やくもあやかし物語 2
朝飯前のラビリンスとくわせもの、二匹やっつけたので、それからは、まあ平和。
ただね、くわせものが食堂のみんなにいっぱい食べさせたので、みんなお腹の調子が悪くて保健室の前に長い列をつくった。
「やくも、あなたは大丈夫なの?」
最後の一人を廊下まで見送って、養護教諭のフローレンス先生が声をかけてくれる。
「あ、わたしは食べる前だったから(^_^;)」
「あ、そうか、あの妖怪やっつけてくれたのよね」
「はい、なんとか。みんな大丈夫なんですか?」
「ああ、ほんとうに食べたわけじゃないからね」
「え、そうなんですか?」
「ああ、妖怪といっても中の下という感じだから、本物を食べさせる力は無い、そんな気がしてるだけよ。ただ、食べたって感触は本物だから、ほんとうに具合が悪くなる」
「じゃあ、治療とかは?」
「胃薬と整腸剤よ」
「え、実際には食べてないのにですか?」
「気は心よ。いわば、食べ過ぎたって暗示が掛かってるわけだから、ていねいに話を聞いてお腹も診てやって、ていねいに調剤する。わたしは魔法使いじゃないから、チチンプイプイってわけにはいかないのよ」
「そ、そうなんだ、ご苦労さまでしたぁ(^_^;)」
お~~い やくもぉ~
情けない声がカーテンで仕切られたベッドからする。
「え、その声はハイジ?」
「ああ、あの子は魔法がかかる前に、けっこう食べてたからねえ(^△^;)」
「あはは、そうなんだ」
「「アハハハ」」
アハハハ……
先生と二人で笑うと、ベッドのハイジも笑う。まあ、だいじょうぶだろう。
ピンポンパ~ン
『教頭のメグ・キャリバーンから生徒諸君に連絡です。妖怪くわせもののために、体調を崩す生徒が多いため、御前の授業を中止します。行動は自由ですが、学校の敷地からは出ないように。午後の授業については後ほど連絡します。くりかえします……』
まあ、そうなるよね。
グウウウウウ……
納得すると、急にお腹が空いてきた。妖怪騒ぎで、まだ朝ご飯を食べていないことを思い出す。
食堂に行ってみよう、まだなにかあるかもしれない。
保健室の廊下を突き当りまでいくと、食堂にはまだだいぶあるのに美味しそうな匂いがしてきたよ。
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの