大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・160『主席代理』

2023-05-08 15:54:26 | 小説4

・160

『主席代理』メグミ 

 

 

 ヨイチ准尉の機動車がニッパチを乗せてブンカ―を出るのと入れ違いに、中型小型のパルスボートが数十機入ってきた。

 

 パルスボートには、世界中のボランティア……というと穏やかに聞こえるけど、要は志願兵や傭兵が乗っている。

「うまく考えたな」

 サブが「胡同首領」のヘルメットを阿弥陀にして、口を尖らせる。

 その横のマヌエリトは戦闘服でありながら、全身からナバホインディアンのオーラを出しまくって腕を組んでいる。

「え、なにがぁ?」

 呟いたのがマヌエリトだったら、きちんと顔を向けて「なにがですか?」と丁寧に聞いている。

「だって、ボランティアたちの入港に合わせて潜航させて気配を消したんだろう。北回りで島の西の海に出れば軽石がいっぱい浮いてるから、それに紛らせてしまう。時間はかかるけど、黒潮反流が本土の近海まで連れて行ってくれる」

 ウ……さすがは周温雷が主席代理に任命しただけのことはある。

「さあ、たまたまよ。それより、中華系はあんたが任されてるんだから、ちゃんとやらなきゃダメよ、胡同首領の肩書はダテじゃないんだから」

「うっせー、オレは出迎えと連絡専門、ほら、旗のドラゴンだって指は四本だ」

 周主席のドラゴンは五本指。

「え、あ、ほんと( ´艸`)」

「笑うな! オレも詳しくは分かんねえけど、主席代理の権威はよっく伝わるんだ」

「ごめんごめん」

「サブ、ここに立て」

 マヌエリトが腕を組んだまま、手前の岩を示す。

「え、ここ?」

「背が高く見える」

「え、あ、ああ」

 マヌエリトの指示は一発で聞く。

 支持の中身が適切だし、たいてい主席代理の自分を立ててもくれるからだ。それに、ナバホインディアン大戦士の押し出しはハンパではない。

 岩の上に立ってわたしよりは高くなったサブだけど、マヌエリトには首一つ分足りない。

 それでも、背後にフートン主席代理の旗、後ろにわたしとマヌエリトが控えると偉いように見える。

 

 フートン主席の周温雷は、パルスギ鉱が発見されるとサブを主席代理に任命して島を出た。

 

 販路の開拓という名目だけど、本心は違う。

 狙いは、わたしがココちゃんを火星に避難させたことに似ている。

 主席という立場を利用されないためだ。

 フートンは漢明系の者が多い、漢明が島に目を付けると、最初に働きかけてくるのがフートン。

 フートンは周主席がよく治めていて、良きにつけ悪きにつけ周の提案や指示が無ければ動かない。

 フートンの中には、わたしから見ても漢明の息のかかった者が入り込んでいる。でも、周は露骨な妨害工作でなければ放置していた。そういうファジーというか大ようなところが信頼を得るポイントになっていた。

 しかし、漢明が真正面から島に目を向け始めると、あの手この手でフートンを抱き込みにかかる。あらぬ噂も立つ。

 フートンを動かしたい漢明は周を、あるいは周の名前を利用する。

 そのために、周は姿をくらませた。噂では、月の裏側で金の鉱脈を掘り当てたとか、アメリカでトラックの運ちゃんをやりながら次の手を考えているとか。

「すみませんでした、メグミさん!」

 汗を拭きながら及川市長がやってくる。

 かくいうわたしは、市長が間に合わない場合、代わって歓迎の挨拶をすることになっていた。

 マヌエリトは口下手だし、サブは調子に乗ってなにを言い出すか分からないからね。

 ボランティア=志願兵の受け入れは、毎回増えてくる。

 この分では、次回からはうちの社長……いや、睦仁王にやってもらわなくてはならないだろうね。 

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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RE・かの世界この世界:091『ポチの退屈・3』

2023-05-08 06:44:57 | 時かける少女

RE・

91『ポチの退屈・3』ポチ 

 

 

 赤いのがクリーチャー、白いのがレジスタンス。

 
 そのはずなのに、高度を下げると赤と白の区別が無くなってピンク色になってきたよ!

 ピンク色んて聞いてないよ!

 仮想デスクトップのマップ上の表示なんで、なんだろうと眼の下の戦場に目を落とす。

 
 え? えええええええええ( ゚Д゚)!?

 
 クリーチャーとレジスタンスの兵士が融合してとんでもないことになってる!

 シリンダーと兵士が融合して、シリンダーのお尻みたいな体に人間の手足が生えているという分かりやすいものから、唇に手足が付いたもの、目玉に手足がついたもの、鼻に手足が付いたものなんかが混じってるよ。

 メスシリンダーは大きいだけあって、一度に何十人という兵士を取り込んで巨大なムカデのようになっている。それがのたうち回ってトール軍の戦車や自走砲をなぎ倒しているのもある。

 戦車とかは裏返しにでもならない限り戦闘力を失わないみたいで、ほとんどゼロ距離射撃でメスシリンダーの横腹を破裂させ、メスシリンダーは血や肉やらなにやら分からないものをまき散らし、撒き散らかされたものは毒でもあるのか、それを浴びたトール軍の兵士がのたうち回って苦しんでいる。

 目の向きを変えると、すぐに対策を立てたトール軍部隊が防毒マスクを着けて風上に回り込んでいる。抜刀隊が一斉に走り出し融合していないシリンダーを見つけては切ったり突き刺したりしていく。

 風に乗ったプレパラートたちが疾風のように勢いをつけて抜刀隊に襲い掛かる! さすがの抜刀隊もイナゴの群れのようなプレパラートに切り刻まれて朱に染まっていくものが続出。

 ところどころにフィギュアのように突っ立っている兵士……ゴーグルが外れてメデューサに石化されてしまっているんだ。衛生兵が命懸けで近づいては金の針を打っている。

 見覚えのあ……あ!? ペギーのおばさんが戦場を駆けまわりながら商売をしている!

 おばさんの商魂はすごいなあと感心するだけなんだけど……なんだか気分が悪くなってきた。

 戦場のむごたらしさには慣れているというか、自分自身シリンダーの変異体、こんなのは平気のはずなのに……目がくらくらして、冷や汗が流れて、手足がしびれてくる……。

 そうなんだ、人とクリーチャーの融合が嫌なんだ、見ていられないんだ。

―― ポチ、もういいぞ、かえってこい! ――

 ロキの声が頭の中で響いて我に返ったよ。

 ロキの声が、ここまで聞こえるってありえないから、空耳に決まってるんだけど、わたしの中の何かが限界だって言ってるんだと思う……帰らなくっちゃ……

 気づくと、飛び方もフラフラになってきて、いつ地上に墜ちてしまうかもしれない、墜ちたら、ここは戦場だ!

 揉みくちゃになって踏みつぶされてしまうよ!

 シュッ!!

 鞭のような触手が伸びてきたのを危うく躱す! 次のが来たら避けきれない! そのままの勢いで戦場を離脱する。

 早く戻って戦況を報告しなくっちゃ!

 でも、意識が朦朧と……途切れ途切れになっていく……。

 

 バシュ!

 

 や、やばい、なにかに絡めとられてしまった! 

 やだやだ! 人とクリーチャーの融合体なんかああ(*≧▲≦*)!!

 

☆ ステータス

 HP:9000 MP:100 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
 装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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