大橋むつおのブログ

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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・33『学校は死んだ。演劇部闘争の果て』

2014-09-12 20:36:36 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・33
『学校は死んだ。演劇部闘争の果て』



☆本日の抗議行動

 昨夜原稿を闘争委員長の生徒会長にメールの添付書類で送り、委員長はさらに添付書類のビラ原稿を執行部と有志に転送。それぞれが50枚ずつコピーして、しめて1200枚のビラを7:50分から正門と通用門に分かれて撒きました。別にポケティッシュが付いてるわけでもないのに、ほとんどの生徒が受け取ってくれました。
 予想に反して先生らからの制止や妨害はありませんでした。これは校外の人にもめてるとこを見られたないからやと思います。
 一限終了後、闘争委員長といっしょに教頭先生に確認にいきました。

「臨時職員会議は開かない。学校は平常通り授業を行う。教室にいない者はエスケープとして指導する」

 学校はあくまでも強い姿勢です。あたしらは自分らで禁じていたので闘争委員以外の生徒にはスマホで連絡を取ったり、一般生徒を煽ることは自重しました。一部の闘争委員が授業開始後も連絡のためスマホを操作してたら「授業中スマホを触るのは違反や」と先生ともめました。しかし、この程度の引っかけは想定内なんで、素直にスマホを先生に渡して平穏に3限まで終わりました。
 休み時間に、あらかじめ決めておいたとおり、廊下を闘争委員が手分けして、生徒会のハンドマイクやらメガホンで緊急の生徒総会の出席参加を叫んで回りました。
 4限が始まって5分もすると823人(闘争委員会調べ)の生徒が体育館に集まってくれました。総合学習の授業ができたクラスは一つもありませんでした。
 闘争委員長の経過報告のあと、あたしが話しました。

「うちら演劇部は、なんにも悪いことしてません。演技の訓練のため自衛隊の体験入隊をやったんです。ちゃんと活動計画書出して学校長の許可ももらいました。それが二学期になって……」
 あとは泣いてしもて喋れませんでした。みんなが「がんばれ!」言うてくれましたけど、ますます喋れんようになります。闘争委員長が代わりに喋ってくれました。最後に「これで間違いないね?」言われて、あたしは頷くことしかできませんでした。

 要求通り臨時職員会議が開かれるまでは、全学ストに入ることが満場の拍手で決まりました。48年ぶりの全学ストです。一線を踏み越えたいう気持ちと、何か熱いものを取り戻した感激で胸が一杯になりました。

 そんで、学校は5・6限の授業をカットして臨時職員会議を開くことを、やっと約束してくれました。勝った思たけど、闘争委員長が言いました。
「これはストの実績を残させへんための学校の手ぇや。問題は、臨時職員会議の結果や!」
 単細胞のうちと違うて、さすがは生徒会長。見通してます。
「臨時職員会議が終わるまで学校に残ってくれるように、呼びかけならあかん!」
 そう、みんなが帰ってしもたら、うちらの手に最終的な勝利は残りません。生活指導の先生らが「今から臨時職員会議やる、生徒の管理がでけへんから帰るように。これは妨害とは違う学校としての管理責任の問題や!」と言うてきました。上手い誘導と闘争つぶしです。そんでも先生の誘いにのらんで、半分以上の生徒が残ってくれました。

☆学校側の回答

 今回のことは、教職員の手続きの齟齬の問題で生徒には責任がないことを確認。つまり反省文は書かんでもええいうことで、一見うちらの要求が通ったような気がしました。
「騙されたらあかん」闘争委員長が手ぇ挙げました。
「ほんなら、責任は教師がとるいうことでお茶濁すんですか。顛末書を淀先生が書くいうことは……まさか顧問に責任押し付けて幕引いたんちゃうやろな!」
 一瞬先生らが静かになりました。ほんで、顧問の淀先生が前に出てきて蒼白な顔で言いました。
「わたしの認識不足。わたしの手続きミス。それが全てです。顛末書を提出しました」
 顛末書の意味が分かりません。
「先生らは学校を死なせた!」闘争委員長の顔が赤なりました。
「いや、始末書やないんや。顛末書いうのは、ことの成り行きを書いただけのもので、始末書にある過失に対する陳謝の意味はないんや」
 教頭先生がにこやかに言わはりました。
「そんな問題やない! 学校は僕ら生徒の怒りをスルーしたんや! 分かってるんでしょ。生徒におとがめなし。顧問に顛末書書かせる。ほんで幕引き。僕らの怒りの矛先を無くしたんや! 前代未聞の日和見や。四十何年前もそないやった。僕らは学習したんです、先輩らの闘争を。同じ幕の引き方や……ほんで残ったんは無気力・無責任・無関心の三無主義やったんや。その結果学校は管理主義のドグマに落ちたんや。先生らが、こないに忙しなったんは、そのせいなんですよ。自分で自分の首絞めてるのん分かりませんか!?」
「とにかく、これですべて解決した。すみやかに解散しなさい」
 そない言うて、先生らは背中を向け始めました。
「先生、逃げるな。これだけは聞いて欲しい!」
 それでも足を止めへん先生らの背中に、闘争委員長は言いました。

愛の反対は憎しみではない。無関心なのですよ……マザーテレサの言葉を送ります」

 数名の先生がギクリと足を止めたけど、先生らは背を向けたまま行ってしまいました。学校は死んだと思いました。
「自分、どこの学校や?」
 一人の他校生が体育館の入り口に立ってました。

☆敗北の後

「あんた○○高校の某さんやんか!」
 その子は、みんなの視線を浴びて固まってました。
「なんで来たん?」
「……他人事やないような気がして、つい来てしまいました。ごめんなさい」
 ポニーテールぶん回して頭下げました。うちらは彼女を前に呼びました。で、うちが説明しました。
「この子は、○○高校の演劇部の生徒さんです。連盟(浪速高等学校演劇連盟)のコンクールに審査基準がないんで審査基準持ってくれ言うた人です。連盟は協議することは約束しましたけど、半年たっても回答がありません。連盟は学校と同じスルーしたんです。この子はうちらと同じスルーされた高校生です」
「も、もうええんです。ここに来て、あたしは一人やないいうことが分かったんで、それでええんです」
 拍手がおこりました。でも、それ以上は迷惑になりそうなんで止めました。そやけど、その子も含めてうちらには、今まで無かった連帯感が生まれてました。
「このまま解散するのは惜しいな。負けたけど、この繋がり……どないしょ」
「委員長、みんなで歌おうや!」
 軽音の部長が言いました。軽音の何人かはギター持ってました。そのギターがあの旋律を弾いて、自然に歌になりました。

 『翼をください』の大合唱になりました。

 歌うと、ますます高揚してきます。続いて『今日の日はさようなら』になりました。みんなエヴァンゲリオンは好きみたいです。最後は、なんでか『恋するフォーチュンクッキー』と『心のプラカード』で盛り上がりました。
「で、演劇部はなんの芝居やんのん?」
 ダンス部の部長が言うたのにはカックンでした。

『すみれの花さくころ』です!」

 後輩が言いました。みんなポカーンです。
「あ、歌が入るんです。先輩一曲いきましょ!」
 みんなに拍手されてやらんとあかんはめになって。ラストの曲を歌いました。

『お別れだけどさよならじゃない』YouTubeに出てます。音大のミュージカル科の学生さんです。よかったら観てください。

 負けたけど、大事な仲間がいっぱい増えました。今は、それでええです……ええんです。あたしらは、また歩きはじめますよってに!

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)

                                                            ※ これは小説です

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