大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 124『鬼の罠』

2023-05-27 10:54:01 | ノベル2

ら 信長転生記

124『鬼の罠信長 

 

 

 漁師さま用貸間フェスタ!!

 

 門の内側は、枡形になっている。

 枡形というのは門を二重にした間の四角い空き地で、攻め出すときは、ここにまとまった数の兵を並ばせ、外の門を開いて一気呵成に出撃させる。逆に、寄せ手が外門を破っても内門が閉じているので、ここで滞留して四方の櫓や城壁の狭間から集中攻撃を受けることになる。

 寄せ手である我々は、この枡形に入ったところで行き場を失った格好なのだが、特に矢玉が飛んでくる気配も無い。

 その代わり、内門の二階の窓がディスプレーになっていて『漁師さま用貸間フェスタ!!』の電飾が輝きだしたのだ!

「おい、周りを見ろ!」

 近習の浦島太郎一号が周囲の城壁を見渡しながら指をさす。

 おお!

 600人の浦島太郎がどよめく。

 城壁には狭間が穿たれているのではなくて、各部屋の間取りと付帯設備が映し出されている。

 2DKが基本で、大き目のクローゼットには、網や釣竿などの漁具が収納出来て、換気用のダクトも完備している。

「おお、ベランダを降りると共用の通路が浜に続いて船を漕ぎだせるようになってるぞ!」

「別のバージョンもあるぞ!」

 浦島太郎48号が後ろの城壁を指さすと、そこには――ご家族が増えた時には3LDK、4LDKもご用意しております――と出ている。

「これは、乙ちゃんとだって住めるってことか!?」

「そうだろ、4LDKは男一人には広すぎる、いや、夫婦二人でも広い! 子どもがいることが前提の間取りだ!」

「デヘヘ、乙ちゃんとの愛の巣ってわけかあ……」

 600人の浦島太郎が、クレヨンしんちゃんがデレたときのような目で俺を見る。

「コラ! スケベな目でわたしを見るんじゃない! 浦島太郎が乙姫と結婚するなんて設定はないんだからな!」

「女は、乙ちゃんだけじゃないしな!」

「アハハ、見学随時、即入居可、取りあえず下見しようじゃないか!」

「そうだそうだ!」

「嫁取り子作りは、その先だ!」

 おお!!

「こら、貴様らぁ!」

 600人の浦島太郎は、ちょうど開いた内門から城内各地に散って行ってしまった。

「オモイカネ! アッチャン! なんとかし……」

 二人とも、新しく掲示板に現れた『単身神さま用貸し神社』というのに見入っている。

「小さいが、よくできておるのう、太陽光発電にWi-Fiまで完備しておる」

「オモイカネ、上の方も読んで」

「オール電化にもできると書いてある……おお、20年ごとに式年造替いたします!?」

「熱田神宮よりもいいかも!」

 

「コラアアアアアアアヽ(≧Д≦)ノ!!」

「ハ(°д°)!?」「ア(°д°)!?」

 

 渾身の怒りで、ハッと我に返る二人。

「す、すまん(;゚Д゚)!」

「鬼の術中にはまってしまったみたい(^_^;)」

「浦島太郎どもを呼び戻すぞ! アッチャンは右! オモイカネは左! 俺は真ん中の廊下を行く!」

「わたしが言ったら、刀が無くなるわよ」

「浦島太郎ごとき、素手で十分だ! オモイカネ、お前も元の姿に戻れ、その図体では廊下を走れんぞ」

「気に入っておったのじゃが……よし、等身大に戻そう!」

 等身大の大魔神、ただの着ぐるみだが、本人が気に入っているので指摘はしない。

 

「おい、浦島太郎ども! さっさと部屋から出てこい! まだ鬼退治は済んでないぞ!」

 

 各部屋のドアを叩いて催促するが、返事はおろか人の気配も無い。

 フロアの奥まで行って、もう一度と思うと、廊下のむこうでアッチャンが――ダメだった――という風に腕をXの形に交差させている。

「儂のほうもダメだった」

 オモイカネも大魔神の青い顔をさらに青くして戻ってきた。

「オモイカネ、その青い顔はメゲるからマスクだけでも取ったら?」

「もう、マスクは取っておるわ」

 え、もう地顔が真っ青ってか?

「是非に及ばず……三人でいくぞ!」

「あ、信長!」

 こういう時は立ち止まってはダメだ!

 桶狭間の戦い、越前金ヶ崎の退き戦、退くにせよ攻めるにせよ電光石火がデフォルトの信長だ!

「天守を目指すぞ!」

「ちょ」「待て」

 とろくさい二柱の神など捨ておいて、俺は天守への石段を駆けのぼった!

 

 ズシリ カチャリ

 

 腰と胸元に重さが戻ってくる。

 アッチャンもオモイカネもついてはくるようだ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

  

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RE・かの世界この世界:110『シュネーヴィットヘン入港』

2023-05-27 06:18:42 | 時かける少女

RE・

110『シュネーヴィットヘン入港』テル 

 

 

 

 ポチが触れ回ったので岸壁に面した左舷デッキでは復員兵たちが鈴なりになった。

 
 貨物デッキは注水のため海面から一メートルの高さしかなく、接岸すると岸壁よりも低くなる。

 このままでは岸壁と対面してしまうので、四号の乗員は車体の上に乗った。

 数千人の島民が『歓迎 シュネーヴィットヘン!』の横断幕やデコレーションに負けないくらい色とりどりに着飾って出迎えてくれている。

 地元高校のブラスバンドが動員されたのだろうか、オモチャの兵隊のような衣装で行進曲に編曲したオーディン国歌を吹奏してくれている。

 四号の車体が岸壁の高さなので、車体に立っていると歓迎の人たちと同じ高さだ。

 感激のあまり、お迎えに動員された幼稚園児が駆け寄ってきて船に乗り移ろうとした。一人が駆けだすと、みんな後について来て、ちょっとした騒ぎになる。接岸間近とは言え、船と岸壁の間は一メートルあまりの隙間がある。落ちてしまえば助けようがない。引率の先生や近くの大人たちが必死で停めて事なきを得たが、女の先生が足を踏み外した。

 キャ!

 セイ!

 反射的にムチを振って女先生の腕を絡めとって救助する。

「ロキ、ケイト、先生を介助して主砲に乗れ」

 三人を主砲に跨らせると、砲塔がゆっくりと九十度旋回して、砲身の先一メートルちょっとが岸壁に届いて女先生を無事に届ける。期せずして船と岸壁の双方から盛大な歓声と拍手が起こった。

 ウワアアアア! パチパチパチパチパチパチ!

 あまりのすごさにビックリすると、上のデッキの兵隊たちがしきりに指をさす。岸壁の後ろには映画のスクリーンほどのプロジェクターがあって、一部始終を映していたのだ。後ろの者でも良く見えるようにという配慮なんだろうが、今の救助をアップで映されるのは面映ゆい。

 ジリジリと所定の位置に近づく。すでに船はエンジンを切ってタグボートの力だけで動いている。速力はほとんど一ノット、人が歩くほどの速度だ。

 幼稚園児たちが過ぎて、島民たちの集団が過ぎて、ブラスバンドの前を通過。舫いのロープが投げられる頃には島のエライサンたちが巡ってきて、そのエライサンの壁を割るようにして港の女王が現れた。

 本来なら、船の中央でラッタルが下ろされるところに待ち受けているはずなのだが、大型船に慣れないタグボートが押し過ぎて、百メートル近くいきすぎ、船尾貨物デッキの我々のところが、歓迎団の中央になってしまった。

 目の前に港の女王が迫ってきた。

「か、可愛い……わたしの次くらいに可愛いぞ」

 砲塔の上のヒルデが呟き、他の乗員もため息をついた。

「……ユーリア!」

 砲塔の後ろで控えていたヤコブが声をあげた。

―― おにいちゃん! ――

 女王は口の形だけで驚いている。

 我々とヤコブの妹ユーリアとの初対面(はつたいめん)だった。

 

☆ ステータス

 HP:13000 MP:150 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・80 マップ:8 金の針:0 所持金:5500ギル(リポ払い残高29000ギル)
 装備:剣士の装備レベル30(トールソード) 弓兵の装備レベル29(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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