大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・054『キーストーンを奪われていた!』

2024-06-27 10:40:44 | カントリーロード
くもやかし物語 2
054『キーストーンを奪われていた!』 


 

 アテンション! アテンション! 校舎内の生徒および教職員は全員校舎の外に避難! 繰り返す、校舎内の生徒および教職員は全員校舎の外に避難せよ!

 
 侵入した妖の大半をやっつけ、残ったやつも逃げ出して、やっと平常に戻ったかと思うと緊急の校内放送。

 警備副司令を兼ねている魔法学のソフィー先生の声だ。


 ガチャン

 
 玄関前の広場に集合すると、玄関の鍵をかけてみんなの前に立つソフィー先生。

 先生の後ろには、少し下がって他の先生たち。横には警備犬のボビーが顎を上げてお座りしてる。どうやら、この場はソフィー先生が仕切る様子。

「やくもと森の住人の働きで妖を退治、あるいは撃退できたが、とんでもない事態が起こった」

 冷静ではあるけど厳しい声に、生徒も先生たちも言葉が無いよ。

「逃げた妖が学校のキーストーンを盗んでいった!」

 
 キーストーン?


 わたし同様に?マークの浮いている顔と、目を剥いて驚いている顔がある。

「キーストーンは、学校のホール天井の魔石だ」

 先生が手を上げるとホール天井の3D映像が浮かび上がった。

 みんな振り仰いで天井を見る。

 わたしも見たけど、アーチ型になった天井の石はどこも欠けてはいない。

「先生、どれがキーストーンなんでしょうか?」

 メイソン・ヒルが質問して、みんなも先生の顔に目を向ける。

「これだ」

 先生が指を動かすと、天井の五か所の石が光った。五つの石を繋ぐと星の形になるんだけど、星の真ん中は黒く抜けている。

「魔石のキーストーンはリアルの石に重ねてあるので普通では見えない。見えないからこそ発見が遅れた」

「でも先生、要石は他にもあるし、建物自身、耐震基準を満たしていると聞いています。緊急にどうこうということは無いんじゃないですか?」

「魔石のキーストーンが抜けた状態で使用していると、魔法的には全く無防備だ。呪いをかけられたら持ちこたえられん。ナザニエル卿が王宮の敷地全体に結界を張ってくださっているが、それとても万全では無いし、未だに工事中でもある。寄宿舎部分には影響はないので普通に過ごしてもらって問題は無い。授業や実習は宮殿の一部を拝借して継続する」

 やっと収まったのにどうなるんだろう……思っていると先生の顔がこっちを向いた。

「やくも、君の魔法特性が合っている」

 え、え?

「魔界経験値が他の者よりも二桁高い」

 たしかに、中学にいるころいろんな妖に関わったから、先生たちよりも魔界慣れしているかもしれない。

「そうだ、やくもほどに魔界耐性があるのは、わたしぐらいのものなんだが、わたしには王宮全体の警備任務がある。侵入した妖を撃退したばかりで申し訳ないが、魔界に踏み込んでキーストーンを取り返してきてほしい」

 え……ええ!?

「人によっては二日程度の同行が可能だ。生徒、教職員の中から交代で支援に向かう。がんばってくれ」

 みんなの目がわたしを見てる。

 大丈夫、及ばずながら力になるというのから、勘弁してくれというのとか色々。

 日本にいる時もそうだったけど、こういう状況で断ることができない。

 でも、なにか言いたい。聞きたい。言いわけしたい。

「では、自室に戻って準備してくれ。こちらは最初の同伴者を選んでおくからな」

 有無を言わせぬソフィー先生。

「は、はい……」

 唇をかんで自分の部屋に向かうやくもだったよ。



☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精)  プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖)
   

 
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)072・やってられるかーー(。`Д´。) !!

2024-06-27 06:46:19 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
072・やってられるかーー(。`Д´。) !!                     
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです




 一日ボーっとして……それからブチギレてしもた。


 時差ボケもあるんやろけど、アメリカで過ごした四週間ちょっとが頭と体の両方でハジケてしもて、どないもならんかった。

 例えて言うと、小三のころ初体験したポップコーン。

 コンビニとか映画館で売ってる完成品と違て、カラカラに乾燥させた粒々の方。

 親父が買うてきてたのを、留守のお袋に代わって作ろうとした。

 フライパンにバターを溶かしてポップコーンのタネをザラザラぶちまける。

 蓋をして弱火で加熱すること二分半。それは爆発的に起こってしまった。

 ポン! ポン! ポポポン! ポポポポポポポポポポ! ボッコーン!!!

 フライパンの中で爆ぜまくったポップコーンはトドメに大爆発して、家中にポップコーンが飛び散った。

 あれと相似形の感覚と驚きや。

 爆発はやり残していた夏休みの宿題を見た時で、同時にミリーの言葉を思いだした。

――アメリカの夏休みは3カ月よ。6月7月8月、うん、もち連続。宿題? なんでえ? そんなもんあったら休みにならへんでしょ!?――

 そう言いながら、しっかりやり遂げてしまうのが留学五年目『郷に入れば郷に従え』のミリー。

 俺は、ミリーの後半の言葉を意識の底に沈めて、こう叫んだ。

 やってられるかーーーーー(。`Д´。)!!

 叫んだだけではいつもの夏休み。

 俺は一計を案じた。あのミリーも、この夏休みは宿題どころやなかったやろ。なんせいっしょにアメリカ旅行に行ってたんやさかい。


「ちょっとぉ、なんやのんこれは!?」


 教壇に立った姫ちゃん先生も叫んだ!

 教卓の上にはパンパンに膨らんだ通学カバンに体操服入れの袋、それから総重量三キロは有ろうかという紙袋。

「新学期の初日に必要なもの全部そろえたらそうなるんです(ㆆ_ㆆ) 」

「もー、とにかくじゃっまっ!……うう、重いいいいい(*`Д´*) 」

「先生らは一人一人勝手に宿題やら提出物を『こんなもんやろ』と指定するんやろけど、まとめるとそれだけになるんです。この残暑厳しき折に、まさに拷問やと思いませんかあ?」

「そうやねえ……(-_-;)」

 姫ちゃんは腕を組んだ。

 こういう時にまともに反応するところが姫ちゃんのええとこや。

 声にこそ出せへんけど――そーやそーや――の空気が教室に満ちる。

「アメリカの学校は三か月も夏休みで、宿題なんかはカケラもあれへんのですよ」

「そうや、啓介夏休み中アメリカ行ってたんやなあ」

 セーヤンが汗を拭きながら思い出す。

「じっさい向こうの高校生から聞いた話なんですよ」

「なるほどね、勉強してきたいうわけやねえ……しかし偉いね、小山内くん。新学期初日に宿題やりとげて、これだけの荷物担いでくんねんもんねえ……」

「あ、センセ、ちょ……」

 姫ちゃんはおもむろに宿題の袋を開き始めた。

「ん……どれもこれも白紙に見えるんやけど……(´¬_¬) ?」

「あ、せやから、全部集めたらこうなるいう見本で(^_^;)」

「こうなるいうこと見せても、宿題やれへんことの免罪符にはなれへんからね」

「いや、せやから……(^_^;)」

「そういや、ミリーもいっしょに行ってたんやね?」

「はい、行ってました。あ、クラスのみんなにお土産です。少ないけどみんなで食べてぇ」

 ミリーはマカダミアナッツチョコの箱を二つ取り出した。

 さすがはミリー!

 ミリー称賛の声が教室に満ち溢れる。

「で、ミリー宿題はどないしたんや?」

 小声で聞くと、ニンマリ笑ってささやいた。

「やったよ、今日持ってこうへんでも、最初の授業で出したらええねんし」

「な……!」

「ニヘヘヘ……」

「ちょ、あとで見せて……」

「宿題は自分でやんなさい!」

 姫ちゃんは無情に宣告するのであった。
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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