大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・082『笑い声を追って海辺を走る』

2024-12-04 14:48:58 | カントリーロード
くもやかし物語 2
082『笑い声を追って海辺を走る』 




 フフフ……ハハハ……フフフ……ハハハ……フフフ……ハハハ……


 笑い声を追って浜辺を走る!

 近くなったと思ったら遠くなり、遠くなったと思ったら近くなる。左手の草原の方に逃げて、それを追いかけて草原に踏み込むと、とたんに砂浜の方に笑い声が移動したりする。

 でも、けっして海の方からは聞こえないから、わたしたちの前を走っていることに変わりはない。なけなしの元気を振り絞って走る!

「こんちくしょー!」

 タタタタタタ!

 ハイジが頭に来て全力で追いかける!

 全力すぎてわたしの視界から消えてしまうんだけど、しばらく走ると、ヒトデみたく大の字になってひっくり返っている(^_^;)。

「がんばろ、上からは聞こえないから、あいつらも飛ぶ力はないんだよ」

「え、あいつら飛べるのかぁ?」

「あ、やっつける前は飛んでた。名前もトバリとトバルだから飛ぶっぽいかな」

 フフフッ……フハハハハ!

 かなり近くで聞こえて、ハイジと二人、めちゃくちゃ敵愾心が湧いて来て、思いっきり走った!

 どのくらい走っただろうか、あるものを、ちょっと追い過ごしたところで、二人とも立ち止まってしまった。

「いまの見たか……」

「う、うん、なんとなく……」

 なんとなくじゃない、実ははっきり見えて、見てしまって……立ち止まって見る勇気がないので、惰性で50メートルほど走ってしまった。

「ちょっと戻って確認しよう……」

「お、おお……」

 それは焚火の跡だ、ちょっと前まで二人で服を乾かしいた焚火の跡。

 燃え残りの木切れに見覚えがあるっぽいし、焚火を挟んでできた窪みは、やくもとハイジのお尻の痕っぽい。

「ひょっとして、ループしてるっぽい?」

「ま、まさかな(;'∀')」

「ていうか、笑い声がしなくなってるし……」

 ザザァァァァァ~~ ザザァァァァァ~~

 なんだか、波音だけが際立って……ちょっと怖くなってきた。

「あ、誰か来るぞ!?」

 ハイジが後ろの草原に駆けあがる。やくもも遅れてあがる。

「え、あれは……」

「デ、デラシネじゃねえか!」

「「オーーイ、デラシネぇ!!」」

 二人で手を振ると、デラシネは、それに気づいた様子も応える様子もなく、それでも、真剣な顔で真っ直ぐこっちに向かって走ってきた!

 

☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!81『黒羽Dがんばる!』

2024-12-04 08:39:38 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
81『黒羽Dがんばる!』 




 黒羽のジジイは分かってやがる。黒羽と美優は、自分を安心させるために見せかけの婚約をしていることをな。

「違います!」

 しかし、美優は、はっきり言いやがった。

「違います。わたし、本当に英二さんのこと愛しているんです」

 でも、ジジイは、こう返してきやがった。

「……だとしたら、それは錯覚だよ。婚約者の役を引き受けたのは、俺の命が長くない……そう聞いてからだろう。二人を見ていれば分かるよ……二人は、まだ清いままだ」

 清いまま……国宝になりそうなくれえ古風な言い回しだけど、核心をついていやがる。

「オヤジになに言われたの?」

 ハンドルを握りながら黒羽Dは聞きやがる。

 軽い調子だけど、かなり気にしていることが美優にもマユにも分かったぞ。

「ナイショ」

「厳しいこと言ったんだろ。外面はくだけたジイサンだけど、身内にはキビシイからなあ。まあ、年寄りの繰り言と聞き流せばいいよ」

――そうだよね、お父さんは、とても優しく接してくれて、心配もしてくれた。でも、厳しく現実は見抜いていた……いや、違う。わたしは、ほんとうに英二さんを愛してるんだからね――


 それから二日がたった。


 コスモストルネードは、プロモーションビデオの段階にさしかかっていた。

 マユのアバターを借りた拓美もリーダーのクララも知井子も、他の選抜メンバーも歌と振りは完成していたぞ。


 プロモの撮影は、隣りのS県のコスモス畑でおこなわれたぜ。


「すごいだろ!」


 黒羽は、衣装のアシスタントとして付いてきた美優を含める全員に自慢しやがる。

 黒羽は仕事の上では公私混同はしねえ。美優も、カメラテストの終わったメンバーの衣装の手直しを真剣にやったぞ。あくまでローザンヌの仕事だという姿勢は崩さねえ。

 プロモのディレクターはゲームクリエーターの岸川という、まだ二十代前半の若い奴だ。

「岸川君は、『アイドルチャレンジ』で立て続けにミリオンとってるやり手だからな。きっといいプロモにしてくれるよ」

 黒羽が、そう紹介すると、メンバーのみんなが騒ぎやがる。

「え、ウソー! あのアイチャレ作ってんですか!」

「わたし、クリアーしちゃった!」

「続編でるんですか!?」

 AKRのメンバーの中にも、かなりのファンがいるようだ。そのためにメンバーとクルーのモチベーションは最初から高くて、チームワークもいいぞ。

 なんといっても、メンバーのほとんどがアイチャレにハマったり、知っていたりしていたんで、最初から共通のイメージを持って撮影できたことが大きい。

 まったく新しいものを一から作るより、アイチャレをブースターにして打ち上げた方が確実に軌道に乗る。乗ってしまえば、回を重ねるごとに自ずとAKRらしさが出てくると、この人たらしディレクターは目論んでやがる。
 そんで、企まずして出て来た『らしさ』の中から、次の本当のAKRの色と形を掴もうとしてやがる。

『二番煎じで墜落すんなよ』

 会長には言われてやがるが、会長もそうやってフォークの枠から突き抜けてきやがったんで、それ以上には言わせねえ。

 
 予定より二時間も早く撮影が終わって明くる日はスタジオ撮りだ。 そんで、週末の新曲発表は、いきなりオモクロとの対決というブースターが付くことになりやがった。

 オモクロが、新曲の『秋色ララバイ』をぶちかまし、合同発表ということになった。しかし、ただの発表ではつまらねえ。

 収録に審査員。そして会場の観客。さらにはテレビとネットの視聴者にも投票してもらい、順位を付けることになってやがる。
 ただの新曲だけの勝負では負けた方が営業上のダメージが大きく、九十分の特番としては尺が余ってしまうので、AKRもオモクロも独自の選曲で、三曲づつぶつけ合い、その間にもトークなどがあって、最後に投票結果が集計され、フィナーレで結果が発表されるちゅう、失速してる間もねえ企てだ。

 この分かり易くセンセーショナルな企画は、HIKARIプロの会長が発案し、オモクロが受けるカタチで決まった。黒羽Dは独自に突っ走りながらも、会長へのヨイショも抜かりがねえ。


――まんまと罠にはまったな――


 オモクロの上杉プロディユーサー兼チーフディレクターは笑みをこぼしやがった。だけど、オモクロのことは、もうちょっと後でな。

 
「ごめんなさい。英二さん、今夜は来れなくて……」

「いいよ美優ちゃん」

 美優が病室に入って最初の会話だ。

「由美子、ちょっとの間、この酸素マスク外してくれよ」

 ジジイが、夕べよりもか細くなった声で言いやがる。

「……いいわ。でも三十分だけよ」

「頼む」

「三十分たたなくっても、顔色変わったり、モニターのアラームがなったら、そこでマスクジイサンになってもらうからね。じゃ、美優……お義姉さん、よろしく」

 年上の由美子から言われて、少し落ち着かなかええけど、気遣いは嬉しい美優だったぞ。

 昨日もそうだったけど、黒羽の父は、美優がかりそめの婚約者だとは言わなかった。ほんとうに息子の嫁に話しかけるみてえに、うち解けて話してくれやがる。

「ハ……あいつも、なかなかやるもんじゃないか……」

 オモクロとの対決を話した時などは笑ってくれた。もう声を出して笑う力はなかったが、目はしっかり笑っていた。
 
 対決番組の収録まで、あと五日。

――わたしの命は……あと四日。神さま、お願いです。英二さんの勝利が分かるまで、一日だけ命を延ばしてください――

 頼む相手が違ぇだろ!

 マユは、必死で五百万個目のガン細胞を殺しにかかったぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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