大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

勇者乙の天路歴程 026『始まりの村風の広場にて』

2024-06-18 10:52:11 | 自己紹介
勇者路歴程

026『始まりの村風の広場にて』 
 ※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者




 画像生成AIに―― 始まりの村 国籍不明 ――と打ち込んだら出てきそうな村だ。

 
 村の入り口には焼き肉屋の前にありそうな道祖神風の石像があって、ビギナーの冒険者に「覚悟はいいか」と脅している。
 家々の屋根は切妻か入母屋の和風だが、棟や軒端が微妙に反っていて、軒端にランタンが吊ってあるところなど中国風。いくつかの家は白壁にオレンジ色の瓦が載って南フランスを思わせるが、あちこちに立っている幟やランタンの文字は漢字風やらチベット文字風でFFⅩの門前町と見紛う。
 
 村の中央あたりには教会の尖塔と五重塔が並んでいるが、よく見ると、尖塔の先には九輪と水煙、五重塔には十字架とチグハグ。

 道祖神風の脇を通ると、なぜか穴が掘ってある。

「落とし穴かなあ?」

 スクナが首をかしげると、少佐のビクニが向こうの広場の方に目を向ける。

「なにか揉めているようだ」

「え、なんかお祭り!?」

 初めての村でうかつに動くのは憚られ、広場の入り口で様子を見る。

『やっぱり、鳥居が無いと締まりがねえ』

『だから、村の入り口に』

『あそこには、もう道祖神があるべ』

『入口なら、広場の方がよかんべ』

『村の入り口なら、もう穴掘ってあるべ』

『穴なんか埋めちまえばいいべ』

『したども、五人がかりで丸二日かけて掘った穴だぞ』

『先走って掘っちゃダメだべや』

『したども……』

 どうやら、鳥居をどこに立てようかと相談している様子だ。十人余りの男たちが数本の角材やら丸材、おそらくは組み立て前の鳥居を前にして深刻そうに話をしている。真ん中で村長風が腕組みして困っている。

「あまり見ない方がいい、我々はよそ者だ。それより情報を収集しよう」

 ビクニが指差して、向こうのギルド風の二階建てを目指す。

「あ、だんご屋!」

「あとだ」

「テイクアウトすればいいだろぉ!」

 ナース服の腕をブンブン振って抗議するスクナ。赤十字の腕章がグルグル回って可愛い。

「食い意地ばっかりの奴は置いていくぞ」

「じゃ、あっちのクレープ屋! タコ焼き屋でもいい!」

「引っ張るな」

 ペシ

 手を払いのけるビクニ。少佐になると容赦がない。

「ム~、可愛くないよ、お宮に連れてきてたJKの方が可愛かった」

「アハハ、同一人物なんですよ」

「え、ほんとか( ゚Д゚)!?」

「フフ、ガキナースに見透かされるほど安くは無い。いくぞ」


 ビクニが言い切ると、男たちの中から村長風が駆け寄ってきた。


「あのぉ、もし、あなた方は薩摩守(さつまのかみ)さまの御先駆けの方々でしょうか!?」

 え?

 我々を見る村長風の目は困惑と畏れに満ちていた……。

 
☆彡 主な登場人物 
  • 中村 一郎      71歳の老教師 天路歴程の勇者
  • 高御産巣日神      タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま
  • 八百比丘尼      タカムスビノカミに身を寄せている半妖
  • 原田 光子       中村の教え子で、定年前の校長
  • 末吉 大輔       二代目学食のオヤジ
  • 静岡 あやね      なんとか仮進級した女生徒
  • ヤガミヒメ      大国主の最初の妻 白兎のボス
  • ヒコナ        ヤガミヒメの新米侍女
  • 因幡の白兎課長代理   あやしいウサギ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

REオフステージ(惣堀高校演劇部)064・夏休み編 思い出のサンフランシスコ・2

2024-06-18 07:26:19 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
064・夏休み編 思い出のサンフランシスコ・2                     
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです




 見かけで判断したらあかん。


 とはいうものの、身長190は有ろうかというような黒人のニイチャン二人。こっちは一番背高い俺でも、やっと170。生物的にビビッてしまう。

 以前、散歩途中のチワワが大型犬に出くわして、恐怖のあまり腰を抜かしてオシッコちびってるとこに出くわした。

 あの時のチワワの心境。

 え あ う……

 母音が三つほどの返事とも言えん声を上げていると、ニイチャンらは荷物をふんだくり、千歳の車いすを押し出した。


 あ(;'∀')!  えと(;'〇')!  ちょ(;'△')!  ヘイ(;'▽')! 

 四人が四つの単音節を発して後を追う。

 最悪の展開がアレコレ頭をよぎるが、情けないことに走って後に続くことしかでけへん。千歳はアワアワするばっかりで、咄嗟に声も出えへん様子。これはエマージェンシーやと、ミリーはスマホを出して警察に電話しようとするんやけど、走りながらで手間取ってる。

 で、結局は無事にジェファソンホテルの前まで連れて行ってくれた。

 ホテルは次の角を曲がってすぐのとこで、ほんの20秒ほどで着いてしもた。これはお礼を言わならあかんと思たけど、とっさには言葉が出てけえへん。ニイチャンらの言葉は訛があって、ミリーもとっさには分からんみたいやった。


「ああ、それは高校生のボランティアでしょう」


 ジェファソンホテルのフロントのおばちゃんが言う。

 アメリカの学校も夏休みやけど、日本と違って二か月もあって、ボランティアに勤しんでる者も多いとのこと。

「こういう恰好していませんでしたか?」

 おばちゃんは壁に幾つもかかってるパンフの一つを指さした。

 緑色のTシャツの胸に英語でなんや書いてある。

「あーグリーンエンジェルス」

 ミリーが思い当たったように安堵のため息をもらす。で、おばちゃんと意気投合して英語でやりとり。
 どうやら、観光客や困ってる人らを助ける高校生のボランティアであるらしい。

 やっぱりキチンとお礼言うべきやった。

「わたし、お礼渡しといたよ」

 表情を読んだのか千歳がドヤ顔。

「え、いつの間に?」

「何を渡したの?」

「キャリーに付けてたビリケンさんのストラップ」

「いつのまに、そんなコミニケーションを」

「うん、車いすを押してる感触に悪意が無かった」

「でも、場所によっては……」

 おばちゃんはハザードマップのようなものをくれた。

「なるほど、用心に越したことはないわけね」

 須磨先輩が真面目な顔で、もう三枚もらってみんなに分けてくれる。


「それから……」


 キーをもらって部屋に行こうとすると、おばちゃんが声をかけてきた。

「時間が遅いので、夕飯が用意できません……」

「「「「えーーー( ゚Д゚)!?」」」」

 四人揃って声をあげる。

 驚いたというよりも、おばちゃんの一言でお腹が空きまくってたことに気が付いてしまった。

 とたんに体中の力が抜ける。


 サンフランシスコの初日はレストラン探しから始まった。
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする