の成立が1206年ですから、岳飛が生きて梁山泊に加わるにせよモンゴルと戦う訳ではない。さぁて物語は如何なる展開を迎えますのやら。
 金国内では簫珪材の息子ケン材が商人として梁山泊の自由市場に対抗しようとしている。金帝王ネメガ、宰相ダランには梁山泊を放置出来ないとする思いもある。南宋、金、梁山泊三つ巴の思惑の中に、いよいよモンゴルが顔を出し始める。日本では奥州藤原が瓊英に対して外洋船の調達を打診している。平氏滅亡は1185年だから、今すぐ義経=チンギス・ハン伝説に繋がる訳ではないが……北方謙三の目はどこまでを見つめているのだろうか。今しばらくは三つ巴の歴史が綴られるのだろうが、金軍総帥ウジュに従う 楊令の遺児/胡土児、南方に向かいチャンバーかアンコール朝カンボジアにいる秦容の運命は……。
 梁山泊に集った108人の英雄達もすでに9人にまで減った。宋江の志、楊令の夢は子・孫の世代に受け継がれ、更に先へと繋がって行くのだろうか。
 元帝国とさらに西方に広がった各ハンの国の間にはモンゴル・ネットワークが繋がった。これは梁山泊の目指した交易の路の完成形とも言える。梁山泊は今後百年以上に渡って存在を続け、モンゴル帝国に影響を与えるのだろうか。 そこまで来ると、「デューン」の生態系SFみたいに成ってきます。
 読みたいような、怖いような、北方御大! どこまで描くつもり?

コメント
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