大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

真凡プレジデント・18《名札と座布団と下の名前と》

2021-03-11 05:55:33 | 小説3

プレジデント・18

《名札と座布団と下の名前と》 

 

 

 presidentの名札が輝かしい。

 

 福島さんが座布団を作ってきてくれて、それに触発された北白川さんが卓上の名札を作ってくれた。

 生徒会室は教室の半分の広さで、ゼミテーブルと四人掛けの応接セットがある。他にも、椅子やらロッカーがそれなりにあるんだけど、ことごとくがどこかのお下がりで統一感が無く、パッと見は物置と大差がない。

 そこに座布団と名札の統一感が際立って清々しい。

「やっぱ、英語っていいよねえ」

 なつきがしみじみと言う。

 

 president 田中真凡  vice president 福島みずき  secretary 北白川綾乃  accountant 橘なつき

 

 白地のプレートに黒字で書かれただけのシンプルなものだけど、中古のゼミテーブルでも特別に見えてくるから不思議だ。

「アハ、回転させたら日本語だ(⌒∇⌒)」

 

 会長 mahiro tanaka  副会長 mizuki fukushima  書記 ayano kitashirakawa  会計 natsuki tachibana

 

「日本語と英語が逆になっててカッコいい」

「真ん中で回転するようになってるから、英語・日本語いずれのオンリーにもなるの」

「北白川さんも福島さんも凄いね!」

 わたしは、素直に感動する。

「おザブも同じドーナツ型だ!」

 これには驚いた。尾てい骨の事は内緒にしてあるし、座布団はドーナツ型であることが分からないように普通のカバーが付けてある。

「共通理解があった方がいいと思って、二人には話しておいたの」

 ムム、なかなか鋭い北白川さんだ。

「びっくりした、てっきり真凡は痔になったのかと……はっきり聞けないしね」

「何年友だちやってんの、わたしが……になんかなるわけないじゃん!」

「あ、いや、だから北白川さんに言われて……」

「あの、苗字で呼ぶのはよさない?」

「「「え?」」」

「他人行儀だし、北白川っていうのは微妙に長いでしょ」

「あ、そうかも」

「じゃ?」

「公でないときは、下の名前……で、どうだろ」

「それいい! わたしがなつき、真凡はまひろ、福島さんはみずき、北白川さんがあやの、決定だね!」

 

「おお、きれいになったなあ!」

 

 入って来るなり感嘆の声を上げたのは藤田先生だ。

「名札と座布団を、北……綾乃とみずきが作ってくれたんです、ツボを押さえた統一感が成功していると思います」

「そうだな、目の付け所がいい。顧問としても考えなくっちゃなあ……あ、新執行部発足のささやかな差し入れだ、みんなで食べてくれ!」

 先生がドンと置いたのは六つは入っているだろうと思われるケーキの箱だ!

「すごい、銀座タチバナのショートケーキじゃないっすか!?」

 たちばなにはピンからキリまであって、ピンが銀座タチバナで、キリがお好み焼きたちばなだというのは、昔からのなつきのギャグだ。

「これは、わたしたちのこと以外でもいいことあったんですね?」

「するどいなあ、北白川は(^_^;)、実は、柳沢が無罪放免になってなあ!」

「「「「え、そうなんですか!」」」」

「鉄道のえらいさん達が、柳沢の行動が無ければ、死傷者が三桁は出る大事故になったって結論付けたんだ。選挙は残念だったが、これで学校も柳沢も名誉回復だ」

「よかったですね、先生!」

「先生も掛けてください、いま、お茶淹れますから」

 わたしが言い出す前に綾乃とみずきは動き出して、なつきが「え、え?」とオロオロ、とりあえずはチームワークのいい執行部ではあるようだ。

「お茶は要らないみたい」

 湯沸かしを下げた綾乃が帰って来た。

 

「やあ、諸君。安くてかさ高いだけの差し入れだけど、ま、乾杯しようぜ!」

 中谷先生がジュースやらお茶のペットボトルを持って現れた。 

「田中、ちょっと」

 田中先生がひそやかに廊下を指した。

「はい?」

 ソロリとドアを閉めると、こそっと紙袋を手渡し。

「辛いんだろ、これ、使ってくれ」

「なんでしょ?」

 

 紙袋を覗いてみると、テレビコマーシャルでも有名な痔の薬が入っておりました(^_^;)。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨    対立候補だった ちょっとサイコパス
  •  北白川 綾乃   モテカワ美少女の同級生 書記
  •  橘 なつき    入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 会計
  •  橘 健二      なつきの弟
  •  福島 みずき   生徒会副会長
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問

 


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