大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・連載戯曲・ステルスドラゴンとグリムの森・8

2019-05-25 06:21:51 | 戯曲
連載戯曲
ステルスドラゴンとグリムの森・8

 
※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください
 
 
 時   ある日ある時
 所   グリムの森とお城
 人物  赤ずきん
 白雪姫
 王子(アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン)
 家来(ヨンチョ・パンサ)



赤ずきん: その手は、白雪さんのためにとっておいてあげて(舞台へもどる)
王子: わたしは何をすれば……
赤ずきん: 自分で決めて!
王子: 何をすればいいか、今言おうとしたんだ!
赤ずきん: そう……ごめん……。
王子: わたしはドラゴンを倒す! で……どうしたらいい?
赤ずきん: そうでしょ、けっきょく人に聞かなきゃ何もできない……。
王子: すまん……。
赤ずきん: やっかいな相手です、成長してステルス化したため、ほとんど姿が見えません。
 それに、ほとんど夜にしか現れませんから、戦いは困難が予想されます。
 とどめには、銀の鉄砲に銀の弾……それも正面から急所を狙うか、戦いで弱ったところをしとめるしかありません。
王子: やろう! 銀の鉄砲なら母上のものがある。弾は鉛しかないから、急いで造らせよう。
赤ずきん: 待って。並の銀の弾では効果は半分以下。製造から三十年以上たったもので、
 できたら神の祝福の籠った弾が望ましいんです。昔わたしを救けてくれた狩人のおじさんがそう言ってました。
王子: それはちょっとむつかしいぞ……。
ヨンチョ: なら、これを……兄のサンチョがお守りがわりにくれた銀の弾です。
 サンチョの御主人様が神の祝福をうけられたもので、四百年はたっていますで……。
赤ずきん: ありがとうヨンチョのおじさん。
王子: すまん、この礼はいずれ……。
ヨンチョ: いずれと言わずに今すぐに。
王子: なに? 抜け目のない奴だ、いくら欲しい?
ヨンチョ: なあに、わたしもいっしょに戦わせて下さい。これが条件でさ。
王子: こいつ、わたしに仕えて初めて気の利いた台詞を吐いたな!
赤ずきん: もともとはわたしのアイデアなんだからね!
王子: 赤ずきん!
ヨンチョ: 決まった! 
王子: 三人寄れば文殊の知恵も団体割引!
赤ずきん: 成功疑いなし!
ヨンチョ: 合点!
王子: それじゃあ、実行は今夜、月のアルテミスが、太陽のアポロンと睨みあうころに。
二人: おお!
王子: では、作戦の成功を祈って!(剣を抜く)……一眠りしておこうか、(二人ズッコケる)
 おまえたちも、夜の戦いにそなえて眠っておけ(去る)
ヨンチョ: アイアイサー
赤ずきん: ヨンチョさん、もう少し打ち合わせをしておこう、仮眠はそれから。
ヨンチョ: 合点だ、今眠らなくても、今夜が永遠の眠りの始まりになるかもしれないからな……。

 二人、王子とは反対側に退場。暗転。虫たちの集く声して、なつかし色に明るくなる。
 例の森のバス停前をめざして、主従あらわれる。バス停には「運休」と書いた紙が貼ってある。


王子: あのバス停だな、赤ずきんとの待ち合わせは?
ヨンチョ: ちょいと早く来すぎたようで……。
王子: 気の早いアルテミスが山の上で頬杖ついて、この勝負を見物しているぞ。
ヨンチョ: アポロンが西の山から片目だけ出して見物してござる。さても物見高い兄妹どもじゃ。
王子: お、あの赤いフードは?
赤ずきん: ごめん、遅くなっちゃった。
ヨンチョ: 大丈夫、まだ数分は昼の世界。しかしひやひやさせた分、何か土産があるんだろうな?
赤ずきん: するどいねヨンチョのおじさん。
王子: なんだそれは?
赤ずきん: 狼のマックスからもらってきたんだ。飲むと感覚が狼と同じくらいに鋭くなるんだよ。
ヨンチョ: なんだかハナクソのような……。
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