大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)051・地区総会・3

2024-06-04 11:07:18 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
051・地区総会・3                     
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです





 ブームは過ぎてると思ってた。

 部室棟がひいお祖父ちゃんのマシュー・オーエンの設計やと分かったときは大騒ぎやった。
 なんせマシュー・オーエンはアメリカ建築史に燦然とその名を輝かす歴史的な建築家や。
 でもって、偶然にも、わたし、ミリー・オーエンがひ孫で、惣堀高校二年に在学中の交換留学生やったもんで、SNSでハジケてマスコミにも取り上げられた。


 しばらくは、サイン攻めとかの大騒ぎ。


 他の三人の演劇部員も騒がれた。

 野球部崩れの啓介は、中学ではエースで、エースに相応しいルックスとボディー。外見的にはラブコメの主役級。

 須磨先輩は、非公開やけど6回目の三年生。もともと美人なんやけど、23歳という完成された女のボディーを制服で包んでいると、なんともクール。これに対抗できるキャラは『冴えない彼女の育て方』の霞ヶ丘詩羽くらいしか思い浮かばへん。

 千歳も『涼宮ハルヒ』シリーズの朝比奈ミクル並の可愛さ。最初に見かけた時は車いすの薄幸の美少女って感じやったけど、そのイメージから脱却しようと、見かけからは及びもつかん闘志を秘めてるし。

 わたしは100%混じりけ無しのアメリカ人。幾分入っているゲルマンの血で絵に描いたような金髪碧眼。ホームステイ先の千代子からは『僕は友だちが少ない』の柏崎 星奈みたいやと言われる(あんな高飛車やないし人相も悪くないけどグラマーでもない)

 4人揃うと、ビジュアル的にはラノベが何冊も書けるくらいに特徴的ではあるんやけど、狭い学校の中やら惣堀界隈では意識せえへん。部室棟ブームのころこそは写真とか撮られまくりやったけど、ブームが過ぎてしまえば、変なクラブの変な4人組。

 その証拠に、演劇部の部員はぜんぜん増えへん。 
 
 それが、この地区総会では様子が違う。

 遅れてる学校があるので開始を遅らせますと言われたとたんに、会場の他校生たちが殺到してきた。「サインしてください」「写真撮っていいですか」には慣れてたけど、飲み終わってテーブルに置いていたペットボトルが消えた時には「え!?」やった。

「ちょ」「え」「あ、痛い!」

 惜しくらまんじゅうみたいになって、北浜高校の女の子がこけた。

「あ、大丈夫!?」

 手を貸すと、その子の膝に血が滲んでる。

「啓介、ペットボトル!」

 まだ略奪されていない啓介からミネラルウォーターを受け取って、その子の傷を洗ってハンカチで縛ってあげる。

「あ、ありがとうございます!」

「ううん、気ぃ付けてねえ……」

 足許に目をやると、再びペットボトルが消えてるし(^_^;)。


「定足数に達しましたので、地区総会を始めまーす!」


 議長の声がして、やっと始まった。

 黒板に書かれた議題は『夏休み地区講習会』と『今年度の状況報告とコンクール役割分担』や。

 あ、これはうちには関係ないなと思った。

 うちは看板だけのナンチャッテ演劇部やからね。



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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鳴かぬなら 信長転生記 185『兄ちゃんが泣いている』

2024-06-04 09:42:57 | ノベル2
ら 信長転生記
185『兄ちゃんが泣いている』曹素 




 兄ちゃんが泣いている、腹の底から泣いている。

 え……え……それって、俺のためなのか?

 荒れ狂う長江の水から引き上げられて、やっと意識が戻ったら、家来や兵隊、それに川で助けてやった者たちが泣いていた「こんな年寄捨ておかれればよろしかったのに!」とか「おいらなんか助けて、将軍様があ!」とか「曹素さまあ!」とか。

 泣くなみんな、ちょっと頑張り過ぎて体が動かないが、なに、ちょっとひと眠りしたら元気になるから……大丈夫だ……から……な……気が遠くなって、気が付いたら、今度は兄ちゃんが泣いてる。

 こんな風に兄ちゃんが泣くのは父ちゃんが亡くなった時以来だ。

 主筋の人や身近な家来、親類のおいちゃんやおばちゃん、大事な人が死んだときも泣いてたけど、こんな風に泣いたのは父ちゃんの時だけだ。

「曹素よ、俺が真に泣けるのは親父と、曹素、おまえに対してだけだ」

「え、なんでだ兄ちゃん?」

「親父は、世界で一番偉いから、曹素は一番愚かだからだ」

「な、なんだよ、それ(`Д´)」

「親父は俺以上の英雄だが、俺が生まれた時に星を失った」

「星?」

「天下人の星だ、いくら力があっても星を持っていなければ災いになるだけだ。そういうものだ」

「そうなのか?」

「曹素、お前には星も無ければ知恵もない。いっそ百姓にでも生まれていれば、普通に妻を迎え子をなし田畑を守って幸せに暮らせただろうに。なまじ俺の弟に生まれたばかりに破滅していく。許せ、弟よ」

「でも、兄ちゃん、兄妹なら他にも……茶姫なんか、にくたらしいけど、力があるじゃないか。だから、兄ちゃんの邪魔にならないように、時どき『余計なことを!』って兄ちゃん怒ったけど、懲らしめてやったし。兄ちゃんが必要だと思ったら、助けにいったし」

「曹素、おまえは愚かだが見る目はある……小動物が生きていくために災いを避けるような目だがな」

「災いなのか茶姫は?」

「茶姫は俺に並ぶほどの力があって星も背負っている。人の助けを得て大業を成す星を。しかし、茶姫の星は、残念なことに三国志の星ではない。そういう星を持った者は我が曹の家だけではなく天下の毒になる」

「茶姫も滅ぼすのか?」

「毒は使いようで薬にもなる」

「え、そ、そうか」

「俺にも愚かなところがある。ほとんどは母の腹の中に置いてきたがな。おまえは、この曹操が母の腹の中に残してきた、その愚かさ、曹家の愚かさを全て担って生まれてきたのだ、いわば曹家の人身御供、兄として涙せずにおられるものか」

 そうか、兄ちゃんが泣いているのはそういうことなんだ。

 俺は、ほんとうに死んでしまったんだ。

 愚かだから、俺は死んでから反省してるのか……また眠くなってきた……え……あ……兄ちゃんの姿がダブってくる……え、兄ちゃんが何人もいる。

 
☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
  
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