大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・157『こっそりお守りを置いて……』

2024-12-08 16:09:53 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
157『こっそりお守りを置いて……』   




「ちょっと、テスト期間中に悪いんだけど」

 監督の先生が出ていくと同時に10円男に声をかける。ちょっとでも間を置くと、こいつはスグに居なくなる。

「ええぇ、バイトなんだけど」

「時間は取らせないから、去年もやった『クリスマスの集い』なんだけど、今年もやろうかって、ちょっと話」

「ああ、いいんじゃない。俺はバイトで参加できないけど」

「ええ、なによ、それぇ」

「ごめん、年末はいろいろあって。じゃぁ」

 後姿で手を振ってサッサと帰っちまいやがる。

「去年はケンカまでして手伝ってくれましたのにねぇ(070『いよいよクリスマスイブの集い』)」

「まあ、いいじゃない。集まってから言うつもりだったけど、ノリでやっていこうと思ってたし」

 真知子が慰めてくれて気持ちを切り替えて職員室に向かう。



「失礼しまーす、2年3組の時任でーす。花園先生いらっしゃいますかぁ」

 ドアを20センチほど開けて、誰に言うともなくエクスキューズしておく。

 試験中なんで、生徒の出入りは禁止なので、いちおうの断りを入れる。教頭先生がチラリと見てくれて、これで入室許可をとったことになる。二年の師走ともなると、たいていのことは阿吽の呼吸。

 我が担任は、向こうの共用テーブルで監督していたクラスの答案を確認している。

 一枚一枚名前と番号を確認して、確認し終えたら、でっかいホッチキスで右上を留めて袋に戻して監督者欄にサイン。そして、テーブルの周囲で待機してる教科の先生に渡して任務終了。

 答案をなくしたり間違ったりしないための重要な儀式。この間は生徒ごときが声をかけても相手にはされない。校長が声をかけても「後にしてください」というくらいのものなんだ。

 実は、これを承知で職員室に来ている。

 試験期間中なので、職員室に長居することもできない。

 それで、勝手知ったる花園先生のデスクに、例のお守りをそっと置いておく。

 教頭先生は書類仕事やってるし、答案受け渡し以外の先生はほとんどいないし、先生のデスクに0.5秒でお守り置くところを目撃した者は居ない。

 静かに頭だけ下げて職員室を出ていく。

 誰も気づいてはいない。

 これで先生は――いったい誰が!?――と驚きながらも詮索することは無い。

 ものが無くなっているのなら大騒ぎだろうけど、落したお守り、それも本来買うはずだった『良縁成就』のお守りなら、少々気味悪くても、ひょっとしたら、神さまのアフターサービス? それとも親切な妖精さん? とか……信じなくても、詮索とかはしないだろう。


 一件落着して中庭へ。


 作法室前のベンチにお仲間たちが先着している。

「あ、新曲の練習するんですよおー(⌒∇⌒)」

 ロコが嬉しそうに手を振って、ヒョコヒョコとベンチの端っこに座る。

「ここで、二三十分歌ってたら、去年を知ってる二三年生なら気づくでしょ」

「一年生は……ほら、もう何人かこっち見てるし」

 真知子とたみ子の仕込も余裕の感じ。


 いの~ち掛けてと~ 誓った日から~ すてきな思い出~♪


 あ、お祖母ちゃんのオハコ!

 時どき『あの、すばらしい愛をもう一度ぉ~』のところを何度もリフレイン、というか、ほとんどここしか口ずさまないから、通しては知らない。

 子どものころから聞いてるから、わたしにとっても懐メロなんだ。

「アハハ、この春に出た新曲だから、まだ憶えてないんですけどねえ」

 ロコが、この一言を言ってくれなかったら「ああ、懐かしいぃ……」と不用意に呟いたかもしれない。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!84『婚姻届』

2024-12-08 06:45:44 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
84『婚姻届』 




 クロマキーの撮影はにぎやかだったぞ(^▽^)。

 グリ-ン一色のスタジオで、宙づりになったりデングリガエシになったりしてよ。 知井子なんか、首から下はグリーンの前進タイツを着せられ、一人で『コスモストルネード』を歌わされたりしたぞ(^_^;)。

 ラッシュを見ると、グリーン一食の世界で、自分の首だけが歌っているようで、なんともケッタイなんだけどよ、映像スタッフがPCのエンターキーを押すと、ティンカーベルの妖精みてえな姿になりやがって、コスモス畑の真ん中で、メンバーに取り囲まれて歌っていやがる。

 黒羽Dと美優は、昨日ほどには恋人らしくなかった……というか、距離の取り方が自然で、最年長の服部八重なんか『かえって自然な関係に見えた』って言ってゃがった。

 クロマキーの撮影は、CGとの合成になるんで一見簡単そうだけどよ、CGの画面と完全にシンクロさせることは意外にむつかしい、シーンによっては、テイク二十ぐらいいくものもあって、昼の休憩は午後の一時半を回っちまったぞ。

 控え室が狭いんで、メンバーの半分とスタッフは、スタジオのそこここで、ロケ弁を食ってるぞ。


「ちょっと、美優ちゃん、いいかな」


 スタッフといっしょに衣装直しのチェックをしながらロケ弁を食べている美優に、黒羽Dが声をかけやがった。

「ちょっと待って、打ち合わせ終わって、お弁当食べたら……で、いい?」

「あ、ごめん。むろん、それでいいよ、そこの事務スペースで五分後」

「うん」

 今日の二人の何気なさは、それを仕事の打ち合わせと思わせ、服部八重でさえも気がつかなかったぞ。


「この子達の動きに合うようにするんですね」

 大石クララがCGの画面にくいいってやがる。

「多少は、CGに手を加えて直せるけど、オモクロ対決には間に合わせろって、会長のお達しだから」

「みんな、がんばるんだぞー!」

 おおー!!

 クララが檄を飛ばすと、みんなが拳を突き上げた。突き上げた半数の拳には、まだお箸が握られていたぜ。

 AKRの新曲発表に、みんな、並々ならぬ闘志が籠もっているぜ!


「もう、どこ行ったのよ?」


 事務スペースに、きっちり五分後にやってきた美優は言い出した黒羽Dがいねえことに、口を尖らせやがる。

「やあ、ごめんごめん。みんなのテンションが高いんで、午後の分の打ち合わせにも熱が入ちゃって……これにサインとハンコくれる」

「うん」

 美優は、納品関係の書類だと思って、気楽にハンコを出しやがる。

「……これは」


 書類の左上には「婚姻届」と記してあった……ぞ!!


「英二さん……」

「異議あり?」

 美優はブンブン首を振った。

「じゃ、お気楽に……早く」

「フフ、これって一種の納品書ね」

「どっちが納品されるの?」

「英二さん。だって、先に名前が書いてあるから、わたしが受領者……ね」

「尻に敷かれそうだ……」

 美優は、ポーカーフェイスで署名捺印した。スタジオのみんなは気にも留めないか、仕事上の書類のやりとりだろうと思っていたぞ(〃艸〃)。

 と、そこに一陣の風が吹いてきやがった!

 スタッフが、午後から使う送風機のテストをやりやがったんだ。むろんみんなの邪魔にならねえように、外に向け、パワーも微弱にしてあったけどな。壁を伝った風が、その書類を吹き飛ばすのには十分な力があったぜ。

 そんで、その書類は、スタジオのセットの前に輪になっていたAKRのメンバーの真ん中に落ちてきやがったぞ!


「なに、これぇ……?」


 知井子が、それを拾って、マユの体を借してる拓美が気がついたぞ!

「これ、婚姻届……じゃん!」

 拓美がマユの声で叫ぶと、メンバー全員が、磁石にくっつく釘のみてえに集まって歓声を上げやがる(^_^;)!

 ウワー! キャー! ウソ! ヤダー! ガチ!

 口々に年相応の短い感想を叫びやがって、スタジオの隅で固まっている黒羽と美優にいっせいに目を向けやがった……。


「親父、見えるか、これが……」


 黒羽は、美優とベッドの傍らに立ち、しわくちゃになった婚姻届をかざしやがる。

「今日は、ほとんど意識が無いの……」

 妹の由美子がポツリと言った。

 黒羽ジジイの命は、美優同然、あと二日余りになっていやがる。美優はマユが電池代わりになっているんで、まるで病人には見えねえけど、黒羽ジジイは末期ガンそのままで、意識もはっきりしねえ。

――ジジイの手を取ってやれ――

 マユは、美優の意識に働きかけたぞ。

 美優が手を取ると、ジジイはうっすらと目を開けやがった。マユがエネルギーの一部を父に送ってやったんだ。

「……ああ、来ていたのか」

「昨日は、仕事でこられなかったけど、今夜は……二人揃って来た」

「お義父さん。これ見てください」

「婚姻届……いいのかい、美優ちゃん……」

「だって……だから言ったでしょ。わたしは本当に英二さんと結婚するって」

「そうか……その指輪?」

「うん、親父が、お袋に送った指輪を作った、同じ店で」

「そうか……昨日は、ちがう指輪のように見えたが」

「ちゃんと、覚悟の程を、ちゃんとお義父さんに分かってもらうために、英二さん作り直してくれたんです」

「分かってくれたかい、親父?」

「ああ、美優ちゃん……このボンクラを、よろしく頼むよ」

「ボンクラはないだろう」

「ああ、すまん。英二にしちゃ、上出来だ。好きな女を清いまま……オレは、てっきり、お前のヤラセだと思っていた」

 美優の心臓は大きく高鳴って顔が真っ赤になってきやがった。だからよ、使うエネルギーも増えちまって、ジジイに送っていたエネルギーを遮断したぞ。

「あ、眠っちゃった……きっと安心したのね」

 由美子も嬉しそうに父の手を握って、掛け布団の中に収めてやったぞ。


 その夜、家にもどり、食事やあれこれをすませ、お風呂に入ったあと、美優はいったん自分の部屋に戻りやがる。

 そしてガウンを着て黒羽の部屋の前に立ちやがる。そして……大きな深呼吸をしてドアをノックしやがった。

 コンコン

「どうぞ」

 黒羽の声がした。

「え、英二さん……(//▭//) 」

 声がかすれてやがる。

 美優は、自然な飛躍をするために、ゆっくりとドアの中に身を滑り込ませていきやがった……。


 マユは、美優の体の中で3200万個目のガン細胞を殺しにかかるところだったぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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