やくもあやかし物語 2
さあ、朝ごはん!
『朝飯前のラビリンス』の成敗に時間を取られ、ただでも出遅れていた朝ごはん!
プルルル プルルル
部屋を出ようとしたら黒電話が鳴る。
「もしもし、なにかなあ交換手さん?」
黒電話は交換手さんの棲家なので、電話の主は交換手さんに決まっている。
『あやかしが出たでしょ?』
「あ、うん。でも、やっつけたから大丈夫だよ」
『机の引き出しにミチビキ鉛筆が入ってます』
「え?」
戸惑ったよ、二重の意味で。
ミチビキ鉛筆は五角形のお尻に1~5の数字が書いてあり、試験の時に転がしたら正解の番号を示してくれる(『やくもあやかし物語・20・ミチビキ鉛筆』)優れモノだけど、選択肢が6個以上になると役に立たない。それに、夢の中に出てきた魔道具で、現実には存在しない。
「あ……えと、これは?」
『たまにこういうことが起こるんです。だって、八十年も昔の交換手が電話の中に住んで居たり、源氏物語のヒールキャラが1/12サイズになって引き出しに居たりするんですから』
ヘクチ!
『さっきは間に合いませんでしたけど、今度は、きっと役に立ちます』
「他ならぬ交換手さんが言うんだ、ありがたく使わせてもらうね」
『はい、お誘いしておきながら真岡では十分なことができませんでしたし』
「ううん、デラシネも楽しんでくれたみたいだし、良かったと思ってるわよ」
『ありがとうございます。ま、わたしのささやかな、お……』
「お……?」
『お、応援です』
「ありがとう。じゃ、行ってくるね。御息所も風邪とかひかないでねぇ」
『さっさと行きなさいよ!』
「じゃね」
ドアを閉めて一階の食堂を目指す。
タタタタタタタ
正直お腹もすいていたので、軽やかに階段を下りて一階の食堂に。
もう、20分は遅れてるから、ほとんどの子は食べ終わって食堂から出てくるころだ。残って食べているのは食いしん坊のハイジぐらいのもの。
あれ?
ダイニングには、まだ寮生全員が残っていて朝食の真っ最中。
ガツガツガツ! ムシャムシャムシャ! ハグハグハグ!
ちょっと、みんなの食べっぷりがおかしかった(;'∀')!?
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス