大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・025『ヤミの自習だって』

2023-05-09 12:55:57 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

025『ヤミの自習だって』   

 

 

 小中学校では毎朝の朝礼があった。

 

 登校して、時間になると担任の先生がやってきて、日直の確認やら諸連絡。

 小学校では、そのまま一時間目の授業になって、中学では担任が帰った後一時間目の先生がやってきて授業になる。

 

 ところが、1970年の宮之森高校は、その朝礼が無い(^0^;)。

 

 みんな真面目だから、五分前には自分の席に座ってる。当然机の上には一時間目の用意。

 ときどき予鈴が鳴ってから教室に入って来る子もいるけど――遅れたあ!――という感じでサッサと用意する。

 人生斜めに生きてるような10円男でも、授業そのものに遅刻することは(いまのところ)無い。

 そして本鈴が鳴って、平均すると1~2分で先生がやってきて、目出度くその日の授業が始まる。

 

 国語の杉野先生は遅く来て早く終わる。

 

 高校の授業って50分なんだけど、杉野先生の授業は40分あるかないか。

 まあ、いいけど。

 

 今日の一時間目は、その杉野先生の現国だ。

 そろそろ5分というところで、廊下で気配。

 杉野先生が、後ろのドアからオイデオイデをしている。

 後ろの子が気づいて――なんですか?――すると、その子にゴニョゴニョ言って、その子が委員長の高峰君に声をかける。

 高峰君が廊下に出ると、なんだかヒソヒソ話。

 十秒くらいで話が終わって、戻ってきたのは高峰君一人。

「一時間目は杉野先生の御都合で自習になりました、各自静かに自習しておくようにとのことです」

 え? ええ? という空気が広がる。

 いきなり自習と言われてもどうしていいか分からない。なんせ、入学以来初めての自習。

 現国でなきゃだめなのかなあ……他の教科でもいいよね……本読んじゃだめなのかなあ……そういう真面目な戸惑いが、微笑ましく広がる。

 自習って言えばスマホでしょ! この時代じゃ手鏡にしか見えないんだし!

 でも、さすがに教室では憚られる。

 ロコや佳奈子のとこに行っておしゃべりしたいけど、席を変わるどころか立ち歩く人もいないしねえ……と、思ったら10円男が居ない。

 どこに行ったんだ?

 で、三分ほどで帰ってくると、なにやら高野君に話している。

 なにか説得してるみたいなんだけど、高野君はにこやかに首を振って、10円男も自分の席に戻った。

 

「ねえ、高野君になに言って……ていうか、抜けてどこに行ってたのよ?」

 

 休み時間に聞いてみる。

「杉野の自習はヤミだ」

「イヤミ?」

「ヤミ」

「闇?」

「モグリだ」

「なんで?」

 たしかに杉野先生は度のきつい眼鏡で、笑う時に前の歯が二本目立つとこなんかモグリ⇒モグラってのを連想する。

「正規の自習は教務の黒板に書かれるんだ。全クラスの授業時程が升目になってて、教務が把握してるものは、ちゃんと書かれる」

「そうなんだ」

「で、他の教科の先生が空き時間だったら、交渉して授業をやってもらう」

「え、どうゆうこと?」

「つまり、六時間目の地理、高橋だろ。だから高橋に一時間目に来てもらったら、五時間目が終わった時点で帰れる」

「ええ、そうなの!」

 わたしの声が大きかったのか、お仲間が集まってきた。

「それで、高橋、高橋先生に交渉に行ったんだ」

「どうだったんですか!?」

 ロコが身を乗り出してきた。

「『ほう、加藤、今年は委員長か』ってイヤミ言われた」

「そうか、それで、高峰君に言ってたんですね」

「いやあ、委員長も知っててね、そもそも正規の自習じゃないから入れ替えは不可だって。もう一時間目に食い込んでたし、まあ、御節ごもっともではある」

「じゃあ、朝、職員室の前で確認した方がいいわねぇ」

 たみ子さんが腕組みする。副委員長として期するところがあるようだ。

「お、頼もしいなあ」

「さ、次は芸術だから移動しよう」

 真知子さんが理性を取り戻して、二時間目の美術教室に向かった。

 

 間抜けなお話を一つ。

 

 映画の帰りにレコードを買ったんだけど、うちにはレコードプレーヤーが無かった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田 博子             1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明             留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館
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鳴かぬなら 信長転生記 122『600人6交代にしてやる』

2023-05-09 10:06:30 | ノベル2

ら 信長転生記

122『600人6交代にしてやる信長 

 

 

 数え直すと、船内には600人の浦島太郎がいる。

 艪口は両舷合わせて100なので、6交代制にした。

 予定では3交代のつもりだったので、漕ぎ手の浦島太郎たちも櫂を漕ぐ手に力が入る。

 

 そーーれ! よいやっさ!!  そーーれ! よいやっさ!!

 

 一人の時は、さんざんプータレていた浦島太郎だが、人数が増えて俄然、意気軒高になってきた。

 長篠の戦を思い出す。

 信玄はくたばったものの、武田騎馬隊は力も強く意気盛ん。その軍団は、五里の彼方からでも半端ではない圧を感じさせ、歯向かう者は、その圧に気おされて武田軍の姿を見る前に膝が笑って立てなくなったという。

 家康なんか、三方ヶ原でさんざんに打ち負かされ、僅かな家来たちに守られ、ウンコ漏らしながら逃げ帰った。

「殿! あまりの恐ろしさにクソを漏らされましたな!?」

 三河武士は遠慮が無い、鞍壺のウンコを指さし、のどちんこ剝き出しにしてカラカラと笑う。

「バ、バカを申せ! それは、腰の味噌が鞍にこすれて付いただけじゃ(#`O´#)o!」

 三河の田舎者は塩分補給の為に腰に味噌袋を下げて戦にいく。それに掛け、ギリ、ギャグにして面目を保ちおった。

 大河ドラマでもやってるから、よく知られた家康のエピソードだ。

 

 あのエピソードには裏がある。

 

 子どもの頃、家康はうちに人質になっていた時期がある。子どもの頃は神経質なやつで、一緒に遊んでいて、よく腹を壊していた。

「お兄ちゃんがイジメるからだよ!」

 市が口を尖らせて文句を言ったのも懐かしいがな。

「竹千代、そんなことでは、元服して戦に行くようになったら戦場でウンコ漏らすぞぉ」

「え、え、どうしよう(;゚Д゚)」

 マジにビビる家康は情けなかったが、あいつ、家庭環境も相当だったから、将来のことを思って知恵を付けてやった。

「そういう時はな『腰に付けた味噌が鞍に付いただけじゃ!』と言っておけ」

「でも、味噌とウンコじゃニオイが違う」

「ウンコと言うからじゃ。クソと言っておけばミソとは一時違いであろうが」

「さ、さすがは信長君!」

「俺のことは『信長様』と呼べ」

「で、でも信秀様が『兄弟と思って付き合え』と……」

「親父は、いまの俺しか見ておらん。いずれは天下を取って竹千代も家来の一人じゃ、主君に『信長君』はありえないだろうが」

「な、なるほど」

 すると、市が前歯の抜けた顔でケラケラ笑いおって……え、なにを思い出に浸っているんだ?

 どうも、浦島太郎の女々しさが伝染ってしまったか(-_-;)。

 そうだ、その浦島太郎。

 長篠の戦の我が軍団と同じだ。武田と聞くだけで震えの来るやつらだったが、鉄砲三千丁の三段構えを教えてやると、ウンコも漏らさずに立派に戦いおった。

 人は使いようとモチベーションの持たせ方で変わる。

 

 そーーれ! よいやっさ!!  そーーれ! よいやっさ!!

 

 600人の掛け声は迫力がある。600人……こいつ、かなりの引きこもりであるとは思っていたが、600人=600年とはな。

 

 そんな調子で二昼夜、まだ二日は掛かるだろうと晩ご飯のメニューを考えていた。

 あ、船中での飯は美味いぞ。

 なんといっても、浦島太郎は漁師だ。漕ぎ手の当番が当たっていない時は、甲板で調練をやるんだが、それでも一度にはできないので、手空きの浦島太郎たちに魚を獲らせてご飯を作らせる。

 都合四日となると、4×4=16、16回のご飯だ、楽しみだろうが!

 それがだ、海の上に居るとめっぽう腹の空くものでな、夜食とお八つもあるんだぞ!

 鬼ヶ島では激戦が予想される。しっかり食っておかなければな。しっかり食うためには美味いものを食わなくてはならん(^▽^)。

『酒も飲みたいなあ(^_^;)』『わたしは食べ過ぎたから鯛茶漬けがいい』

 思金神もアッチャンも、ご飯の時は実体化する。

 勾玉や剣に変態していても食べられるらしいが、それでは味気ないらしい。

「よし、三人で献立を考えよう!」

『『考えよう!』』

 その気になったところで見張りの浦島太郎がメガホンで叫んだ。

 

「鬼ヶ島が見えるぞおおおおお!」

 

 予定よりも二日早く鬼ヶ島決戦が始まろうとしていた!

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

 

 

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RE・かの世界この世界:092『ポチの帰還』

2023-05-09 05:52:52 | 時かける少女

RE・

92『ポチの帰還』ポチ 

 

 

 

 気がついたらヨタヨタと飛んでいる……たぶん……東にむかって。

 
 バシュっとからめとられて、いっしゅんふり返ったら、エスナルの泉ほどの口を開けたイソギンチャクみたいなのに呑みこまれそうになっていた。くさい息がモワモワからめとるようにおそいかかってきて、もうダメだああ!

 そして、どのくらいか意識がなくなって、気がついたらヨタヨタと飛んでいるんだ……。

 右手にムヘン川が見えているから東にむかっていることはまちがいないと思う。

 はいきょとやけ野原の間をいくつかの曲がりくねった道が走っている、おおかたは、平和であったころの町や村、あるいは畑の道であったんだろうけど、こう荒れはててはよく分からない。その中の一本がムヘンかいどうで、そのかいどうのどこかに四号が身をひそめているはず……さがすと、ほかの道とゴッチャになってこんらんする。

 えと……えと……えと……また気がとおくなってきた。

 なつかしい鉄と油のにおい……ハッとわれに返ってとびおきる!

 

 ゴチン!

 

 まっ白い天じょうに頭を打つと、なじんだ手がつつむようにして助け上げてくれる。

「あ、気がついたか!?」

 四号の車内、わたしは通しんきの上のベッドに寝かされていた。ロキがウエスの布団でつつむようにして介ほうしてくれている。

 助かったんだ……

「おっと、もう気絶すんなよ」

「ロキ! ロキ! こわかったよー!」

「もう大じょうぶだ、よくやったな。ヨタヨタ飛んできたかと思うと四号のまうえでピタッととまって落っこちてきたんだぞ」

「ロキが受けとめてくれたのぉ?」

「ああ、だいぶ前から、ポチが帰ってくる気がしてさ。ほうとうの上で待ってたら、ちょうど広げたオレの手の中に落ちてきたんだ」

「そ、そーだったんだ……ロキ、なんで上半身はだかなの?」

「ああ、受けとめた時、ポチのにおいが移っちまってな」

 見ると、開けはなったハッチから、アンテナにくくり付けてはためいてるロキの上着が見えた……上着の下には見おぼえのある小さい服が……あ、わたしの服だ!?

「犬の口の中みたいにドロドロで臭かったから洗ったんだ」

 タングリスが横顔のまま言う。わ、わたしってばすっぱだかだ!?

「新しい服もぬってるから、元気になったら着てみなさいよ」

 ケイトとテルが狭い車内でなにかぬってる。

「あ、ロキ、見るなあああ!」

 あわてて、ウエスの布団を身にまとう。

「おまえ、そんな人間の女の子みたいな反のうすんなよ」

「そうだぞ~、気ぜつしてるおまえを、ロキはかいがいしく洗ってくれたんだぞ~」

 自分でも分かるくらいに真っ赤になる。

「うそだよ、男はあっち向いてろって、女子のみんながやってくれたんだ」

「しかし、だんだん人間らしくなっていくなあ……ところで、西のほうはどうだった?」

「あ、そ-だ」

 まだ生々しい感かくが残る西ぶせんせんの情ほうを伝える。みんな、それまでのオフザケをやめて真けんに聞いてくれる。

「人とクリーチャーのゆうごうか……」

「新しいきょく面ですね」

 ヒルデとタングリスが顔を見かわす。

「トール軍とレジスタンスとクリーチャー……それに、人とクリーチャーのゆうごう体か」

「四つどもえだな」

「しかし、そのおかげで、かい道は平おんなんだ。一気にノルデンハーフェンを目ざすぞ!」

 ヒルデがこぶしを上げて、四号は動きだしたよ。

 

☆ ステータス

 HP:9000 MP:100 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
 装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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