大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・083『別次元化された砂浜』

2024-12-10 11:34:47 | カントリーロード
くもやかし物語 2
083『別次元化された砂浜』 




 フッ…………………あ、あれ?


 デラシネはスピードを緩めることもなく突撃して来たかと思うと、わたしとハイジをすり抜けて走り去ってしまった!

 なんかVRゲームをやっていて、キャラやオブジェが手応えなくすり抜けていくみたいだ。

 ただただ、呆然としてデラシネの後姿を見送ってしまう。

「あ、ひょっとして!?」

 ハイジがなにかに気づいて、焚火の跡に手を伸ばす……生焼けの木切れを掴むと、二つになった。

「「え?」」

 掴んだ方は、ちゃんとハイジの手の中にあるんだけど、同じものが薪の跡に残っている。

 ガチャガチャ

 ハイジが焼け跡を足でかき回すと、木切れはあちこち飛び散ってしまうんだけど、もう一つの焼け跡はそのまま残っている。

「なんだこれえ!?」

「次元がズレてる……」

「なんだ、それ?」

 あやかし慣れしてるやくもはピンときた。だけど、ハイジはまだ腑に落ちない。

「走ってるうちに、次元が微妙にズレた。この焚火と散らばった焚火は別の次元なんだ。見てて!」

 木切れを拾って砂浜にへのへのもへじを描く。

「なんか、切れ切れだぞぉ?」

「あっちの砂浜とこっちの砂浜が重なってるんだ。わたしらとデラシネが走って、砂が蹴散らかされた状態で重なってるから、向こうの次元の砂浜には描けないんだ。だから切れ切れになるんだ!」

「ええ……じゃあ、どうすんだよ?」

「どこかに切れ目があるはず、そこを超えれば……」

 言ってはみたけど、それがどこだか見当もつかない。


 フフフ( ´艸`)……ウシシ(*`艸´)……

 あいつらの笑い声がするけどムシムシ。


 日本にいたころ『合わせ鏡のあやかし』にやられたことがある(やくも・03『フフフフ』)。左右に果てしなくやくもが居て、同じやら左右逆やらに動いて抜け出すのに苦労した。

 ポケットに手を突っ込んで御息所たちを引っ張り出す。

 力尽きて寝てるけどかまっちゃいられない。

「ちょっと、起きて、大変なのよ!」

『ムゥ……まだ無理ぃ……』

 目をつぶって、赤ちゃんみたいに丸まってしまう御息所。
 
 ミチビキ鉛筆も思いやりもピクリともしない。

「こいつら、ダメなのかあ?」

「うん、さっき激しく戦ったからね……」

 仕方がない、無理を言ってるのはヤクモの方だ。

 優しく掴んでポケットに戻そうとしたら、御息所が、弱々しく自分のポケットを指さす。

 ポケットからマチ針の頭みたいなのが覗いてる。

「あ、受話器だ!」

「ちっちぇ」

 そうか、これは交換手さんの黒電話!

 激しい戦いで壊れたり無くしたりしないように、御息所は自分のポケットにしまっていてくれていたんだ!

 一センチほどの受話器を、ちょっと迷ったけど、とりあえず口のところに持っていって呼びかけたよ。

 もしもし……もしもし……



 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!86『会議室に入って驚いたぜ!!』

2024-12-10 09:11:14 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
86『会議室に入って驚いたぜ!!』 





 廊下に出ると、さっきの外人のオヤジ。目が合うと英語でなんだか言ってきやがって、握手。通訳のネーチャンと笑顔を残していっちまいやがる。

 会議室に入って驚いたぜ!!

「美優ちゃん、これに着替えて」

 衣装の篠崎がウェディングドレスを持って待ちかまえてやがる。ヘアーやメイクさんも揃っていやがったぞ。


「こ、これって……」


 九十分ほどかけて、美優は花嫁姿にされちまった。プロ達の手際としては時間がかかりすぎていやがるけど、それは、美優が朝寝坊で、顔もろくに洗っていなかったからだ。

 シャワーから始まり、シャンプー、スキンケア……そして、着付け、ヘアセットとメイクの同時進行。

 そのころになって、届けた衣装が一着多かったことに気づいた。

 ウェデイングのリカちゃん人形が仕上がって廊下に出ると、AKRの研究生のやつらが廊下に並び、そいつらに拍手で連れていかれてスタジオに入った……。


 なんということだ! スタジオが教会に変わっていやがった!


 真ん中に真っ赤なバージンロ-ド。左右の席には、AKRのメンバーや研究生、スタッフのやつら。前の方には留め袖姿の母とブル-のドレスの由美子が立っていやがる。

 そして、一段高くなったところには神父のおっさん。そして、そして……その前にはタキシードの花婿の姿で黒羽が、緊張した顔で立っていやがった!

――そうか、みんなで仕組んでやがったんだ。道理で衣装が一着多いはずだぜ。スタジオのシートにくるまれていた秘密の道具もこのためだったんだ――

 呆然と立ちつくしていると、脇を小突かれた。会長がタキシードに白手袋で腕を差し出してやがる。美優はギクシャクと会長の腕に腕をからませた。

 タ~ンタ~カタンタンタンタン♪ タンタカタンタ~~~ン♪♫

 するとキーボードがパイプオルガンになり、メンデルスゾーンの結婚行進曲を奏で始めやがる!

 美優は感覚がマヒしてしまったぞ。

 まるで全てが分かっていたみてえに、堂々とバージンロ-ドを歩くことができた。最初の一歩は、危うくつまずきそうになったけどな、それで会場のみんなが一瞬クスっときて、動揺することもなかったぞ。

――わたし、英二さんのお嫁さんになるんだ――

 その思いさえも、ひどく冷静、パソコンのそっけないフォントみてえに思い浮かんだだけだったぞ。

 神父の前で黒羽と並んだ。

 神父は、廊下ですれ違った外人のオッサンだ。おごそかな顔で分からなかったけど、ウィンクされて、そうと気づいたぞ。こいつ、仕事で来日中のバチカンの枢機卿じゃねえか! 美優の中に居なきゃ体中にジンマシンが出てるとこだぜ(''◇'')ゞ!

 それから、神父は型どおりに式をを進行させ、いよいよエンゲージリング……そこで、

 ドキドキドキドキ! ドックンドックンドックン! バックンバックン!

 美優の奥底から竜巻みてえな感動が湧いてきやがって、マユはモミクチャになっちまうううう((;´✘;Д;✘`;))!!

 婚約指輪を外されていたことも、花嫁用の白い手袋をさせられたことも覚えてはいねえ美優。そんで、黒羽が、エンゲージリングをはめるため、そっと美優の左手をとったときの手の温もりが、やっと感覚をよびさまさせやがる! 夕べと同じ黒羽の手の温もり……!

「一言ごあいさつを」

 さすが会長、ここ一番という時は大きく見える……と思ったら、ハコ馬の上に乗ってやがる(^_^;)。

「本来ならば、きちんと仲人をたて、吉日を選び、わたしのようなインチキ野郎が、新婦の父の代役をすることもなく結婚式をやらねばならんのですが、新郎黒羽英二は、明後日の新曲発表後、AKRホンコンの立ち上げのため当分日本を離れます。黒羽君は自分で思っているほどには、女にモテやしません。その黒羽君と結婚の約束をしてくれた、美優ちゃんが心変わりしてはいけませんので、不肖わたくし光ミツルのグッドアイデアで、スケジュールの合間を縫って、ささやかながら、わがHIKARIプロのスタジオで、強引でインチキクサイ結婚式を執り行うことになりました。まあ、変態オヤジの酔狂とお許しください。しかし、式とわたしはインチキくさくはありますが、ここに集まった、みなさんの、二人の門出を祝福する気持ちは本物であります。そして二人の気持ちも……そうだよな?」


 新郎と新婦は頬を染めてうなづきやがる。


「それが確認とれたら結構、これから直ぐに区役所に行って婚姻届を出してこい。披露宴その他は、黒羽が帰国後ドハデにやろう。まあ、よかったら、美優ちゃんがホンコンにいっしょにくっついていくってのもありだけどな!」

 くだけて話す会長の目は全てを承知しているような光があった。ありがたいと美優は思ったぞ。

「さ、とりあえず区役所だ!」

「はい、直ぐに着替えます!」

「ばか、着替えてる時間なんかねえの!」

 美優と黒羽は、式のウェディングドレスとタキシードのまま、事務所のバンに乗せられ区役所に行くハメになった。婚姻届の証人になったクララが、どうしても付いていくときかず。そのまま放送局に行くことを条件に認められた。

 ロビーに突然現れたウェディングドレスとタキシード+AKRのクララに、区役所は一時騒然とし、その様子はヤジウマたちによって、その数十分後にはSNSに流れてしまったぜ。


 マユは、もうすぐ一億個目のガン細胞を壊すところだったぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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