かの世界この世界:126
それは荒地の万屋だった!
「「「「「ペギー!」」」」」
みんなの声が揃った。
「いやあ~、あんたたちだったのか!?」
「ペギーさんて、魔法が使えるの!?」
「いやはやいやはや……」
ペギーは目をまん丸くして慌てたペンギンのように両手をパタパタさせた。
「あんたたちは大得意さんのカテゴリーに入ったみたいだねえ」
「大得意?」
「ああ、大得意さんになるとね、ピンチの時は転送されるんだよ。さあてっと……ここはヘルムの島……神域の入り口に差しかかったところだね……それも、かなり深刻だ。神域が俗域と分断されてしまっているよ」
「分かるんだ」
「伊達に荒地の万屋やってないからね……おやおや、これから大変な戦いになろうって言うのに戦車を金ぴかに塗っちゃダメでしょ」
「金ぴかに塗ったんじゃなくて、金ぴかのピカ抜きにされたんだ」
「ピカ抜きの……って、この戦車、ゴールド!?」
「ああ、主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士であるわたしでも使えぬ錬金魔法だ」
「……純度99.6」
さすがは荒野の万屋、一瞥しただけで純度を見抜いた。
「でも、純金の戦車ってダメなんだぞ、重くて柔らかすぎて使い物ならないんだぞ」
ロキが仕入れたばかりの知識をひけらかす。
「ああ、そうだ。そういう相手だから、子ども二人は連れて行ってもらえないというところかねえ」
「ああ、我々の武器も純金に変えられてしまって、使い物にならない」
「それで、わたしが転送されたというわけなんだなあ」
「そうか、ちょっと品物を見せてもらおうか」
やっと、我々も思い至ってペギーの品ぞろえを見せてもらうことになった。
わたしは勇者の剣、タングリスは魔弾のワルサー、ブリュンヒルデは賢者のシュシュ、そして、それぞれのレベルに見合った魔法の福袋。
「支払いはカードでいいか?」
タングリスがカードを取り出すと、ペギーは困った顔になった。
「悪い、転送販売はカード使えないんだよね……」
三人とも手持ちのギルはそんなにはない。ギルや経験値を稼げるバトルはシュネーヴィットヘンに乗船している時にパラノキアの巡洋艦と戦って以来やってないのだ。
「そうだ、戦車の装具を一ついただけませんか、小さなのでけっこうです。なんたって純金なんだから」
「そうだ、それがいい」
グルッと見渡して、予備キャタピラ一枚で手を打つことになった。
しかし、一枚で十キロを超える重量の純金キャタピラだ。リボ払いまで完済したがおつりが大変だ。
「じゃ、いろいろアイテム付けとくから、残りは、次会ったときということで……」
回復系やプロテク系のアイテムをしこたまもらった。
「それじゃ、みなさんなのご武運を祈ってるわ。怪我しないようにがんばってね!」
やっぱり商売人、取引が成立すると嬉しそうに立ち上がった。
「ペギーさん、どうやって帰るの?」
ケイトが根源的な質問を投げかけた。
「そりゃ、もと来た道を……あれ?」
そう、ここはヘルム本島から突如切り離された神域の島。
ペギーが現れた空間のシミのようなものも消え失せて、帰れなくなってしまったのだ。
☆ ステータス
HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 その他いろいろ 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ)
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長