魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
92『葬儀・2』
「真田さん……」
「こんなことで再会するとはね。式が始まったら、お焼香だけさせてもらうよ」
「どうも……」
「……じゃ」
由美子は、真田に教わったたばこを、一口だけくゆらせて控え室にもどりやがった。
由美子は、真田に教わったたばこを、一口だけくゆらせて控え室にもどりやがった。
こんなかたちで五年ぶりに真田にあうとは思いもしねえ由美子だ。五年ぶりの言葉が、あれで適切なのかどうかは分からねえ由美子。でもよ、あれ以上の会話は、思いもしねえ感情を心の底から呼び戻してしまっただろう。
真田は、それからも左手をポケットに入れたまま動かねえ。
マユは、まだまだ未熟な小悪魔だからよ、関わった全部の人間や出来事が分かってるわけじゃねえんだ。由美子の中では決着もついてるみてえだし、関わるのは止しにするぜ。悪いな真田。
このご時世、けっこうな有名人が亡くなっても家族葬で済ますんだけどよ。母親以外の係累は、それこそ成り立て亭主の黒羽D一人だけ。
ところが、親密にしていたお客やヒカリプロの人間がゴマンといやがる。オモクロ対決を実質の結婚式にしてくれたのもそいつらのお蔭だ。
マスコミが式場に入ることだけは断りやがったけど、今どきの葬儀としちゃ頭抜けた規模だ。
ふたを開けてみると、その予想の上を行く会葬者で、急きょ場内整理の警備員を倍にしやがったぐれえだ。
『ただいまより故・黒羽英雄、故・小林美優の合同葬ならびに告別式を執り行います 』
え、服部八重の声だ。
八重はAKRの最年長、と言ってもたかが25歳なんだけどよ、クララといっしょにAKRを纏めなきゃって気持ちが強い姉御肌だ。式の司会進行を買って出やがったんだ。
後ろに専門の葬儀社のオッサン……どこかで見た顔だと思ったら、このオッサン、テレビやネットのCMで時々見かける葬儀社の社長……で、八重の親父? そうか、アイドルが葬儀屋の娘ってのは、今の時代でも抵抗はあるのかもしれねえけど、思いきりやがった。
そうだよな、新しい時代を切り開こうってのは、小悪魔だけじゃねえんだな。よくやってくれたぜ、八重。
葬儀の時間は長かったけど苦にはならなねえ由美子だ。今までの親父の介護や看護のことを思えばなにほどのことでもねえ。
一般焼香のときに真田の気配を感じやがったけど、あえて、その手に指輪がされているかどうかも見ることはしなかった……。
マユはよ、美優の命の灯が消えてからは、仁科香奈の姿になってるぜ。
マユはよ、美優の命の灯が消えてからは、仁科香奈の姿になってるぜ。
仁科香奈ってのは、前にも言ったけどマユとクララの姿を足して二で割ったアバターだ。自分の本来のアバターは拓美に貸してあるんで、これ以外はケルベロスのポチの姿しかねえ。ポチの姿でうろついていたら、すぐに外に放り出されっちまうからな。
由美子と真田のことは気づいていた。あの清純で献身的な看護を続けてきた由美子に、こんな過去があるとは思いもしなかったぜ。駐車場で二人が再会した時に、由美子の過去が思念といっしょに分かってしまったけど、二人の心が、きちんとケリのついた話っぽいんで、安心しておく。
焼香の間、二人は意識の片隅でお互いを捉えていやがったけど、それ以上になることは無かった。ただ会葬者の中に四歳ぐらいの子どもを連れた女性を見たときに、一瞬由美子の心が揺らめきやがる。
真田との間にできた子を産んでいたら、ちょうどその子と同じくらいの年格好になっていた……グ……由美子の人生もどこまで深けぇんだ。
出棺の直前、親族で棺を花で満たしてやるときに、いろんな思念がいっぱい飛び込んできちまって、マユは一瞬クラッとしちまったぞ。
あたりめえだけど、美優の母親、美智子の悲しみが黒羽と並んで一番大きい。その美智子をいたわる気持ちは、ポーカーフェイスの光ミツルが一番だった。探ってみてえ気持ちになったけど、もういっぱいいっぱいだから止しておくぜ。
出棺の直前、親族で棺を花で満たしてやるときに、いろんな思念がいっぱい飛び込んできちまって、マユは一瞬クラッとしちまったぞ。
あたりめえだけど、美優の母親、美智子の悲しみが黒羽と並んで一番大きい。その美智子をいたわる気持ちは、ポーカーフェイスの光ミツルが一番だった。探ってみてえ気持ちになったけど、もういっぱいいっぱいだから止しておくぜ。
黒羽は、美優の顔を見て、美優と、ちゃんと通うところがあったんだろう。小さくうなづいて、黒羽自身の手で棺の蓋をしてやったぜ。
小悪魔の悲しさ。人間や、幽霊、妖精のたぐいの姿や思いは分かるけど、天国に行く魂は見ることも感じることもできねえ。
スタジオで美優の魂はオチコボレ天使の雅部利恵の手の中でエメラルドグリーンに輝いていやがった。それが、美優の魂が見えた最後だったぜ。
美優の棺を閉じて、それから由美子と二人で親父の棺を閉じやがる。
親父にも美優の葬儀を見届けさせてやろうって気持ちなんだ。
パアーーーーーン
二台の霊柩車のクラクションが長く響いた。
あとは大丈夫だろう。
人間たちは、苦悩を乗り越え、支えながら生きていきやがる。
マユの仁科香奈は乃木坂学院高校の制服を着ている。明日には退学届けが受理され、週末にひかえたオモクロの研究生のオーディションを受ける。
なんせマユのでっちあげだからな。周囲のやつらの記憶や記録を、一から用意なんかできてねえ。簡単に乃木坂学院の退学生としての仁科香奈しか用意ができちゃいねえんだ。
とにかく、これでよ、脳天気なオチコボレ天使の雅部利恵が作った想色クロ-バー、オモクロをなんとかしなければなんねえ。そう思い定めた、仁科香奈姿のマユだったぜ。
☆彡 主な登場人物
- マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
- 里依紗 マユの同級生
- 沙耶 マユの同級生
- 知井子 マユの同級生
- 指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
- 雅部 利恵 落ちこぼれ天使
- デーモン マユの先生
- ルシファー 魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
- レミ エルフの王女
- ミファ レミの次の依頼人 他に、ジョルジュ(友だち) ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
- アニマ 異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
- 白雪姫
- 赤ずきん
- ドロシー
- 西の魔女 ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)
- その他のファンタジーキャラ 狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
- 黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
- 由美子 英二の妹
- 真田 由美子の元カレ
- 美優 ローザンヌの娘 英二の妻
- 光 ミツル ヒカリプロのフィクサー
- 浅野 拓美 オーディションの受験生
- 大石 クララ オーディションの受験生
- 服部 八重 オーディションの受験生
- 矢藤 絵萌 オーディションの受験生
- 上杉 オモクロのプロディューサー
- 片岡先生 マユたちの英語の先生